RISE AGAINST/「Nowhere Generation」(79p/100)
つまりは、パンクバンドとしての成熟と、ロックバンドとしての洗練。
それら双方に折り合いをつけながらこれまで歩んできた彼等の、その2021年の現在地点を伝えるような、そんなベテランらしい実直にして堅調なアルバムだ。
ゼロ年代のデビュー以来、本作で9作目ともなるフルレンス。
正直、テン年代以降かなりセールスが縮小してきている彼等だが、しかしそんなことはお構いなしと我道を進みつつ、前作からたった一枚で大手Virginから離脱。
Loma VIsta Recordings移籍第一弾として心機一転で挑む本作は、彼等の元よりのコンポーズ能力の高さを改めて晒し示すとともに、パンクという看板を長らく支えてきたその実態の本質たる、アメリカン・ハードロックバンドとしてのスペックの高さを物語る作りとなっている。
アルバムの色合いも、それを受けてカラフルだ。
旧来然たるファストなメロパンクチューンは勿論として、モダンロックのような楽曲からアコースティックまで見せながら、振り幅広めに熟練の手際でそれらを並べていく。
中でも目を引くのは、#3”Nowhere Generation”の存在感だろう。
何せ、アルバムのタイトルトラックで、このライトポップさだ。
とっくに判ってはいたことだが、今や彼等はこのような曲をさらりとこなしてみせる大人のロックバンドなのだ。
しかし。
それらに低通しているのが、深刻なまでのアメリカ社会の分断に向けられた彼等(というかTim McIlrath)の鋭い眼差しであることは、やはり本作を語る上で加算せねばならないことだろう。
「失われ、壊されたアメリカンドリームを生きる現代社会の若者たち」といった次世代に向けた熱いメッセージ力は、社会派と厭わない彼等のパンクスならではの気骨の現れであり、そこに関しては些かの揺らぎもブレも見当たらない。
嘗てよりずっとサウンドは広がり深まれども、そして大人のミュージシャンとして年を重ねども、しかしその根っこにあるのは未だ屈強なまでの男ハードコア。
いつになっても損なわれることのない、RISE AGAINST不変の魅力はそこにこそあるのだ。
★追記(2021年06月26日)
「今週のチェック」から引用。
いわゆる、スルメアルバムだ。
噛みしめれば噛みしめるほどに、味わいがある。正直、最初聴いたときは、「ふーん、ま、いんじゃね?」って感じだった。
ここんとこのアルバムと似たようなもんだろと、ぶっちゃけ思ってた。
なのに、繰り返しているうちに、じわじわ染みてくる。地味なのに、めたくそ染みてくる。
あれこれ、下手したらここんとこの彼等の作品のうちでも結構抜けてんじゃね?って気になってくる。
そして実際、いい。アップテンポにしたフーバスみたいな#2″Sudden Urge“から、フーファイみたいな#3”Nowhere Generation“へ。
こういうのをさらりと巧みにこなせるバンドになっていることも評価出来るポイントだ。
更には、いかにも彼等らしい、#4″Talking To Ourselves“や#7”Monarch“は勿論いいし、アコチューン#6”Forfeit“も大人のパンクバンドらしい渋みと落ち着きがあっていい。
このようにファストチューンの中にも変化球を絡めて、緩急程よくアルバムに抑揚をつけて飽きさせずにアルバム一枚、気持ちよくテンポよく駆け抜けさせてくれる。しかも重要なことに、ロックとしての熱度が落ちてない。
まなざしが、熱い。歌が、熱い。
日和ってもないし、しゃがれてもいないし、若くはないが、それでもまだまだ十分すぎるくらいにエネルギッシュだ。では、なんでこんなに熱いのか。
なぜならそこに熱い、だけど幼稚なガキのくだらない戯言ではない、大人の男の社会に対するメッセージが乗るからだ。
子どもたちへの、生きることへのはっきりとした明確な主張があるからだ。
それが実は、ロックの持つメッセージ性というやつだ。
重要なのは、言いたいことの内容じゃない。内容は正直、どうでもいい。それより、熱度だ。
なぜならそれが、俺はこれを伝えるのだという、歌にのせるパワーの源泉になる。
歌が、上っ面じゃなくなる。歌に魂がこもる。歌に生々しい熱気が脈動する。
最高じゃないか。最高にロックじゃないか。これはそんな、今を生きている大人のパンクスのアルバムだ。
速いだけがパンクだと勘違いしてんじゃねーぞ、そういう大人のパンクアルバムだ。
理想的なまでにいい歳の取り方をしているおっさんパンクバンドの、ロックバンドの力作だ。というわけで当初は79pにしてしまったものの、今の印象だと軽々と80pは超えている印象。
そりゃあやっぱりこれをお勧めしとかないわけには流石に嘘だろ、ってことでお勧め枠入りです。
やもすれば今週4枚中のトップランカーかもしれない。
- アーティスト名:RISE AGAINST
- 出身:US
- 作品名:「Nowhere Generation」
- リリース:2021年
- PUNK、POP PUNK、MELODIC HARDCORE、ALTERNATIVE、HARD ROCK他