OBITUARY/「Dying of Everything」:76p

OBITUARY
最初に一つだけ、ルールを説明しよう。
大丈夫。
誰でもわかる至極明快かつ、しかも極めてシンプルなものだ。
「OBITUARYとは、そもそも、こういうもの」。
以上、それだけ。
だがそれだけは、絶対だ。
90年代フロリディアン・デスメタルの生ける伝説、いや死せるなのか?ってどっちでもいいよな元祖死ぬメタルOBITUARYによる、11thフルレンス。
「速い曲は、そこそこ。
でも大方を占めている遅い曲は、それなり、ていうかぶっちゃけ微妙。
でもしょうがない、だってOBITUARYとはこういうものだから。
寧ろそこがいい、と受け止めるのがこのバンドマナー。
なので大概それに付き合えず、正直、退屈にしか聴こえない。」
そんな、ウチはそういう店じゃないからこれが嫌なら他をあたれ、というクソみたいなラーメン屋の店主が掲げそうなローカルルールまんまのアルバムが、また6年ぶりに作られた。
実質の活動休止を挟んでの随分と久方ぶりなんだけど、でもやれ今回こそ傑出した出来栄えだとか、やれキャリア随一だとか、当然だけどOBITUARYはそういう店じゃない。
だけどそういう店でない代わりにいつも通りだし、これが駄目ならOBITUARYは、全部駄目。
それが良くも悪くも、いや多分後者に傾いている「OBITUARYとはそもそもこういうもの」だ。
ベースはあくまで、90年代縁のオールドスクール・デスメタル。
しかし「売り」はそのひきずる重さと、ダーティに吐き散らかす悪虐ヴォーカル。
そして、キャッチーだけど、単調ですぐ飽きるリフ構成。
ヘヴィ、グルーヴィといえば聞こえはいいが、そのほとんどがダルいビート感。
不気味な不吉さが、そうだね不気味だね不吉だねっていう、不気味な不吉さ。
シンプルな作りで、そしてシンプルに面白みが少ない楽曲群。
そして安定の、突き抜けなさ。煮え切らなさ。代り映えしなさ。
え、売ってない?
大丈夫、もちろん全然大丈夫だ。だってOBITUARYとは、そもそもこういうものだから。
どこぞの海外サイトで目にした、「ポコポコなドラムサウンドに響くジョン・ターディ(Vo)の薄っぺらなコケ威し咆哮にこそ萌えるのがOBITUARY上級者」というのがまさに然りで、現代エクストリーム・メタルの一般的評価基準じゃとても測れない、「OBITUARYとはそもそもこういうもの」。
なにせオープナーM1“Barely Alive”での、いきなり怒涛スラッシィーな炸裂とSLAYERばりのグルーミィな血みどろ展開に胸アツ興奮し、思わずぐいと拳握って乗り出した身が、早くも次の曲でちゃんと真顔に戻れて椅子にゆっくり座り戻れる高血圧に優しい作りになっている、OBITUARYとはそもそもこういうもの。
かと思えばM4“War”で、ほぅ戦争の曲か、まんまだな!と思い聴いてたら、ただうぉーうぉー唸っていてもっとまんまだった、OBITUARYとはそもそもこういうもの。
(この曲はハードコアっぽくてちょっと格好イイけど、でも一応言うけど、OBITUARYだからな!?)
その他にもあれこれと随所に聴きどころのようなフックを仕掛け、「これは!!」とグイっとぼくらを引き付けてみせては、律儀にもすぐ後には「あ、やっぱこういうものだったわ」と、ちゃんと思い出させることを忘れないという芸の徹底した確立ぶりよ。
このように本作は、というか勿論このアルバムのみならずなんだけど、味わいへの理解と少しばかりの忍耐力と許容力によって冒頭のルールを守ることが出来る大人向け、しかも出来たら90年代初期から寝かされ熟成された思い出スパイスのストックがなされている方向けの「こういうもの」。
なので、その脳内スパイスをダバダバふりかけて向かい合うと、そのグチャドロの泥濘の深みとコクが一層楽しめること請け合いだ。
(ちなみにこの評点にも、そのスパイスが親のかたきとばかりにぶちまかれているのは、言うまでもない)
なお、そうでない一見さんはこれじゃなくってSpotifyのディスコグラフィ遡って往年の名作扱いな「Cause of Death」ポチりながら「OBITUARYとはそもそもこういうもの、OBITUARYとはそもそもこういうもの…」と3000回念じてスパイスを自生させてから挑んでみてくださいねっ☆
ま、つってもどうせあんま感想は変わらないと思うけど。(だからそういうもの)

OBITUARY/”Dying of Everything”
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- アーティスト名:OBITUARY
- 出身:US
- 作品名:「”Dying of Everything”」
- リリース:2023年
- ジャンル:DEATH METAL、US DEATH METAL、