変わってたまるかこん畜生~POSSESSED/「Revelations Of Oblivion」:86p

アルバムレビュー
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POSSESSED/「Revelations Of Oblivion」(2019)

SLAYER好きなら、これ聴かにゃあダメだよ!」

そう名古屋弁混じりで、同期のスラッシュマニアだった友人から紹介されたのが彼等との出会いだった。
もう三十年近くも昔、ぼくがまだ学生だった時分の話だ。

川崎のそいつのマンションにあった膨大な輸入レコードの山には、〜勿論日本盤など出るわけもなければ、デスメタルなんて呼称もない時代の話だ〜初期のDEATHOBITUARYなどが所狭しく並んでおり、当時多くの先鋭地下スラッシュバンドの存在をそこでよく教えてもらったものだ。

さて、赤っぽい色味で悪魔だか何だかよく判らない化け物の顔が描かれていたこのジャケ絵に、まずはなんだこりゃと思ったが、レコードから流れてきたサウンドは更に、なんだこりゃ、な様相だった。

嫌がらせみたいな、ヒネ曲がったリフワーク。
執拗なまでの、偏執的多展開。
吐き捨てというより吐きかける、吐き散らすような、クソ汚いガイキチVo。
怒声。轟音。暴威。怒涛。狂気。病性。破壊衝動。阿鼻叫喚。なんだこりゃ。

「最低のダメ人間スラッシュや。」

友人はケラケラと笑いながらその音をそう呼んでいたが、そこにはある種の敬愛の念、クールネスへの賛辞が強くこもっていたし、その「最低」は「最高」を明らかに意味していた。
その笑顔は、さながらそれを誇るかのようにすら見えたものだ。というか、完全にそれを誇っていた。

そしてしばらく後に、それがPOSSESSEDというバンドの2ndアルバムであり、元祖デスメタルにして地下激烈スラッシュのカルト的存在であることを、ぼくは知るのだった。(※1)

POSSESSEDが、なんと再結成して新作を出すらしい。

SNSで未だ繋がっていた、先の友人〜かつての長髪バンドマンの面影もなく、地元名古屋で今や家庭持ちのいいオヤジになっているのだが〜からの情報を聞いたのが少し前のこと。

ぼくも大概だと自認しているけれど、こいつも大概に相変わらず業の深いの、ずっと聴いてるなあ。
そう呆れ苦笑しながらネットでチェックしてみたら、そこにいた変わり果てた連中にぼくは絶句した。

連中、というか最早往年の面々は、そこには連ねてない。
かの後にPRIMUSで出世したラリー・ラロンデ(g)も、ここにはいない。

唯一、ヴォーカルのジェフ・ベセーラだけが、POSSESSEDという看板の下に一人いた。しかも、車椅子に乗って。
他のメンバーは皆違うバンドから呼び集められ、そして三十年前のかつてのバンドを継ぐように、新たなラインナップとしてジェフを囲み陣取っていた。

さあ。
そんなPOSSESSEDのニューアルバムが、ここにある。
冒頭に触れた2ndに継ぐ、これはなんと33年ぶりの3rdフルレンスだ。

まず。聴いて、笑った。
なんだこりゃ。
嫌がらせみたいな、ヒネ曲がったリフワーク。
執拗なまでの、偏執的多展開。
吐き捨てというより吐きかける、吐き散らすような、クソ汚いガイキチVo。
怒声。轟音。暴威。怒涛。狂気。病性。破壊衝動。阿鼻叫喚。なんだこりゃ。

ムダに立派なジャケ。
そして、ムダに上手くなった演奏。
ムダに良くなった音質。
しかしそれらが克明に伝えるのは、33年ぶりの、やっぱり少しも変わらぬ「最低のダメ人間スラッシュ」だった。

成る程冷静に聴いてみれば、確かに初期2枚のような勢い先行の感も、統制からはじけ飛んでいくような生々しい衝動も、ここには失われている。
が、いくら統制されていようが、整合されていようが、若干の落ち着きが出ようが、その本質は変わってない。

ぼくはそのアルバムを聴きながら、笑った。
否、その最低のダメ人間スラッシュの変わらなさに、或いはそのPOSSESSEDたらん、圧倒的な紛れなさに、ただ笑うしかなかった。

勿論、その笑いにはある種の敬愛の念、クールネスへの賛辞を強く込めていたし、言っておくがその「最低」は「最高」を明らかに意味するものだ。
そう、30年近く前に、かつて友人がぼくに対してそうであったように。

つーかさ。ほんと変わんねえよなあ、こいつ(笑)。
ぼくも大概だと自認しているけれど、こいつはそんな大概なんてもんじゃない。
ほめき轟く汚い怒号を浴びながら、ぼくはやはり軽く笑いつつ、そして呟いた。

そうなのだ。
変わることもあれば、変わらないこともある。
変わってしまったこともあれば、変えずにきたこともある。
少なくとも、彼、ジェフはあれから33年生きて、そしてたとえ車椅子に乗る身になろうとも、まだ変わらない。変えてない。
こんな最低なダメ人間スラッシュが、他に世にあろうか。

凄い。
すげえなあ、とぼくは感心しながら、そして誇るように、笑った。
POSSESSEDを。そしてぼく自身をも。

思えば。
ぼくもあれから30年近く生きてきたけど、そして色々と変わってきたけど、やっぱりこういうロックを今も聴いている。

変わらない。
変えてない。
変えない。
変えさせない。
変えるもんか。
変わってたまるかこん畜生。

ジェフも、そして遠い名古屋で今やオヤジになった彼も、きっとそうなんだろう。そういう30年間を、皆生きてきたのだろう。

ふとぼくは、あのときのロン毛のベーシストが「最低のダメ人間スラッシュや。」と言いながらかつて浮かべた笑い顔を、久方ぶりに思い出した気がした。

 

※1:その後、追うように彼等の1stを聴かせてもらい、更になんだこりゃとなるのは、少々後の話だ。

DATE
  • アーティスト名:POSSESSED
  • 出身:US
  • 作品名:「Revelations Of Oblivion」
  • リリース:2019年
  • THRAS METAL他
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