THE BRONX/「BRONX VI」:79p
THE BRONXは、いつだってロックンロールだ。
いつだって、極上にイカしたロックンロールだ。
それだけはデビュー以来にして徹頭徹尾ずっと、変わることがない。
変えることがない。
変えたことがない。
それが、THE BRONXというロックンロール・バンドだ。
確かに、その道程は決して一様ではなかっただろう。
例えば思い起こせば、ゼロ年代初頭。かの名1stアルバム「THE BRONX(1)」でデビューしたときは、荒くれささくれやさぐれ殺気立ったパンキッシュな暴走気質が、存分に先走っていた。
彼らの原初にして、しかし最高傑作はどれかと問われればぼくはこれを迷わずに選ぶだろう。
そしてそこからポップさを増したり、はたまた毛色と経路を変えてみたり、少しばかりは洗練されたりと、紆余曲折ようやくここまできたけれど。
それでもやっぱりその主軸は、そう言うほどに大して変わってはいない。
それはやっぱり混じりっけのない、とびっきりに高純度のロックンロールなのだ。
フルレンスにして6枚目。
その通り、見ての通り、聴いての通り、いつも通り、タイトルは「VI」ときた。
相変わらずストレートというか、直球というか、ひねりがないというか、まんまというか。
そしてそれがそのままに、現在の彼らを体現している。
即ち、ストレートに、直球に、ひねりなく、まんまに、6回目となるロックンロール。
要するに、そういうことだ。
こういうところもまた、何ともこのバンドらしくて微笑ましい。
だからここでも、あいも変わらずにただのロックンロールを、ただその通りにぶっ放してみせている。
相変わらず粗野で、飾りっ気もなく、衒いもなく、ブレなど全くのない、ドストレートの直球派。
それをやっぱりこれまで同様に、ズバン、ズバンと投げ込んでくる。まずはその爽快さこそが、THE BRONXだ。
何せ冒頭から、アップテンポなアゲアゲロキンローによる続け様での、畳み掛けときた。
かつてよりはガリガリした荒粒のザラつきは大人しく磨かれてきたとはいえ、そこはやはりBRONX。燃え上がる火柱のような熱気は、今なお健在だ。
しかし、その途中。
例えばM3″Watering The Well“やM5”Peace Pipe“などでは、単に雰囲気だけしかない薄っぺらい若造には到底ひねり出せない優れたポップセンスを披露。
実はその秀逸さこそが、彼らを長らくロックンロールバンドとして鈍ることも褪せることなく歩んでこれた何よりの賜物である。
そしてそんな懐の奥深さを覗かせる、その名も”Mexican summer“(M7)。
もう一つの側面でもあるサイドプロジェクト、MARIACHI EL BRONXの臭いをかぐわせるラテンなサウンドタッチなどをもまぶしながら、カラフルかつ鮮やかに、しかもテンポよくダレも息切れもなく、アルバム一枚を見事に駆けていく。
それも、初期数枚のようなラフパワー戦ではなく、歴戦を歩んだ年長組らしい手練としゃくしゃくな余裕で組み上げながら。
あたかも、それこそがいまや6回目をも迎えた熟練のロックンロールなのだと言わんばかりに。
そうなのだ。
「いつだってロックンロール」であるからには、その「いつだって」に耐えられる力量とセンスが必要なのだ。
「いつだって」を誇り、キープ出来る、力量とセンスが必要なのだ。
つまりは初動の初期衝動を、「いつだって」へと転換できる力量とセンスが必要なのだ。
それを何度となく出来てこその、「6回目のロックンロール」なのだ。
ただ単に繰り返せばいいというものではない。
というかその繰り返しを越えられなければ、ロックンロールに6回目は来ないのだ。
「BRONX VI」。
これはそんなロックンロールでしかない、彼らによる6回目の道標である。
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