THE QUILL/「Earthrise」(70p/100)
いたねえ、と長らくこの道に触れてきた者ならば聞いてきた名であろう。
思えばこのバンドも、随分と息長く続いているものだ。
何せデビューフルレンスが出されたのが1995年のこと。
そこからずっとスウェディッシュ・ストーナー、例えばSPIRITUAL BEGGERSあたりが引き合いに出されそうな(実際、人員的にも関わりある)煙臭い70年代ロックを標榜し続けている彼等。
尤も近年はもっとオールドロックな嗜好が色濃かったようなのだが、しかし通算9作目ともなる本作では幾分かこちら側により戻しているご様子とか。
成程、ここ数枚の事情は知らないが、少なくともここで聴けるサウンドは、確かに「あのQUILL」のものである。
(すんません、しばらくチェックを損ねてました…)
マジカルでサイケデリックな70年代ロックに、コク味追加で黒安息日エキスを数滴、ポトリ。
時折見せるズシリと沈むヘヴィウェイトな黒ずみ掛かったダークリフはその賜物だ。
とはいえ、このサウンドはやはりドゥーム/ストーナーと括るよりも、古典ハードロックの現代解釈といった趣が強かろう。
実際、サバスっ子というよりはどちらかと言うとDEEP PURPLEを彷彿させることのほうが多いし、かと思えばLED ZEPPELINやURIAH HEEPはじめ往年の英国ハードロックバンドや70年代ブルーズドロックの片鱗も浮かんでくる。
更にはアメリカン・サイケハードへの憧憬も顔を出すし、はたまた初期WHITE SNAKEなどを思わせることも。
あれれ、そんなバンドだったっけと昔を思い出そうとするも、困ったことに全然出てこないから仕方ない。
よく覚えていないけど、とりあえず現状のところ古典ハードロックのリヴァイバリストとしての力量と引き出しの多さは申し分なさそうだ。
と、そんな彼等だが、その記憶の通り、そして今もまたそうなんだが、いかんせん地味というか凡庸というか、悪くはないのだけど楽曲含めてぱっとしないのが最大のネックだ。
そう。全てに関して、ぱっとしない。
つまりは厳しくズバッと言うなら、このバンドの「これ」がない。
「これ」がないから、覚えてない。覚えさせない。故に、「いたねえ」になる。
結果、THE QUILLというバンドの売りは「これ」だぞ、が伝わってない。
そこがこの道の通の者にしか食指を刺激させない、最大の原因なのではなかろうか。
実際、このアルバムも、出来自体は別段悪くはないのだけど、しかしその反面で「これ」という決定打が全く見当たらない。或いは、あっても伝わるものになっていない。
例えば、相変わらず世界観に合ったパワフルでいい歌を歌うVoは、無名ながら大した実力の持ち主なんだが、しかしそれでも結果、「これ」にならないから、抜けない。
「これ」のプッシュが効かないもんだから、「これ」が伝わらないから「どれ?」になり、でやっぱりここでも「そこそこ、いんだけどね」止まりになる。
そんな実力派、ベテランの地味系古典再現者QUILL、以上となる。終わり、となる。
これはちょっと、余りに勿体ない。
「これ」を探そう。見つけよう。作ろう。掘り出そう。あてがおう。塗り込もう。掲げよう。
このアルバムはとりあえず「これ」なんだという、代替えの出来ない「これ」という何かを、そこに埋め込んでいこう。
このアルバムは、作品は、音楽は、ぼくたちという存在は、突き詰めれば最終的に「これ」なんだっていう、その「これ」を訴えよう。
彼等にここに求められれているのは、そんな「これ」である。
★追記(2021年06月26日)
「今週のチェック」から引用。
うーん、悪くないんだけど、地味だよねえ。
さすがにベテラン、実力も十分あるし、やってることもしっかりしてるけれど、でもさすがに地味だよねえ。いや、根っこはしっかりしてる。
こういうことやりたい、も判る。
でも、それを伝える一撃が欠ける。
だから通は好きそうだけど、それ意外に広がらない感しかない。そりゃ「あー、まだやってんだね」って感想しかないわな。
ぱーぽーみたいな#2″Keep On Moving“↓とか、結構カッコイイことやってんだけどなあ。
ちょっと勿体ないなあ。
- アーティスト名:THE QUILL
- 出身:SWEDEN
- 作品名:「Earthrise」
- リリース:2021年
- STONER、DOOM METAL、HARD ROCK、OLD ROCK他