JESS AND THE ANCIENT ONES/「Vertigo」:78p
これを書いている今日(注:2020年8月7日)から、夏休みが始まった。
途中出勤があるものの、実質十日位は休めそうだ。
ありがたい。
何せこちとら、手付かずで貯めてしまったものが、山積みなのだ。
読んでない本、観ていない映画、手掛けてない勉強、そして聴いていない音楽…。
さあて、何処から手をつけようか。
まずは、これから行くとしよう。
闇深きフィンランドの魔女ことジェスなる女性シンガーをフロントにしたオカルトロックバンド、(多分)通算四作目フルレンス。
何でも過去アルバムが母国ナショナルチャートに食い込むなどと話題もあって、かねてからその名は聞いていたのだが、しかし実際に向かうのはこれが初めてだ。
にも関わらず、確か今年の春くらいにリリースを知ったまま、これまで手付かずにしてしまっていた。
そのためここでも紹介するのも当然お初なのだが、どうやら人脈的には同国出身のデスメタルバンド、DEATHCHAINとの関わりがあるらしい。
へえ、DEATHCHAINか、懐かしいな。
ゼロ年代初頭の初期頃にこそ威勢の良いデスラッシィなメタルをやっていたんだけど、アルバムが進むにつれ出がらっシィなメタルになっていき、追うのをやめたんだっけ。
おっと、そんなことよりこのバンドである。
JESS AND THE ANCIENT ONES。
バンド名からして、何やら神秘趣味がかっている。
「北欧の魔女ジェスと、古代の何か」。
名は体を表す、まさにサウンドがそれを物語っている。
マジカルにして、サイケデリック。
彼等はそんなカビ臭い70年代ロックを身上としており、それを象徴するかのハモンドオルガンと、独特の雰囲気をまとった妖しげなフィメイルヴォカルが、何より特徴的だ。
例えるならば、URIAH HEEPが現代北欧の山中に転生したらサブカルこじらせた女シンガーが混ざってた、みたいな感じだろうか。(やめろ)
とにかく彼等のロックは、そんな古びたヴィンテージサウンドに、ノスタルジアとともに妖気と北欧抒情を滲ませて躍動させている。
呪術的なダークさといいRISE ABOVE RECORDSあたりとの親和性も高そうだけど、しかし重く沈むドゥーミーなそれではなく、もっと揺らめくような軽やかさがそこにある。
またミステリアスではあるものの、OPETHのような構えたプログレッシヴさではなく、もっとオープンかつオールドハードロックのようなアッパーな疾走感がそこにある。
加えてコンパクトな作りも、いい。
唯一、10分弱もあるラストチューンが、長ったらしいクセに冗長でダルいためストップボタンをポチる誘惑にかられたが(この曲で評点マイナス3点)、それ以外は皆十分に及第点だ。
なかでもメロディアスな牧歌性をたたえたM2”World Paranomal”や、妙なリリシズムをグルーヴィに踊らせる、その名もシャレたM4”Love Zombi”(↓)。
或いはオルガン、キーボードがエナジェティックに絡み合う妖艶ながらもドライヴィンなM5”Summer Tripping Man”(↑)、あたりがぼくのお気に入りだ。
にしても、いい塩梅だ。いい感じだ。いいカラーリングだ。
メタルサイドにはない感性はオルタナティヴ的でもあるが、フィンランド産というのがそこに独特のタッチを与えている。
それにレトロだけど、この手にありがちなオタク臭の頭でっかちではなくて、寧ろ体感的なのが、何より良い。
しかもこれが4thということは、その前のアルバムや作品もさぞかし発掘し甲斐がありそうだ。
「北欧の魔女ジェスと、古代の何か」。
大人の夏休みの自由研究に、諸君らもこんなものを掘り出してみてはどうだろう。
★追記(2021年08月14日)
「今週のチェック」から引用。
存在は知っていたけれど、初めて向かうこの「北欧の魔女ジェスと、古代の何か」。
オカルトロック、と言われているようだけど、そんな70年代テイストのハードロックを現代に蘇らせているような感じだ。そのグルーヴもさることながら、それを色づけているオルガンの音がいい。
そしてそこに存在感をあらわにする、さして上手くはないけれどマジカルがかったキャラのあるジェスの妖しげなヴォーカル。
これが男だったら、ちょっと違う。
やっぱりフィメイルヴォーカルだから、いい。
こじらせきって大人になったような、ジェスのヴォーカルがいい。これでラスト長尺曲がもっと良ければプラス数点でしたな。
彼らだけじゃないけれど、ぼかあ、ダメプログレメタルあるあるな、意味もなくクソ長いのにただの雰囲気作りなだけで「んで?」って曲には厳しいんで。
ひとの大事な時間を奪うなら、それ相応のものを用意しろってんだ。
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- アーティスト名:JESS AND THE ANCIENT ONES
- 出身:フィンランド
- 作品名:「Vertigo」
- リリース:2021年
- ジャンル:DOOM/STONER、北欧ROCK、PSYCHEDELIC ROCK他