CONSTANCIA/「Brave New Wold」:72p
すっかりと、8月に入ってしまった。
夏本番とばかりに、ギラギラと痛いくらい無遠慮に照らしつける太陽。
そしてそれにごっそりともっていかれる体力と食欲、抜けない疲労感…。
あかん、夏バテの一歩手前だ。
いつからだろうか、夏が苦手になってしまったのは。
歳の、せいか。
そうだ、寄る歳波のせいだ、そうしておこう。おっさんの便利なところは、歳のせいにすれば大概のことは仕方ないかと納得出来るところだ。
しかし、そんなぼくでも夏の夜というのは、決して嫌いじゃない。
少しばかりの先にうっすらと覗けてきた秋に向けて早まり始めた日暮れは、日中にジリジリと焼けた空気を冷ましながら、夜のとばりをゆっくりと大きく広げていく。
そして、何よりその刹那を待ったかのように、火照りきった体に流し込むキンキンのビールが、美味い。たまらない。
これがあるから、夏の夜は嫌いじゃない。
何とか夏を、耐えられる。
尤も今は意味不明の緊急事態宣言、外飲みは出来ないからこうやってウチで飲むしかない。
まあ、それもそれだ。
音楽でも、メタルでも聴きながら、夏の夜に一杯やろう。
そう思いながらぽちぽちとspotifyをいじっていたら、そんな気分にうってつけのアルバムに行き着いた。
CONSTANCIA。
初めて聞いた名だが、どうやら出身はスウェーデンとのこと。
幾つかの経歴をもつミカエル・ローゼングレンなるキーボーディストを中心に結成されたらしい。
本作は3作目にあたるフルレンスとのことだが、しかしぼくが彼らのアルバムに向かうのはこれが初めてだ。
まず何が良いって、ハードロックだ。
ハードロックを、やっている。
確かにそれはメロディアスではあるのだけれど、しかしそれはハードロックとしてメロディアスなのであって、メロハーをやっているわけではない。
ギター。歌。ビート。キーボード。
どれもバランス良く、そして躍動感とエナジーとエッジがあり、だからおっさん臭くはあるけれど、でもしっかりとハードロックだ。
真っ当に真っ向から、真っ直ぐなハードロックをやっており、80年代テイストは勿論あるっちゃあるけれど、リバイバリストの取って付けたかのそれでもない。
だから時折見られる「〜っぽい」もあくまで色付けでしかなく、その域を脱してない。
コーラスをはじめ随所にふと塗されているデフレパ風味も、そんなワンカラーの一つだ。
そしてそれらを踏まえた上で、北欧ならではの哀感を帯びた叙情的なメロディが瑞々しく光っている。
しかもこの曲このメロが、というよりも、その良質なメロディセンスを活かした楽曲作りで全体のクオリティを高めながらうまくまとめられている、といった印象か。
そのため楽曲は、おしなべて良質。
一曲一曲のインパクトよりも、楽曲を重ねてじんわりと聴かせていく。
それもハードロッキンな重感と鋭角さを携えて。
おっと、M7″Titanium“。
後半に疾走チューンがこうしてねじ込まれているのも、いい。判っている。それも良質の。
こういうところ、ぼくは好きだ。
ハードロックだ。
大人の、ハードロックだ。
派手さはないし、言ってしまえば地味。
「ながら」で聴いていたら、スルスルと抜けて終わってしまいそうだ。
しかし、そんな華のなさの代わりに、味がある。旨味がある。
だからビールにもよく合う。
大人の夏の夜に、よくマッチする。
寧ろぼくら大人には、こういうのがありがたい。
これはそんな、大人の夏の夜のハードロックだ。
★追記(2021年08月14日)
「今週のチェック」から引用。
THE地味ハードロック。
いや、がっつりメロハーではあるんだけど、でもなんだろメロハーというよりはどちらかといえば、ハードロックをしている。それが個人的に良かった。
めたくそ地味だけどね、まあ地味に、でもこういうのっていいよねって感じだ。レビューでしそこねたバンド情報に触れておくと、まず中心になっているのはミカエル・ローゼングレンなるキーボーディスト。
ほう、出しゃばりはしないが時折プログレがかったクラシカルな鍵盤をみせているのがこの人か。でこのミカエル・ローゼングレンは、元SCUDIERO、TOKENなどのキャリアがあるとルビコンさんのページでは紹介されています。
さらにこのアルバムからBLOOD RED SAINTSなどの活動で知られるヴォーカリスト、ピート・ゴッドフリーをシンガーとして迎えているらしい。でその陣営らしく、内容もド地味。
大人っつーか要するに老人向け無刺激メロハーで、とりたてて「これが!」ってバンドでもアルバムでも、全くない。
むしろ、今あらためて聴いてみるとなんでこれレビューに取り上げたんだろって気分が強くなってくる。
でも、噛みしめると味もあるし、いやなんだかんだで意外といいんだよねーっていう印象に落ち着くってさっきから同じこと言ってんなおい。
やっぱ後半の疾走曲のアクセントが効いてるんだろうな。
こういうの入れると、ピリっとスパイシーでインパクトもかわってくるものな。とりあえず今週、さらっと試しにこの界隈で聴いた幾つかの国内盤リリースメロハー勢の中では
例えばPLATENSとかTOBYなんちゃらだとかCROWNEだとかよりはまだましかなと個人的にひっかかりましたね。
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- アーティスト名:CONSTANCIA
- 出身:スウェーデン
- 作品名:「Brave New World」
- リリース:2021年
- ジャンル:HARD ROCK、MELODIUS HARD ROCK、他