PORTAL/「Avow」「Hagbulbia」:75p
オーストラリアの漆黒アヴァンギャルド・デス/ブラックメタル・バンド、と言ったら、なんといってもPORTALだ。
PORTALは、ヤバい。
PORTALは、マジで、イっちゃってる。
PORTALは、ガチ。
それがデスメタルファンの共通認識だ。
さすがにちょっと、ついていけない。
なんぼなんでも、こりゃあかんわ。
ごめんなさい、無理です。
そういうデスメタルファンだって、決して少なくはないだろう。
そんなペヤング激辛焼きそばデス/ブラックPORTALは、これまでそのアルバムの都度、暗黒病烈アングラメタルの極北をアップデートしてきた。
つまりはエグさのインフレ。
そろそろいい加減、スカウターが壊れるあたりだ。
そんなPORTALが、この2021年にして、いよいよ突き抜けるところまで突き抜けてしまった。そうとしか言いようがないアルバムを、ここに出してきた。
何せ、6thと7thを同時ドロップだ。
アルバム2枚を同時に出したデスメタルバンドなんて、これまで果たしていただろうか。
そうそう、すぐには思いつかない。
だって、出す意味が、出す必要が、何一つもないからだ。
だが、そこからも彼等の突き抜け感がヒシヒシと伝わってくる。
しかも、そのいずれもが違う方向にぶっ壊れ突き抜けているのだから、何ともはや。
いずれにせよ両作ともにアヴァンギャルドの度が過ぎて、デス/ブラック・メタルからノイズ、アンビエント、エクスペリメンタルの域にまで涅槃を超えてしまったかのようですらある。
そう。
PORTALは、ヤバい。
PORTALは、マジで、イっちゃってる。
PORTALは、ガチ。
そんなこれらペヤング激辛焼きそばデス/ブラックのこれら2作をさて、どこからどう口にしていけばいいのか、あるいは口にできるのか。
ぼくの頭にはよもや困惑しかないのだが、とりあえずのところ順に見ていくことにしよう。
まずは6th扱いの「Avow」から見ていこうか。
前5th「Ion」では辛うじて味わい、つまりはメリハリとデスメタリックなダイナミクスのあった彼等だが、ここではややながら回帰路線。
…と一筋縄ではいかないのが、漆黒ペヤング王PORTALたる所以だ。
相変わらず圧殺潰死必至の高密度暗黒ノイズの塊をこれでもかと容赦なく降り注がせながら、しかもそれがさらに予測不能なフリーキーさを極めている。
と同時にサウンドは、これまでよりも、より無機質に、そしてよりマシーナリーに。
ヒューマニックな情感、つまりはメタルとしての一切の有機性を削ぎ落すことで、非人間的な激烈ノイズミュージックにすら近い域にまで近づいてみせているのが印象的だ。
またプロダクションも以前よりずっとクリアになったのだが、その結果。
これまでのぼんやりとおどろおどろしく荘厳としていたムーディさではなく、さながら鮮明に目前で猟奇的惨劇が無感情で行われているかの様相を呈している。
その非人間性のせいか、デスメタルとしての破壊力や怒情、殺傷力などといった激性によるメタリックなカタルシスは薄く…いや全くないわけでもないのだが、何というかメタルとは異質な狂気的音楽を聴かされているような気にすらなってくる。
確かに今回も「PORTALは、ヤバい」なのだけど、その「ヤバい」の質感が「デスメタルとして」をもはや半ば超えかけている。
そんな印象を受けた。
では一方、同時リリースされた7th「Hagbulbia」のほうはどうか。
困ったことに、これはさらに別方向に突き抜けてしまった。
こちらは何と、アンビエントに全振りだ。
ビートもメロも何もない、ただただ不気味で不穏な邪気渦巻く狂乱の音世界。
そこに相変わらず奈落の底から魂をごっそりと飲み込むような低音(温)ヴォイスが、闇と病みを塗り散らかすという暗黒前衛ノイズ・ミュージック。
いや、これは「ミュージック」なんだろうか、それすら不明だ。
だから先の「Avow」とは比べ物にならないくらい、「音楽としてのデスメタル」を解脱している。
よってそのアート性はさておき、ロックとしての娯楽性はかなり低いと言わざるを得ない。
正直、聴き終わるまでも一苦労だ。
PORTALは、ヤバい。
PORTALは、マジで、イっちゃってる。
PORTALは、ガチ。
オーケーそれらのことはよーく判ったから、頼むからもうやめてくれごめんなさいぼくが悪かったです許してください勘弁してください、というくらいに伝わってくる。
ただし、これは勝手な予想というか幾ばくかの希望なので間違えていたら申し訳ないのだが、恐らくこの7th「Hagbulbia」のほうは、6th「Avow」に対する(あるいは相互?)補完的な意味があるのかもしれない。
でなければ先の通り、同時に出す必要が、意味がない。
よってこれらは二枚で一つ、つまりはいかにPORTALが突き抜けているかを表す、ある種のアート表現なのではないだろうか。
ということは、多分彼等としてのメインコンテンツは「Avow」のほうとなるのだろう。
というか、そうあって欲しい。そうあってくださいお願いします。
以上、同時リリースの二作品を見たわけだが。
このように、いずれにしてもPORTALがぶっ壊れ突き抜けた存在であり、唯一無比といっても差支えのない極北に向かっていることがお分かりであろう。
PORTALは、ヤバい。
PORTALは、マジで、イっちゃってる。
PORTALは、ガチ。
そのことが、今回もまた明らかになっているのは、もう十分すぎるくらいにご理解いただけたことだと思う。
さて、ここで評点についてなのだが、果てどうしよう。
とりあえずのところ、先の希望にすがって涅槃に突き抜けた7th「Hagbulbia」は評点不能とし、まだデスメタルの範疇とギリに言えそうな6th「Avow」のみを対象にここでは扱うことにしておこうか。
そして最後に、一言だけ僭越ながらも忠告をしておく。
やっぱりPORTALは、今回もヤバかった。
やっぱりPORTALは、今回もマジで、イっちゃってた。
やっぱりPORTALは、今回もガチだった。
なので、うかつに手を出すのは、よくよく考えてからにしたほうがいいだろう。
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- アーティスト名:PORTAL
- 出身:オーストラリア
- 作品名:「Avow」「Hagbulbia」
- リリース:2021年
- ジャンル:DEATH METAL、BLACK METAL、NOISE MUSIC、AVANT-GARDE、AMBIENT MUSIC他