天まで、響け~MAMMOTH WVH/ST:82p

アルバムレビュー
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MAMMOTH WVH/ST:82p

先月、誌面が燃えそうな名の某メタル専門誌の表紙を見事に飾るとともに、華々しく巻頭トップカラーでドーンと独占インタビュー。
すわ大型新人の登場か?と期待されたものの、翌同誌今月号では肝心のアルバムがレビュー枠からBAAAN!されて「はみだし」扱いにされるという、怒涛の鬱展開に。
閣下0点〜、すらも雪解けして聖飢魔IIから令和へと向かったこの時代に一体何事が…というような大人の事情の闇を覗くような話はさておき、だ。

ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン
通称ウルフィー。

言うまでもなく、かの伝説のギターヒーロー、エディ・ヴァン・ヘイレンの息子である。
2007年には、VAN HALENの正式メンバーとしてツアーその他に加入。しかも加入当時は、なんとまだ16歳だった。

そんな彼による初のソロ・プロジェクトが、このMAMMOTH WVHである。

ソロ・プロジェクトと言っても、ギターは勿論のこと、ベースからドラム、ボーカルまで、何と全部彼自身がこなすという、マルチでハイコスパな一人バンド。

ちなみに言うと、このMAMMOTHというのは、かつてエディがVAN HALEN以前に組んでいた前身バンドの名でもある。
しかも生前、かのダディにおねだりして使用の公式許可を頂いた、なんて微笑ましい逸話付きだ。

とそんな二世モノのデビュー作。
いやいや、かつてのロックギター革命児と言ったって、そんなことは80年代という太古の昔話のこと。
この2020年代にエディ・ヴァン・ヘイレンもヘチマもねーわけで、ましてやその息子ガーって言われても「はあ…」位にしか答えようがない。

そんな身で、ろくすぽ期待もしないまま本デビュー作に向かってみたのだが、いやいやどうして。
これが思いの外に良い出来であり、正直、感心した次第だ。

何と言っても、ただのノスタルジーもの、親の七光リバイバル枠じゃないのがいい。

どうせ何ちゃってヘイレンで、ヘイローベイブとパナマからジャンプでもしてリリガミるんだろ。
そうナメていたら、すまん、全然違ってた。

溌溂かつ明朗、キャッチーでメロディックな王道アメリカンハードロック。
その意味では遠く離れてもいないのだが、しかし少なくとも現代感覚のそれを、至極堂々と、自然体で、こなしてきている。

つまりはVAN HALENをも血肉としつつ、そして自らに流れみなぎる血と肉を自覚しつつも、しっかり彼らしい彼の描かんロックをこなし、しかもその質が伴っている。
そこにまず好意が持てる。

例えば、いきなり冒頭から、#1″Mr.Ed“だ。
言うまでもなくこれは、江戸でもなければ股間が勃たない人のことでもなく、父を差してのものであろう。
そう、自身の立ち位置と求められるスタンスを明確にしながらも、しかし音楽性は自然に呼吸するかの現代的なアメリカン・ロックそのもの。
そしてそれがアルバム全域に広がっている。

大陸を思わせる、おおらかで太めのグルーヴに、緩やかで伸びやかなメロディ。
ただしそこに陰る黒みにはちょっと、いや割と彼のお気に入りであるALICE IN CHAINSの片鱗を見るところもあれど、それも込みで十分に魅力的だ。

伝説的存在の父を敬愛しながらも、しかしそれになろうとするのではなく、あくまで自分は自分と彼自身の音楽でロックに挑む。
だから音楽スタイルも似せることなく、ただ自分の望む”好き”を求めてロックする。
それが、その姿勢とサウンドが、ぼくは気に入った。

願わくばそのロックが、かのギターヒーローのいる天にまで響くといいのだが。

 

★追記(2021年07月17日)
「今週のチェック」から引用。

今週のレビュー枠4枚中、個人的に一番良かったもの。
それがこのMAMMOTH WVHでした。

正直、ほとんど期待していなかったんですけど、聴けば成程いいよねってなる。
これは敢闘賞じゃないでしょうか。

前にネット上で、FOO FIGHTERSのナチュラルなロックとALICE IN CHAINSのグルーヴ、と書いていたもののを見たけど、ああそうだわ、確かにそんな感じだわ。
この曲(↓)とか、まさにそれだ。

VAN HALEN的というよりも、90年代オルタナティヴというUSスタンダードのハードロックを現代感覚で屈託なく明朗快活に表した感じで、普通に等身大で気持ちいい。
この「普通に等身大で気持ちいい」ってのが、いい感じだ。

DATE
    • アーティスト名:MAMMOTH WVH
    • 出身:US
    • 作品名:「Mammoth WVH」
    • リリース:2021年
    • HARD ROCK、AMERICAN HARD ROCK、ALTERNATIVE他
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