アリっちゃアリ~AMYL AND THE SNIFFERS/「Comfort To Me」:66p

アルバムレビュー
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AMYL AND THE SNIFFERS/「Comfort To Me」:66p

めっきりパンクづいているせいだろう。
このところ、何かとそういう音が欲しくなる。

いや、自分でも判っているのだ。
ことの発端は、アレだ。
原宿は竹下通りに行ったときの、あのピストルズだ。
あんときの「勝手にしやがれ」が、ぼくのパンク心をがばっとおっ広げたのだ。

ベッタベタ。
何だそりゃwwwwって草生やすくらいに、恥ずかしくて赤面したくなるくらいに、クッソミソの、ドベタ。
しかし、が故に、真っ向から響いた。
パンクっていうのは、ロックンロールというのは、そういうもんだとそのときに思い知らされた。

そこでしばらく、パンクロックが、ハードコアパンクが欲しくてしょうがなかった。欠乏症になっていた。
というか、しばらくそういうのを摂取していなかったことに気付いて、そのぶんだけがむしゃらに欲した。
昔のアルバムを引っ張り出しては、やれダムドだGBHだディスチャだEXPLOITEDSTIFF LITTLE FINGERSだと聴き漁っていた。
そしてその延長で、この手の新譜界隈を見渡しては、徘徊。
なるほど、今この時代に生きるパンクスだって全くもって捨てたもんじゃねえな、と色々ほっつき回った中で、幾つか引っかかった連中に出くわした。

まず筆頭は、前回に紹介したCHUBBY AND THE GANGだ。

このバンドは、いいよね。ホントに、いいパンクスだ。
大体、活きがいいのに、活きだけに終わらない。
活きがいいのに、粋である。
パブロックの作法をしっかりマスターしながら、そのうえでストリートの野良犬パンクをやっている。
そんな素晴らしいパンクス連中だ。

…と。
こいつらに比べてしまうと正直、がっくりとランクは落ちる。
いや、確かに落ちるのだけれど、しかも今のところなんだかイヤな臭いしかしないのだけれど、一応こっちも挙げておくとしよう。

AMYL AND THE SNIFFERS
名前は似てるが、向こうはギャング、こっちはジャンキー。
なんでもこのところちょっとばかり名を高めている、女性ヴォーカルAmy Taylorをフロントに据えたメルボルン出身、つまりはオージーパンク注目のニューカマーだ。

SAINTSRADIO BIRDMANだのとレジェンド巨匠らの名をあげるまでもなく、大昔からストレートさで知られるオージーパンクだが、その2020年代の新星たる彼ら。
そんなホープの、どうやらこれは2ndアルバムであるらしい。

ぼくは本作で彼ら(彼女ら)を知ったのだが、時折顔を出すDRIみたいな80年代米ハードコアの片鱗や、DISCHARGEみたいな性急さにふとひかれてサウンドにふれることになった。

とはいえ、ぶっちゃけ、気にかかるところがないわけじゃない。
ていうか、かなり、ある。

まず、やれラフトレだの「電光石火ガレージパンク」だの(なにそれ?)と並べてくるようなロキノン畑からのむせ返るようなハイプが鼻について仕方ないし、それもあって「あー、パンクつってもそっち系ね」と警戒心もえらく刺激されまくる。
加えてお権威NME絶賛、てのもそんな鼻持ちのならなさを押してくれるに足る格好の材料だ。
(それにレーベル、Rough Tradeだしな)

しかもMVを見ると、それを伝えるかのごとくにこのAmy Taylor嬢ってのが、相当に微妙ときた。
何せ墓場を徘徊しては、サブカルなアタシ自意識をド噴出。
現状、相当に痛ましい存在感しか全くしないのだけど、しかし。それらを差っ引いても、やっぱりぐっとくるもんがあるのも、また確かなのだ。

火吹き煙上がらんギターに、前のめりビート。
80年代ハードコア・フレヴァーがほんのり立つのがよい、リフワーク。
ほとんどメロを追わず、そっけなく捨て放つかのヴォーカルスタイル。
シンプルイズベスト、でいてカラーリングも備えた楽曲群。
そして先のように、良くも悪くもアクのたった、Amy Taylor嬢のキャラ。

いや、はっきり言ってそんな彼女のキャラ立ちに牽引気味、というか気味も何もそうでしかないのだけど、その良し悪しはさておき、パンチとインパクトは確かにあるだろう。

………うーん。
どっスか、コレ。

うーん、どうなんだろうねえ。
うーん、どうしたもんかなあ。
いやあー…でもやっぱ、アリっちゃアリ、かな。
良し悪しなんだけど、まあ、アリっちゃアリだな、うん。

と、そんな感じで何度となく交互に揺さぶられながら、それでも聞きやすさもあってリピってしまう。
一応注目株ってことだしとりまチェックしとくか、とやっていたら、ついリピってる。
がーっ!と別段高まり興奮もしないけれど、まあ、アリっちゃアリかと、揺られながら最終的には頷いている。
これは差し詰め、ぼくにとっちゃそんなバンドの、そんなところな2ndアルバムだ。

うん。
アリっちゃアリ、だな。

DATE
  • アーティスト名:AMYL AND THE SNIFFERS
  • 出身:オーストラリア
  • 作品名:「Comfort To Me」
  • リリース:2021年
  • ジャンル:PUNK ROCK、GARAGE ROCK他
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