HACKTIVIST/「Hyperdialect」:88p
一皮剥けた、とはこういうことを言うのだろう。
前作から洗練とともに大きく歩を進め、もはや新たな境地にすら向かったかの確信を与えてくれる。
これはそんな、彼らがネクストレベルを踏んだことを告げる出色の傑作だ。
HACKTIVIST。
ハック行為によって自身の政治的な目的を果たすポリティカルなハッカー集団の意をバンド名に冠した彼らの、5年ぶりの2ndアルバムが本作だ。
もう少し身の回りを説明しておこう。
このHACKTIVISTを乱暴に説明するなら、イギリスはミルトン・キーンズ出身のツインMCを擁するグライム×djentバンドだ。
…とこういうと、「ああー、要はラップメタルね」となるかもしれない。
更には、ニューメタル、グルーヴメタル全盛だった、あのゼロ年代前半のアレを思い出して、「ああー」となるかもしれない。
だからこそ、先に断っておきたい。
それじゃ、ないのだ。彼らのそれは、もうその通過点にはいないのだ。
確かに振り返ってみれば2016年の前デビュー作「Outside the Box」では、そうした要素がなかったわけではない。
そこにおいては「djentを加えたミクスチャー系譜の現在版」と言ってイメージできる域にとどまっていたことは、確かに認めよう。
しかし続く本作においては、それをベースにしながらもさらなる高みへと進化。
結果、作られた漆黒と怒情のドラマはよりアップデートされた格段上のスケールのものと仕上がっている。
百聞は一見にしかず、
彼らの場合、何はとまれその楽曲に触れて欲しい。
ぼくが何を伝えたいのか、言わんとしていることが、すぐにご理解できるはずだ。
例えば、どす黒いダークネスの中を浮遊するトラップを、やがて轟音が飲み込み潰殺轢死させるM1″Anti Emcees“。
このオープナーの一撃だけで、エクストリームメタルとして彼らが新境地に向かっていることが実感出来るだろう。
さらには、斬撃走らせるファストチューン、M10″Planet Zero“
その強力な殺傷力は、djentのソリッドネスとUKグライムの疾走感あってのものだ。
かと思えば、ラッパーのキッド・ブーキーを客演に迎えながらアングリーに激情をぶつけるM4″Armoured Core”はLIMP BIZKITの2020年代進行形を見せるかのようだし、フリーキーにグライムを走らせるM5″Turning The Talbes“はさながら初期THE PRODIGYに意識を向けたかのよう。
…と思わずおっさんの感性で過去のバンドで例えてしまったが、しかしそれらは彼らがそれらを模倣しているという意味では全くない。
どころか、フレッシュな感性で作られた彼らのロックは、ラップメタルの最前線がここにあることすら示していよう。
即ち、2020年代が生んだ、英国暗黒グライムメタルの結晶。
その手応えに称賛するとともに、しかしまだ尚思わせる伸びしろを前に、さらなる次の歩みにも是非期待したいところだ。
★追記(2021年08月14日)
「今週のチェック」から引用。
これ、ホントええです。
かっちょええです。勿論ただのラップメタルじゃない、使いつくされたグライムとdjentとを武器にしながら、それでもここ20年以上一流ミクスチャーが試み歩んできたお約束、「最新鋭のクラブミュージックとメタルを掛け合わせる」をアップデートした現代感覚で正しく行っている。
なので、新しくはないけれど、これが刷新された現代のラップメタルだ、というのはいえるんじゃないかな。
ってことで、改めて興味を持って調べてみたら、活動自体は2011年と、意外と歴史がある。
前1stデビューフルレンス「Outside The Box」ではまさに「djent×ラップ」の過渡期だったけれど、ここからどうやらラッパーの一人が脱退。
更にメロディックな歌唱パートに携わっていたギタリストが抜けて、新たにラップ/ヴォーカルパートが一新されている、といった状況のようです。うーん、国内版出てないので情報が薄い。
てかなんで出さないんだろ。
勿体ないので、今からツバつけておきましょ。
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- アーティスト名:HACKTIVIST
- 出身:UK
- 作品名:「Hyperdialect」
- リリース:2021年
- ジャンル:RAP METAL、RAP CORE、djent、MIXTURE、他