TWENTY ONE PILOTS/「Scaled And Icy」:79p
それを知るのは、いつも朝になってからだ。
嗚呼、やっちまった、と。
つい、飲み過ぎちまった、と。
飲み屋に向かう時には、今夜は早めにあがろう、ほどほどにしておこう。
そう思っていたんだが、新型コロナによる緊急事態宣言期間が終わったこともあって、外飲みも久々。
ふらっと街を見れば、知らない店までオープンしてやがる。
へえ、こんなとこにこんな店が出来たのか。ちょっと覗いていこうか。
そんなことをやって、で久々の友人と顔を合わせたこともあって、ついつい、やっちまった。
結局、午前様じゃないか。
当然、気分は最悪だ。
安酒のせいか。いや、飲み過ぎたせいだ。
頭は重いし、体はダルいし、寝不足だからもう少し寝ていたいがそうもいかないし、疲れは全然取れてないし、風呂にも入り損ねた。
クソが。いや別に誰が悪いわけでもない、自分が、クソだ。
スイーツ(笑)ならここで「死にたい」とかつぶやくんだろうが、おっさんはまだ死ねない。
はあ。
仕方ない、シャワー浴びて、気分転換。
ヤケに晴れてやがるのも、なんかムカつく。それでも繰り返される、朝日に、なんかムカつく。
傍らのスマホの通知で出てくる、しょうもないニュースやクソみたいなツイートには、もっとムカつく。
胃はもっともっとムカついてる。
はあ…。
こんな最悪な気分の、こんな最悪な体調の、こんな最悪の朝に、何を聴こうか。
例えば、こんなポップソングスはどうだろう。
売れっ子エレクトロポップ・デュオTWENTY ONE PILOTS、通算6枚目ともなるスタジオアルバム。
ダークトーンが強かった前作までから、何があったのか、それをまるで振り払うかのように、鮮やか一転これまでイチの高彩度に。
このパステルなまでにライトな躍動感が、今回のアルバム最大の特徴だ。
どうやらコロナのために、リモートでの製作になったと聞くが、それらの製作環境やこの世の騒動に抗うかのように、やけにポップで、軽やか。
そして瑞々しいメロディが弾け、耳障りのソフトな歌が跳躍する。
さながら世のイヤなことを、洗い流してくれようかとばかりの明朗爽快さだ。
しかし、アッパーではあるか能天気ではない。
軽快ではあるが、軽薄ではない。
何だろう、それはまるでコロナだなんだと混沌と不安しかない、この現代を塗り替えようと挑むかのようにポジティブだ。
ただし。その前向きな溌剌さの中に、時折ほんのりとした哀しみや寂しさが、虚しさが色づくときがある。世界はなかなか塗り変わらないはしないだろう、そんな陰りがふと、浮かぶ。
そのエモーショナルさも、またいい。
それにもしかしたら世界はそう簡単に塗り変わらないかもしれないが、それでもぼくらの気分くらいは、こうやって塗り替わるではないか。
さて、行くか。
クソだけど、クソな自分だけど、行くとするか。
疲れは取れちゃいないけど、それでも繰り返される朝の中を、行ってくるか。
そんな、世界はともかく最悪な朝の気分を塗り替えてくれるこれは、なんてことのないポップソングスだ。
★追記(2021年07月03日)
「今週のチェック」から引用。
はい、TØP。いいっすよね、このアルバム。
耳障りの良さからか、もしかしたら今週一番ヘヴィロテしてたかも。
なのに、どうやらポップス界隈では、あんまり評判よくないみたいすねー(笑)。
あの黒いやつどこいった、となっているご様子。
いや、ぼかあ好きだけどね。他は他。ウチはウチ。
メタル耳からすれば、いいアルバムだと思ってますね。
このぱーっと色めくポップなカラーリングは、好きっすね。いい曲ばかりだしレビュー記事に貼っていたPV曲#3″Shy Away“もいいけれど、後半、とくにポップな#8”Formidable“(↓)からのメランコリックでメロウな#9”Bounce Man“の流れが個人的にはツボでした。
- アーティスト名:TWENTY ONE PILOTS
- 出身:US
- 作品名:「Scaled And Icy」
- リリース:2021年
- ROCK、INDIE ROCK、ALTERNATIVE、HIP HOP、ELECTROPOP他