ホワイトライオンの歌~MIKE TRAMP/”Songs Of White Lion”:81p

MIKE TRAMP/"Songs Of White Lion" アルバムレビュー
MIKE TRAMP/"Songs Of White Lion"
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MIKE TRAMP/”Songs Of White Lion”:81p

MIKE TRAMP/"Songs Of White Lion"

MIKE TRAMP/”Songs Of White Lion”

かつて80年代HR/HMムーブメントにおいて、米LAメタルシーンを舞台に人気を集めたWHITE LIONのヴォーカリスト、マイク・トランプ

ぼくは全く知らなかったが、1991年の「Mane Atteaction」を最後にバンドが解散し、幾つかのバンドを経た後も彼は長らくソロ活動を行ってきたようだ。

そんな本作は、WHITE LIONの往年の名曲を改めてこの時代にリレコーディングした、彼によるセルフカヴァー集となっている。

さて。

WHITE LIONといえばその昔、Rが2つあってよく燃え上がりそうな現J-ROCK専門雑誌にて、しばしば「ギタリスト以外の才能がどこにも見当たらない」と大絶賛されており、ヴォーカルの彼にいたっては「声質だけはいい」と高評価されていた記憶がうっすらあるんだがきっと気のせいなのだろう。

更には売れ線ポップ化した3rd「Big Game」のアルバムレビューやその他では「何を歌ってもみんな同じよう」、「無表情で無感情で無個性」、「のっぺらぼうでほとほとウンザリする」といたく高評価されていた記憶が何となくあるんだが、そんなことはさておきそののっぺらぼうが、ここでは12曲もみんな同じように歌っている。

とはいえギタリストも違うし、何せ30年以上も経っているのでアレンジも味わいもオリジナルとは別物。
なので、かつて明らかにピークを終えて勢いを損ねた4th「Mane Attraction」リリース時に確か同誌の現編集長が絶賛してのリアクションと同様に、「最初聴いたとき、中身が違っている!と返そうと思った」となりかねないかは、果て不明だ。

にしても、さすがは音楽メディアの編集長を長年務めることになるだけのことはある、氏の若くしてのその鋭すぎる評価眼たるや。
何せ同レビュー内でアルバムに対して書かれていた通り、「10年以上前のヒット曲だけで芸能界を生き残っている演歌歌手が、また同じ歌を歌っている」が、まさかそのまんま30年経ったここに色々な意味で活きるとは、何という先見ぶりよ。

なおアルバムは、デビューからその全盛期、つまりは1stから一大飛躍作にして代表作「Pride」と、その氏の先見の才をもってしても「シングルヒットしか考えなくなるとバンドは駄目になるということを自らを犠牲に満天下に示した」と若さゆえの無忖度だった3rdの「Big Game」までから、そのシングルヒット曲を優先に考えて選曲。

ぼくの記憶が確かなら、その同誌にて「ぺったぺった粘着物を壁に貼り付けるような歌い方」だの、挙げ句は「どんな名曲でも歌えば台無しにできる稀有な才能」とその手腕をいたく評価されていたこのトランプマンだが、そんな往年の名曲を歌っているこれが、当時だったら一体どれほどの大絶賛を受けたのかと戦慄を覚えずにいられない。

なお、その名ギタリスト、ヴィト・ブラッタはバンド解散後に音楽業界を離れてピザ屋をやっており(多分)、ここには不参加。
かわりにトランプ屋と一緒にその後FREAK OF NATURE(案の定アルバム一枚だけであっという間に藻屑に消えた※1)を組んだマーカス・ナンドがプレイしている。

かつて同誌の初代編集長様からも「(ヴィトの優れた)ギターが出てくるまで苦痛を我慢すれば辛うじて聴ける」とまで言わせてみせた、そのギターすら最早存在しないこれだが、だけどぼくは我慢ナシに辛うじなくて全然聴けたし、また今月のとある10年どころか数十年以上前のヒット曲だけをずっと歌って生き残っている演歌歌手専門誌でも、「やるせないヴォーカルの魅力は健在」「たまらない哀感に満ちた魅力を再発見」云々と、最初からその魅力を発見すらしてなかったはずな30年前の「ぺったぺった粘着歌で台無し専門なウンザリのっぺらぼう」を高忖度していて、やるせなさがたまらなくなったくらいだ。

…と、こう書いていると楽しさも止まらないが、いい加減皮肉とチャカしはここらへんにして、その内容に触れておこう。

 

まさかNIRVANAのグランジGENBAKUが落ちてあたり一面焼け野原&ヒャッハー御免の世紀末マックスになり果ててバンドも皆灰燼に帰すことになるとは微塵すら考えられていなかった、今日もポップは敵だポーザーだと呑気に言いたい放題(それが最高だった)な80年代メタル村発。

あのホワイトの方のあのライオンの、あの「お姉ちゃんと絡むくらいしか能がない、あのぺったぺった粘着歌であののっぺらぼうが、年相応に歌える音域に下げて無理なく、しかしそこまで原曲をいじらずに作った、等身大のオヤジアルバム」という、「あの」ばかりな本作が、これだ。

しかも、当時はお前じゃなくギターのほうをwaitしてんだと散々の言われようなパトランプにも関わらず、まずのっけM1から“Lady of the Valley”という、「あのヒットアルバムにしてはどっちかっちゃ地味部類だけど間違いなくガチ名曲認定」の「わかってますよ」な叙情美からスタートしてしまわれるなど。

このビターさ残る美味みが、実は北欧デンマーク出身というトランポりんによるものか、はたまた実はこれもヴィトのものなのっぺらぼうだったかは今となっちゃ知らんが、とにかく初期~中期WHITE LIONならではの、アメリカ産にも関わらず欧州テイストな暗みがかったウェットなメロディ、ダークなハードロックが、たまらない。

そして続くM2“Little Fighter”は、3rd「Big Game」ただしスモールゲームだったがなの名オープナー。
そうだ、そうだ。
こういう、一見ブライトなのに、でもどこかほんのり一つまみだけ、そうなりきらないのがこの人らしい。

更には、「ちょっと待て、こんな名曲あったっけ!?(いや確かあったかも!!)」と、思わず慌てて「Mane Attraction」をホコリまみれのCD棚から引っ張り出してきてしまった(Spotifyに1stしかないのな!)、脱糞ロマンチック・アメハーM4“Love Don’t Come Easy”の珠玉さに、おいどこのどいつだ、やれ中身間違っていると返そうとした位ひどいだのシングルヒットばかり考えてクソになったとのたまっておられた編集者様は(面白くて的確で今の1億倍イイと思います)とアルバムのやるせない魅力を再発見。
←30年前には発見できなかったのっぺらども

これに加えて、そりゃやんだろなM5“Hungry”だのM8“Wait”(アコースティックなアレンジもこれはこれ)あたりのお馴染み過ぎる代表曲に至っては、いわずもがな分かるでしょな北千住のトニーあいみょみ。

その他にも1stからは、哀愁のM3“Broken Heart”に、これやるか!とM9“All the Fallen Men”みたいなマニアックなオールド・ハードロックの隠れ名曲曲あり、そして懐メロPOISONをおっさんがカヴァーしたみたいだけどそれも令和ならアリだな、なM10“Living on the Edge”に、ピアノアレンジが程よく効いたM12“When the Children Cry”などなど、御老体へのお楽しみが止めどもなし。

しかもなんだろ、躍動感すら一切なくなって全体的に往年からすっかり枯れきったここには、今のBON JOVIみたいな味わいもあるし、出しゃばらないギターもシンガー特権のソロアルバムならこれで十分だろな気もしてくる。

というわけで正直、チャカし一切なしでこの確かな味わいのコクといい、昔よりも熟して染みたマイク・トランプの魅力を楽しむ、往年のハードロックファン向けな一枚になっているけど、そこはちょい冷静さを保ちつつ、評点はあくまで脳内生成の思い出スパイスがたっぷりふりかけられるリアタイ向け仕様ってことで。
一般的には、これマイナス5~10pくらいってところか。

…と思ったけど、毎度な辛口評点のウチですら、意外に旨味が普通にこんくらいある気もすんな!
(年寄りならではの盛り疑惑)

 

注釈※1:と書いてちょっとぐぐったら、90年代に意外とアルバム出してんのなFREAK OF NATURE
しかもアルバム毎にパールのジャム化が進んでグランヅ折れタナくずれにどんどん成り果てていくという、80年代LAメタルバンドの正しいありかたよ…。

MIKE TRAMP/"Songs Of White Lion"

MIKE TRAMP/”Songs Of White Lion”

DATE
    • アーティスト名:WHITE LION
    • 出身:US
    • 作品名:「Songs Of White Lion」
    • リリース:2023年
    • ジャンル:HEAVY METAL、LAメタル、US HARD ROCK、
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