VENOMOUS CONCEPT/”The Good Ship Lollipop”:70p
ええーっ!?
これがあのVENOMOUS CONCEPT!?
コイツら、こんなオルタなコンセプトだったっけ!?
と、思わずベノモウスにモノモウスかの本5th。
慌ててメンツを確認すると、NAPALM DEATHのシェーン・エンバリー(Ba)と元BRUTAL TRUTHのケヴィン・シャープ(Vo)というこれまで同様のLOCK UP組を中心に、前作にもいたNAPALM DEATHからギター・サポーターのジョン・クックとほとんど変わっておらず、唯一ドラマーには新たにカール・ストークスが参加した。
って誰?と思ったら元あのCANCERときた(懐)。
そんな激烈デスグラインド大御所ユニットの新作なのに、ジャケアートからして幾分のサブカルこじらせスメルが芳しい上に、え、アルバムタイトル…キャンディー屋さんの歌?と完全に悪い予感が的中する気しかしてこないという、ものの見事な前フリよう。
で実際にも当然ながらそれが当たるわけなんだが、結果からすれば要するに、前作でもややながら見せた変化の兆しをここではそっち方面に大きく振り抜けようとしてみせたかの印象だ。
よってかつてのようなハードコアパンクやグラインドコアの耳痛なアレを予想していると、マガジンマーク多発につき要注意。
例えば、それを象徴するかの、このPVカット曲、M6“Fractured”。(↓)
何このFOOFIGHTERSのゆるふわドライブ感にキラキラ☆どりーみんなMY BLOODY VALENTINE混ぜこんだやつ。
このように主となる音楽性としては、彼ら流に80年代初期英国ロック縁の黒ずんだポストパンク、ゴシック、80年代後期USポストハードコアなどをごった煮させたかの、オルタナ・ロックンロール。
だからそのベノモスな毒性は維持されながらも、しかしサウンド自体の刺々しい苛烈さの質性は全く変わっている。
なにせ、オープナーのタイトルトラックM1“The Goods Ship Lollipop”からして、それを象徴するかのゆったりインダストリアルなムードでHELMETでもおっぱじまらんグルーヴィさ。
辛うじてM2“Timeline”のようにENTOMBEDばりなアッパーの疾走デス&ロール、あるいは一部ストレートなハードコアパンク・ナンバーもないわけじゃないが(M8“So Sick”)、しかし全体的にはミドルテンポ・メインにヘヴィネスとメロディックさを互いに絡めたような方向性が支配的だ。
かくして総じて捉えてみると、シェーン・エンバリーによるパンクルーツからの英国ロック趣味、とくに英国ポストパンクの流れを受けながら、KILLING JOKEの漆黒の無機質とFUGAZIやROLLINS BANDのいびつな揺らぎを混ぜた冷ややかなダークさをHUSKER DUのパワーポップな熱気で炙って煤けたかの印象なダーク・ロックンロール・アルバムになっている。
…とここまで書いてふと気づく。ああ、そうだ、アレだ。
この、旨味と魅力も確かに含まってはいるが、それでも良くも悪くもな、なんともいえない微妙さ。
これをうまく伝達出来ないもどかしさを嘗て何処かで味わったなと辿ってみたら、そうだ思い出した。
かつて90年代の半ば頃、NAPALM DEATHがオルタナ試行錯誤沼に藻掻いては抜け出ずにいたあの頃の姿だわ。
そう、
この連中でこの音楽やるかという一見した意外性と、「いやでもやっぱりそりゃ根っこにちゃんとあるよな」と納得しながら、引出しを覗くかの楽しさ。
それらも勿論ないわけじゃないが、でも正直、これをやるにしちゃインパクトも弱めで、どこかどうにも拭えずに残る、なんとも言えない微妙感。
はるか20年以上も前に味わったことのある、あの微妙感。
さあ、どうすっかこれ…。
とはいえこのVENOMOUS CONCEPTというのは、そもそもからして連中の趣味によるサイドプロジェクト。
なのでどうぞ好きな音楽をお好きにやればそれで誰に咎めを言われる所以もいないし、リスナーの趣向が違うなら各々黙ってスルーしてLOCK UP聴いてろ、というだけのことでしかないんだろう。
ちなみにぼくは、ラモーンパンクなM9“Flowers Bloom”をはじめ各所で見せているノスタルジックなポップさに、やっぱりいつか見た彼らの懐の奥行きを思ったりもして、ちょっと懐かしくもなったのだが。
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- アーティスト名:VENOMOUS CONCEPT
- 出身:UK,US
- 作品名:「The Good Ship Lollipop」
- リリース:2023年
- ジャンル:HARDCORE PUNK,ALTERNATIVE,POST PUNK,ROCK,