TAIPEI HOUSTON/「Once Bit Never Bored」:79p

TAIPEI HOUSTON/「Once Bit Never Bored」
Kerrangでも「デンマークのテニスの、あとメタルドラミングでも名家なウルリッヒ家を継ぐ…」とちゃんと正しく紹介されてた、METALLICAのラーズ・ウルリッヒ(Dr)の愛息兄弟によるデビューアルバム。
さすが世界中でその人格者ぶりとプレイには定評が知れ渡ったグレイトドラマー、かつて米ローリングストーン誌による「ロック史上最も偉大な100人のドラマー」で62位あたりにランクインされた後、やっぱ違ってたわと改訂版で外されただけはあるラーズのウルリッヒ家がほこる二人の兄弟、レイン(Ba/Vo)とマイルス(Dr)が二人で結成。
つまりはリズム隊だけでシンガー兼任というギターレスのデュオ・ユニットで、しかもやっている音楽性はヘヴィメタルでもスラッシュメタルでもまったくない、ゼロ年代ガラージロックに近いロキノン枠設定だ。
どうせだったらベースレス編成にして「…And Justice For All」でもカヴァーしてやれば名家の親たちへの皮肉になったろうに、と誰もが考えそうな嫌味はさておいて、とどのつまりにやってることは控えめに言ってDEATH FROM ABOVE2022。
…なんだけど、そのWHITE STRIPESばりのスカスカガラージィ・サウンドの中に、フーファイに通じるおおらかなオルタナポップ感性だったり、はたまたBLACK SABBATHへの憧憬を思わせるスラッジィな重みや、場合によってはRAGE AGAINST THE MACHINEを彷彿させて響きうねりあがる跳躍力だったりを仕込んでいく。
その図太いファズグルーヴと熱気に満ちた若々しい躍動感がハツラツと放たれる様といい、ちょっとUKみなスタイリッシュさに寄せたこりゃストーナーや北欧ロックンロールに近いやつと思えばメタラーでも十分楽しめるはず。
DEFLESHED/「Grind Over Matter」:83p

DEFLESHED/「Grind Over Matter」
ゼロ年代中学生スウェディッシュ・デスラッシャーの特記戦力DEFLESHED、まさかの再結成&17年ぶり新作。
しかもその余りにヒャッハーな「あの時代」っぷりに、今年って2002年だっけ?と改めずにいられないほどロイヤルでストレートなデシラッスュ。
パトラッシュも血眼で猛力ダッシュに天翔けるその完全昇天脳筋スピードバトル展開は、てゆーかこれ何曲目だっけと考える暇すらも与えないほど、高圧ビートとリフまたリフで疾風怒濤に斬り結ぶ。
ソロ?楽曲パターン?馬鹿野郎こまけぇことはいいんだよと松田さんの手刀で地獄に落とされる、このパワー圧殺徹底豪放スタイルと激烈麻痺陶酔感覚こそが、何よりもDEFLESHEDかくありなん。
ただ今回は少し頑張りすぎたか些かの曲数の多さで胸焼け起こす間に、てゆーかこれ何曲目だっけと考えはじめてしまうのが、17年も経ってしまった令和にちょっとアレ。
そうこうしてたら、おや待てよ段々記憶が戻ってきたぞ、そういや17年前にコイツら自身が、てゆーかこれアルバム何作目だっけと路線考え始めたせいでバンドなくなったんじゃなかったっけか…と遠きゼロ年代に噛み締めたトラウマフラグが脳内にチラ見しかかってんだけど、まいーだろ今回は再結成のご祝儀に5pくらい包んだる。
BOSTON MANOR /「Datura」:70p

BOSTON MANOR /「Datura」
UKエモパンクでのスタートから、作品を重ねるたびに洗練とともにポップかつメタリックなアプローチを進めてきたが、前作からレーベル移籍。
SharpTone1作目となるこの4thでは、しれっとおしゃれUKポスコアになっていて、そのわずか2年ばかりの変化にあれこんなにホライズンがブリングミーしがちなバンドだったけかとマガジンマーク(!?)多量勃発。
確かにもともと立ち回り器用にデジタルオルタナ路線への色目を見せ隠れはさせていたれど、ここでようやく大きく舵をきれたのか、重力がっつりきかせての重鋼さとメロウな叙情性の両面をスケールアップすることで、これ何インチなインダストリアル化。
加えてお国柄のごっそりと陰ったスマートさによってシャレオツゴシックみをも強化しており、命を刈り取る形をしたポエミーでアトモスフィアなそっち側も難なく触手を伸ばし守備するに至ってる。
とはいえ収録数全7曲、しかもショートレンジ曲やインストを抜かせば実質5曲、これでフルアルバムだと言われても腹まだ五分にすら満たず、物足りなさ以上に評価に戸惑うばかりでどーすんのこれ、と。
それも含めでインパクトをちょいと欠かせるきらいもあってか、ぶっちゃけどこにもありがちなこのベタ展開、やるなら相当突き抜けが求められるけど大丈夫か、と一抹の不安が拭えないでもない。
取り敢えず、今後に要経過観察案件ってことで。
ENUFF Z’NUFF/「Finer Than Sin」:79p

ENUFF Z’NUFF/「Finer Than Sin」
ドニー・ヴィー抜き陣営になって三作目。
如何に聴手に期待を抱かさせないかというジャケセンスの健在さで、へえ新作出てるんか…と何気なしに聴いてみれば、ホラやっぱり意外とイイという昔ながらのズナフ職人商法なんだが、いやでも今回はなかでも相当良い方じゃないだろうか。
全くいらない冒頭からのロック・インストM1“Sound Check”は曲名含めて「そういうのいいから」とイヤな予感しかなくなりかかるも、しかしこれさえクリアすれば続くM2“Catastrophe”の柔和さで回復しての(大惨事じゃなくて一安心)、ほんのりビターで甘口、おなじみペールトーンなズナフポップが広がってる。
しかも今回は、ハードロック色が少しだけ強めだ。
それを象徴するかのM4“Lost and Out of Control”は、You Could Be MineなのそれともHIDEなのといった秀逸さで、ジャケの女性の上の姿はやっぱり50代後半な回春ロックンロール。
他にもエヴァーグリーンなM3“Intoxicated”、更には物悲しい薄暗みが次第に晴れゆくかの叙情美に、こないだのLILIAN AXEの新クソ駄作で多くの高齢者たちが負ってしまった深刻なメンタルダメージを癒されるかのM6“Hurricanes”などと、明暗塗り分け自在に、どこか懐かしくも懐っこいといういかにも彼ららしいノスタルお花畑パワポメタルを満喫できるからありがたい。
なので、この令和にピストルズ“God Save The Queen”をワイルドにカヴァーしてしまうイタさはチップだからしょうがないし、冒頭と全く同じで全くいらない「そういうのいいから」なロック・インストでラストをシメてしまうのもチップだからしょうがない。
以上、今週の4枚でした。
あと何気にBACKXWASHの三部作シメが出てましたね、そういや。
あんまりちゃんと聴いてないんだけど。
ではまた来週。

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