FEAR FACTORY/「Aggression Continuum」(81p/100)
ゼロ年代を超えてから。
つまりはアルバムで言うなら「Digimotal」以降からだろう、急激にこのバンドの魅力が色褪せていくのをまざまざと見せられてきた。
作る作品が、単純にどんどんつまらなくなっていく。
響かなくなっていく。
インパクトが衰えていく。
時々、「Mechanize」のようにちょっと頑張ったアルバムを出しはするんだけど、それが続かない。
つまりは、フィアファクがオワコン化していく…。
そんな姿に、割とコンスタントに出していたアルバムに対しても、いつしかそれ程惹かれなくなっていってしまった。
だってあれでしょ、今回もどうせシュレッドリフに浮遊歌メロ乗せた、時代遅れのサイバーパンクSFインダスメタルまたやってんでしょ。
さあ、随分と長いこと、待たされたものだ。
そんなこちらのドタマをガツンとブチ抜き潰殺させることの出来る力作が、ようやくここに落とされたのだ。
まず、何よりも珍しく楽曲の粒が、揃っている。
これは近年の彼等におけるコンポーズ力の深刻な枯渇問題において、何より心強いポイントだ。
そうともなれば、最早無敵の恐怖工場。やっていることはいつもの通りなのだが、それで、いい。
否、それが、いい。
削岩機のように斬りかかる、重厚な殺戮ギターリフ。
けたましく叩きつけられる、無慈悲なマシナリービート。
いつもより濃いめな味付けで、近未来ディストピアの扉を開き誘うシンセサウンド。
高火力人力インダストリアルで描かれる、冷ややかで壮大なブレラン的世界観。
そして、雄々しく咆哮しては、終焉を描き歌うかのバートン・C・ベルの、歌唱…。
全てがいつもの彼等ながら、その独自の終末世界の説得力とスケールが違うのは、やはり楽曲の力に他ならない。歌のフックに他ならない。
例えば、「Demanufacture」の頃を思わせるかの、トップの#1″Reecode“(↑)。
激甚ビートで重々しく蹂躙し、かつメカニカルな冷徹さで未来の絶望を伝えるかの、タイトルトラック#3″Aggression Continuum“。
或いは、メロディックながらも悲壮さが浮かび色づく#4″Purity“や#8”Cognitive Dissonance“などもいいし、更にはミドルグルーヴの歌モノ曲#9”Monolith“も秀逸だ。
このように、触れずにいられなくなるトラックが、このアルバムにはいつも以上に詰まっている。
いつもと方向性はそう変わっていないのだが、これまで通りでしかないのだが、その「これまで通り」がより高いレベルで行われている感じが、いい。
そうだ、今回もどうせシュレッドリフに浮遊歌メロ乗せた、時代遅れのサイバーパンクSFインダスメタルをまだやっているのだ。
でも、それが良いのだ。だから凄いのだ。これぞまさに唯一無比なるフィアファクだ。
と、ここまで喝采したものの、これが手放しで喜べないから残念この上ない。
というのも、なんとそのバンドのブレインであったバートンが既に脱退してしまっているのである。
言うなれば本作での活躍は、バンドへの置き土産。こんな素晴らしいものを作っておいて、なんともはや。
残されたメンバーによる活動の見通しはまだ不明のようだが、まずはこれだけの力作の誕生を祝うとともに、彼等の今後を見守りたい。
ぼくらはまだそんな時代遅れのサイバーパンクSFインダスメタルを、フィアファクには演じ続けてもらいたいのだ。
★追記(2021年07月03日)
「今週のチェック」から引用。
はーい。黒い崎っぽ、ゲロぶっちゃけまーす。
終わってんだよな。もうフィアファクというバンドは初のクソ駄作「Digimortal」でとっくにさー。
ディーノ・カザレス追い出した時点で、もうバンドとしては、終了。フィアファク先生の来世作に以下略。
その死骸が20年間、ただ延命(?)されてはしょうもないアルバムを出していただけ。
で、今回更にバートン・C・ベル抜けて、もうこれ、どーすんの?
でもとっくに終わってるから、それすら、ふーん、て感じ。
大体、フィアファクのこの新作だって、期待してた人ってどんだけいたんすかね?(鼻くそほじりながら)だってそうだろ。
デジモ以降のアルバムは、とにかく、いつも同じ。
いや方向性はそれはそれでいいけれど、同じのくせに、内容が致命的にクソつまんねー。
慌てたバンドが男爵ディーノ呼び寄せて火力主義で立て直した「Mechanize」は、ドッカンバッコンでド派手な激重ビートがそりゃカッコいいけれど、やっぱり内容は致命的にクソつまんねー。
死んでっから致命も何もねーんだけど、とにかく内容がクソつまんねー。この「内容クソつまんねー」問題に対し、ようやく改善を図ったこのアルバム。
いや、でもこれは全然悪くない。
勿論初期3枚を越えただのそういうのは絶対に、神に誓ってそんな奇跡はないんだけれど、でも今の彼等にしてはよく出来ている。頑張っている。取り敢えず印象としては、
「いつも似たようなアルバムばっかでどれ聴いても同じなんだけど、でもその中では今回はなかでも割と曲の出来がいい」
そんくらいに思っていただければいいかなって感じですね。
火力は(いや十分高いんだけど)ちとそこまでポンポンいかなかった分、メロディックで歌モノとしての出来がいい。
一番弱かったそこを、ようやく力入れてきた。立て直してきた。
やっとちょいマシめなのをここにきて出してきたかなってのが、初期からずっと追っている個人的印象ですかね。でも、このアルバムで「お、いいじゃん今回は珍しく!」「オワコンのくせにやるじゃん!」「バートン、がんバットン!」となっているこちらに対して、当の本人はもういないというね、何だろこの圧倒的肩透かし感。
これをどうしようか。どうしてくれようか。バンド内でしょーもないグダグダの裁判沙汰やっているなかで、逆によくここまでマシなの作ってきたなーとある意味感心して調べたら、どうやらアルバム自体は数年前から出来ていたらしい。
しかも、なんでもこのアルバムの出来でもめていたらしい。
それで男根ディーノとまたもめて「バートンもぅマヂ無理リスカしょ」になったらしい。
なんだかなー。コイツら、悪い意味で、変わらねーわ。
大体、こういうグダグダの内輪で首締める自殺芸は、昔からここの十八番だ。デビューからのお家芸だ。しかし、どうするフィアファク。
そもそも、バートンがいない、っていうことは、この野太い咆哮と浮遊歌メロのギャップ萌えによるSF風景がなくなる、というに等しい。そもそもフィアファクというカラクリは、
①機械と生身の交わるブレラン的ディストピア世界観
②高火力の激烈メタルとしての格好良さ
③そのくせキャッチーで印象的なフックのあるメロを備えた楽曲力の三大要素の掛け合わせだ。
ちなみにここ20年、③がクソだった。
このバートン枠がクソだった。
ようやく持ち直したのが今回なわけだが、しかしこのうち①と③を担っているバートンが脱退。
果たして今後、それが保てるのか。
それを担えるヴォーカルを、落ち目のこのバンドが探せるのか。まあ、長い目で見ていきましょうや。
どーせ死んでんだからさー。(鼻毛抜きながら)
- アーティスト名:FEAR FACTORY
- 出身:US
- 作品名:「Aggression Continuum」
- リリース:2021年
- MODERN HEAVINESS、LOUD ROCK、INDUSTRIAL、THRASH METAL他