あの日のSORROW~ABLAZE MY SORROW/「Among Ashes And Monoliths」:69p

アルバムレビュー
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ABLAZE MY SORROW/「Among Ashes And Monoliths」:69p

90年代後期、世はまさに北欧メロデス時代。
百花繚乱、玉石混淆、兵どもが夢の跡。
あの頃はA級からB級、C級、やもすりゃD級に至るまで、数多くのメロデスバンドが北欧各国から出ては消えていったものだ。

そしてあの頃のぼくらは、まだサブスクどころかスマホすらもなかった時代に、輸入盤屋や中古屋をめぐってはそんなメロデス・バンドを発掘し、時に興奮、時に落胆、時に歓喜、時に困惑を幾度となく繰り返しながら、なけなしのこずかいを削り漁っていったのだった。

もうかれこれ、20年以上も昔の話だ。
イエテボリ、なんて呼称がまだ魔法みたいに輝いていた時代の話だ。
美醜一体、なんて表現がまだそこに通じていた時代の話だ。

数ヶ月前位のことか。
ちょっと前にSpotifyをぽちぽちと漁っていたら、随分と懐かしい名前とバンドロゴが目に入ってきた。

ABLAZE MY SORROW

いたなあ、いたいた。いたよ、いたっけ。
ETERNAL TEARS OF SORROWと並んでニ大北欧SORROWメロデスとうたわれた彼らは…いや、すまん嘘だ。

とにかく彼らは90年代前期の割と早いうちから活動を始めており、そんな夢の90年代後期にはすでに数枚のアルバムをリリースしていた。

尤も単に出していただけで、よっぽど物好きでディープなメロデスファンが辛うじてそこに食指を伸ばしただけに過ぎない。
何せランク的にはせいぜい良くてC級、あくまで上級者マニア向け。
ぼく自身もその存在を知っていたしアルバムも目にしていたが、だからといって当初はお金を払ってまで聴く気にはとてもなれなかった。(なんだかんだで後に中古で買い揃えるのだが)
つまりは、「それユニオン輸入盤で見た」系バンド。所詮はそんなところだ。

そんな彼らの注目度が高まったのは、世紀をまたいで2002年に出した3rdアルバム、「Anger Hate And Fury」のことであった。

それまでのショボショボC級デスから洗練を進めて、あぎと鋭くスラッシュメタリックな尖鋭さを研磨。
攻撃力とともに扇情力をも高めながら見事に垢抜けたそれは…つっても頑張っても良くてB級の下くらいが関の山だったのだが、とにかくそんな成長をみせており、輸入盤レベルでの注目を集めてみせたのだった。

とはいえ、そこはやっぱり底辺B級メロデスの物悲しさよ。
注目されたとはいえ、たかが知れたもの。
言うても、せいぜいユニオン輸入盤にやっとポップが貼られた程度のことだ。

結果、このアルバムを最後に、バンドは解散。イエテボリという甘美な響きとともに、北欧メタル史の闇へと彼らもまた人知れず消えていく。
諸行無常、かくもはかなきぼくらの90~ゼロ年代メロデスたちよ…。

と。そんなABLAZE MY SORROWが、いつの間にか復活していたのだ。
しかも新作アルバムまでリリースして。
数ヶ月程前の話だ。

マジか!?
マジなのか!?
マジで、あのABLAZE MY SORROW…なのか!?

…なーんて思ったわけでは、勿論、全くない。
ふーん。
ぶっちゃけ思いっくそ、真顔でスルーした。
こないだ何かのきっかけで思い出すまで、そういえばすっかりこのアルバムの存在自体を完全に忘れていた。
所詮はその程度の存在だ。それがABLAZE MY SORROWのリアルだ。

しかもぼくは知らなかったのだが、なんでも彼ら、2013年にはリユニオンを行っており、なんと2016年には4thにして復活アルバムをリリースしていたという。
これを書くにあたって一応ググってみたらなんと彼らのWikipediaがあって、そこに書いてあったからそうなんだろう。

ま、でも別にいっか。今更さかのぼって聴く程でもないだろ。
所詮はその程度の存在だ。それがABLAZE MY SORROWのリアルだ。

さて、そんなABLAZE MY SORROWのニューアルバムは如何程のものなのか。
何せ20年近くぶりに耳にするABLAZE MY SORROWの新作なのだが、案の定。やはりというか、これが感慨も懐かしさも覚えない。
まそんなものか。どうせ、それがABLAZE MY SORROWというものだ。

…いや。違うな。
感慨はないけれど、懐かしさだけはこれ、ちょっと、あるぞ。

そのサウンドはモッサリしていてやっぱり垢抜けていないのだが、しかし確かな叙情性がある。
暗黒に沸き立つようなこの悲哀感、つまりはそのSORROWは、やっぱり何だかんだで彼らのものだ。

しかもそんな物哀しいメロディをひた走らせる姿はやっぱりモサくて、思わず「クソだっせー!」と声に出したくなるのだが、しかし。発する手前に胸を、ほんのちょっとだけ、でも確かに、熱くさせる。

ヘナチョコなんだけど、ぱっとしないんだけど、でも少なくともそのSORROWは、あの彼らのものだ。
そう、あの時代。
北欧デスラッシュ時代の2002年に「Anger Hate And Fury」で見せていたABLAZE MY SORROWのものだ。

例えば、M1″My Sorrow“からタイトルトラックM2”Among Ashes And Monoliths”への流れに高めさせる哀情。
そうそう、こういうやつ。
あの時代の、あの日のメロデスだ。あの日のSORROWだ。
しかもそこにいちいちゴシック的なテイストを含んでいるのも、またそそられる。そうそう、あったあった。

かたや新たに加入したヨナス・ウッドなるヴォーカルの存在をぼくは知らないのだが、ブラックメタル寄りの弱く情けない叫びで迫力の欠片もないものの、しかしときに見せるふくよかなクリーンヴォイスなど表現力だけはありそうだ。

ダサい。
カッコ悪い。
しかも、これという一撃に致命的に欠ける、パンチ力の弱さ。響かなさ。届かなさ。刺さらなさ。

判っている。
知っている。
だってそれがABLAZE MY SORROWだったのだから。
しかも今さら、それをやるか。

そう、今さらそれを、やっているのだ。
そうか、そういうバンドだったけか。
それがABLAZE MY SORROWだったか。

そんな愛すべき、あの日あの頃の、底辺B級メロデス。
そんな愛すべき、あの日の”My Sorrow”(M1)が、ここにある。

DATE
    • アーティスト名:ABLAZE MY SORROW
    • 出身:スウェーデン
    • 作品名:「Among Ashes And Monoliths」
    • リリース:2021年
    • ジャンル:MELODIC DEATH METAL、DEATH METAL、GOTHIC METAL、他
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