PROUD/「Second Act」:72p
知っているけど、聴いたことがない。
そういうバンドって、アルバムって、誰にでもあることだろう。
ああ、そうそう、それね。
それ、知ってる。
そのアルバムジャケ、見たことがある。そのバンド名、耳にしたことがある。
でも実際にはちゃんと聴いたことがない。
何処にでもよくある話だろうが、ぼくにとってこのPROUDというバンドが、実はそれなのだ。
1984年にリリースされた「Fire Breaks The Dawn」。
邦題は「情炎の白夜」。
そう、邦題があるってことは、日本でも国内盤でレコードがリリースされたということだ。
しかもかつての大手、東芝EMIから。
ということは、それなりの扱いだ。
ああ、じゃあそれやっぱり、知ってるわ。
そのレコジャケ、確かにどっかで見たことがあるわ。その邦題、どっかで聞いたことがあるわ。
でも実際にはちゃんと聴いたことがない。
かつて80年代中期。
EUROPEを全米ヒット前の早くから目をつけていた日本シーンは、それ以外にも良質なHR/HMバンドは北欧にないものかと、様々なバンドを発掘していた。
TNT、TREAT、MADISON、SILVER MOUNTAIN、220VOLT、そして戦士BISCAYA等々…。
このPROUDというのは、そんなバンド達と並ぶ一つだったのだ。
ちなみにそれらのバンドのアルバムを、ぼくは一通り揃えている。ちゃんと聴いている。
でもPROUDだけは、知っていたけど、でもたまたまなんだが、実際にはちゃんと聴いたことがない。
いや、言い訳するわけじゃないけれど、だってPROUDはそれらのバンドらより早々に消えてしまった上に、復刻CD自体も結構な幻だったんだもの。
何せSpotifyもない、昭和平成のあの時代の話なんだ。
いずれせにせよ。
そんなわけでこのPROUDは80年代中期の北欧勢の通バンドとして知られており、また彼等のアルバム、「情炎の白夜」はいわゆる「80年代北欧HR/HM」の隠れ名盤とされていた。
言ってみれば初期北欧メタル、伝説のバンドであり、幻の名盤である。
知っている。
そこまでは知っている。
でも実際にはちゃんと聴いたことがないのだが。
と、そんな知ってる、見たこともあるし耳にしたこともある、でもちゃんと聴いたことがないPROUDが、なんと36年ぶりに復活して新作を出すというではないか。
へえ…。
悪いけれど、それ以上の情動が、働かない。
だって、知っているし、見たこともあるし耳にしたこともあるけれど、実際にちゃんと聴いたことがないからだ。
そんなわけで、この2021年に。
そんなちゃんと聴いたことがないPROUDを、その36年ぶりの新作で初めてちゃんと聴くことにした。
ちなみに、今回の邦題は「甦る白夜」だ。
成程、「白夜」繋がりだ。「白夜」をかけている。
なお一応触れておけば、メンバーはオリジナルシンガーのアンダース・マグネルが更にギターも兼任。
さらにオリジナルのベーシスト、ロバート・ホルヴァス、そしてドラマーはマッツ・クリスティアンソンという陣営らしいのだが、それがどうなのかちゃんと聴いたことがないので、ぼくには全くわからない。
さてサウンドのほうだが、ぱっと聴いた感じ、なんと。
普通の真っ当な北欧メロハーをやっているではないか。
NWOBHMに触発された北欧様式美、というお決まりの初期北欧メタルのアレじゃない。
だから疾走曲もなければ、暗くてクラシカルなソレもない。
あれえ、こんなバンドだったっけ。
イメージとなんか違うのだけど、でも本物とどう違うのかはちゃんと聴いたことがないので、ぼくには全くわからない。
でも取り敢えずこれを聴く限り、古臭さは全く見えないし、まあメロハー自体が古臭いだろってのは置いておくとしても、わりと現代的なサウンドアプローチをしているように見える。
これが昔の彼等とどう違いがあるのかはちゃんと聴いたことがないので、ぼくには全くわからないのだが、少なくとも、ここでは普通に北欧メロハーしている。
M1”Sail Away”(↑)。
ほんのり哀感を含んだメロ、そして叙情的なギターソロが、いい。
恐らくはこういうところにかつての「白夜」の片鱗を残しているんだろう、ちゃんと聴いたことがないのでわからないが。
更に憂いを帯びながら、サビへの明度につながるM2”Broken Dreams”、そしてふと往年の北欧臭を躍動させる、M3”Magic”。
あるいは、ポップなM7″Higher“(↓)での鍵盤の冴え(ゲストキーボーディストとしてTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAのリチャード・ラーソンが参加して腕前を奮っているらしい)から哀メロ美しいM8” Hold On”への流れも秀逸だ。
うん、割といいじゃないか。
36年ぶりの新作だということだが、それなりにやるじゃないか。
ちゃんと聴いたことがないのでわからないけど、少なくともこの甦ったほうの「白夜」はなかなかのものだ。
ちょっとぼくの中のイメージとは違ってはいるけれど、まあ人間も音楽も、36年も経てば変わりもするだろうそのくらいは。
ならば、そろそろ。
ぼくもちゃんと聴いてみようかな、「情炎の白夜」を。
知っているし、見たことも耳にしたことがある、あの「情炎の白夜」を。あのPROUDに、向き合ってみるとしようか。
何せあの頃と違って、今はネットもSpotfyもある。
ふとそんな気にもなってきた。
どれどれ…
って、やっぱり全然違ぇー!
★追記(2021年08月07日)
「今週のチェック」から引用。
実際にちゃんと聴いたことがないPROUDを、つまりは36年前の1984年に出された「あの幻のPROUD」を、この時代にちゃんと聴いてみた。
というわけでここではその前1stアルバム、朽木…じゃねえや「情炎の白夜」こと「Fire Breaks The Dawn」の感想を。ええと。
取り敢えず、もっかい言うけど、
やっぱり昔と全然違ぇー!そして、結論。
最高。
たまらん。実際にちゃんと聴いてみると、「あのPROUD」は、やっぱり「あの時代」の北欧メタルの王道を、がっつりとやっていた。
基軸はNWOBHM直系のピュア&ストレートなリアル・ヘヴィメタル。
しかしながらも(今ではないあの時代の)そこに映える北欧らしいマイナーなメロディや、ダークトーンの様式美。
そしてギターはクラシカルながらも、要所で泣きを発する。とはいえ、マニアックなB級テイストが濃厚だ。
低予算な音像と、アクのある哀愁。
そして「だがそこがいい」という、あの時代の北欧B級メタルらしい、旨味。
このニュアンスを現代に伝えるのは、ちょっと理解が難しかろう。
時代の空気を知らないと、味わいを解説できない。そういうあの時代らしい、北欧メタルだ。
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- アーティスト名:PROUD
- 出身:スウェーデン
- 作品名:「Second Act」
- リリース:2021年
- ジャンル:MELODIUS HARD ROCK、HARD ROCKM、北欧METAL他