CHUBBY AND THE GANG/「The Mutt’s Nuts」:80p
威勢がいいヤンチャなパンクロックが好きじゃない。そんなパンクスなんて、世にいるわけがねえ。
ましてや、それでいてリアル・ワーキングクラスなUKパンクが嫌いだなんて、あるはずがねえ。
ラモーンパンク。
パブロック。
ガラージロック。
ああ、いいじゃないか。
しかもその歌は、ストリートを生きる日々が見た鋭い社会的欺瞞をぶちまき、吐きつけているって、最高かよ。
そういうイキのいいパンク好きにお勧めしたいのが、この英国の若きパンクスども、CHUBBY AND THE GANGだ。
これがCHUBBY AND THE GANGのやり方だ、判ったかこの野郎!(”Chubby And The Gang Rule OK?“)
と、そう言わんばかりに勇ましく叩きつけ、けたましくドアを蹴り開けられた2020年リリースの彼らの前デビューフルレンス「Speed Kill」。
それは新人らしい荒削りなラフネスとパワーにまみれた、いかにも若い英国パンクスどものご挨拶らしいアルバムだった。
スピードで殺せ。
往年のギターウルフかよというタイトルからして鼻息の荒さが伝わるが、そんな気骨に溢れたサウンドはかの辛口Pitchforkをもってして「アップビートなOi!の詰まった、2020年で最も無遠慮なロックンロールアルバムだ」と評され、1stアルバムながらにして80点の高得点をもぎ取ってみせたのだった。
さて、そんな彼らの続く2ndアルバムが、ここに到着した。
「The Mutt’s Nuts」。
狂犬ヤロウ、とでも差し詰め訳せばいいのだろうか。
前作と同タッチのド派手なカートゥーンジャケとともに、その主張や姿勢、路線がさほど変わっていない旨を伝えてくれる。
そして、のっけから飛び散る爆音。
ファストに叩きつける、騒々しさ。
煙臭く、汗臭く、男臭い。
そんな、アルバムを貫くいかにも労働階級らしい肉動感。
燃え移らん火だるまの熱量に、硬派でいなたくストリートライクなタフさ。
しかもなんといってもそこに、パブ臭とともに初期RANCID濃度がぐぐっと高まっているのが、嬉しいところだ。
次々とテンポをたるますことなく、駆ける楽曲たち。
そのそれぞれの熱情を焼き付けるようにアルバムに刻みながら、フルスロットルで抜けていく痛快さ。
そしてそれを歌う、酒焼けしたかのしゃがれたスモーキー・ヴォイス。
うん、良い。
ここまでは実にただしく、英国パブの酒場育ちのロックンロールのありようだ。
しかも、である。
そんな漢パンク道を爆走しながらも、そしてそれを支えている秀逸なポップセンスもさることながら、何より後半になって見せ始める引き出しの多さよ。
スローバラードからフォーキー・サウンド、はてはブルーズ、ドゥーワップ…。
意外なほどの幅広の守備範囲でいずれもこなしてみせる陰ながらの器用さは、彼らがただ勢い頼みのバンドではないことの他ならぬ証左となるだろう。
M13″Life’s Lemons“でしっとりと50’sムードを味わわせたと思えば、M14”Lightning Don’t Strike Twice“に雪崩込んでは、盛り上げアゲまくり。
そして、ほんのり切ないラストM15″I Hate The Radio“(↑)へ…。
へえ、そうくるか。
ロンドンストリートあがりの野良犬パンクスかと、そう思させておきながらも、そして実際にその勇ましき姿勢をほこりつつも、しかし懐の音楽的資質でもって、最後まできっちりと油断なく、クールにシメる。決める。片付ける。
そう。
これもまたCHUBBY AND THE GANGのやり方、というわけか。
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