TIMO TOLKKI’S AVALON/The Enigma Birth:70p
元STRATOVARIUSのギタリストである、ティモ・トルキ。
何分詳しくないので、その後の細かい足取りまで追っていないのだが、ここしばらくはこの自身の名を冠したこのプロジェクトバンドを創作活動の主体としているらしい。
いや、正直もう「らしい」しか知らないので、すまん。小さな間違いやニュアンスの違いがあればどうぞ、何も知らぬ輩の戯れと扱って、そそくさと他をあたってくれ。
さて。
そんなこのティモ・トルキのプロジェクトも、どうやら今回で4作目となるようだ。
ここでは毎回、ゲストヴォーカルを多数呼び込んでは色鮮やかな歌模様をその芸風としているのだとか。
最早レーベルサイドの貧相な大人の事情スメルしか漂ってこない企画だが、そこは黙っておくとしよう。
まずは製作の背景に、軽く触れておく。
ここではティモのパートナーとして、SECRET SPHEREのアルド・ロレビノがプロデューサー兼コンポーザーとしてあたっており、そのもとでシンガーを多々招いてそれぞれの音楽世界を展開する、といった指向をとっている。
なお、ここで選ばれた客演シンガーは、以下のような面々だ。
・ ジェイムズ・ラブリエ:DREAM THEATER(#5)
・ ファビオ・リオーネ:RHAPSODY OF FIRE、ANGRA、ETERNAL IDOL(#9、#12)
・ ジェイク・E:ex-AMARANTHE、CYRHA(#6、#10)
・ マリーナ・ラ・タロカ:PHANTOM ELITA、EXIT EDEN(#7、#11)
・ ブリトニー・スレイズ:UNLEASH THE ARCHERS(#3、#10)
・ ラファエル・メンデス:ICON OF SIN(#4、#8)
・ カテリーナ・ニックス:CHAOS MAGIC(#2、#3)
・ ペルケイ:YouTubeボーカルスター(#1)
…うーん、すまん。
中盤以降、知っている人やバンドがろくにいない。
逆に言うなら、その程度の認識の書き手によるレビューだと思って頂いて結構なのだが、それはさておき本作の内容だ。
面白いもので、歌い手が違うだけでこれだけ変わるものなのか、という印象が、まずは一つ。
と同時に、それをも含めて落差の大きな作品だと感じた。
以下、正直な本音をぶっちゃける。
かなり容赦のない本音の酷評なので、耐性のない人はここで退室してくれ。
さて。
まず、序盤のハードル設定がキツすぎる。
もっと率直に言えば、この序盤3曲が余りにクソすぎて、ぼくは付き合いきれない。
取り敢えず#1″Enigma Birth“から#3”Memories“までをぼくが評点するならば、実質評点100点満点中、20p止まりとなるだろう。
寧ろ逆によくもこんなダサいナンバーばかりを序盤に固める気になれたもんだと、そのセンスのなさに感心すら抱かされる程だ。
ハイトーン強迫症で頭が完全にバカになってる#1はそういうものだと諦めるとしても、中でもミドルヘヴィな#2と#3においては、そのシンガーの人選も含めてティモ内におけるメタリックなセンスというものが見られず、ひょっとしてここでコアなリスナーだけを残すためふるいにかけたのかとすら疑いたくなる程に、呆れるつまらなさだ。
このように、このいきなり上級者向けハードモードにげんなりして危うく再生を停止しかかるも、しかしここから中盤以降激化するバトル展開はなかなかにして胸熱だ。
まずはブルース・ディッキンソンばりに勇猛にウホるパワーシンギングをみせる#4”Master Of HEll”(↑)で、一気にV字回復。
このヴォーカリストは知らなかったが、個人的には今作イチの拾いものであり、寧ろこういうパワーシンガーこそ、ティモには合うのではないか、と開眼させられた次第だ。
是非とも、次回作でも参加を望みたい。
そして、北欧おっさん感覚でいう最先端オシャレが数十周遅れで逆に新しくも何とも無いエレクトロダサアレンジなラブリエ曲#5″Beautiful Lie“。
更に、安っぽいアニソンメロハーな#6″Trush“へ。
この中盤自体の流れは、バラエティも躍動感もあって決して悪くはないだろう。
これらのメタリックな流れでようやく正気を保ちはじめる中、やっとアルバムはクライマックスに向かい、ファストチューンの畳み掛けへと突き進む。
なかでもにファビオ・リオーネによるラストはパワーメタルというにふさわしい勢いを満たしていよう。
よって結果往来、本作の最終スコアはといえば、平均点のちょい下位の出来、といったところか。
冒頭での失点が余りに痛すぎるが、とどのつまりが難点を言うなら、ズバリこれ。
ミドルチューンが明らかにつまらない。
つまりは、速い曲しか魅力がない。テンポを失うと、途端に魅力が消え失せる。
やはりそのことは、結局のところスピードとメロディしかなくエッジやヘヴィネスといったメタリックなセンスに欠けるということで…と言い出したらいつもの「ハイハイ、また北欧お美しいだけメタルへのぼやきね」となるだろうから、今回はこの辺にしておくとしよう。
とりあえず、上の評点は超甘口なものであって、冒頭の捨て曲数曲を省いてカウントしたものだと記しておく。
(本当ならそれをここに配した感性自体が減点対象なのだが)
★追記(2021年07月17日)
「今週のチェック」から引用。
これはもう、好きな人だけ聴けばいいと思うよ。
あ、でもこの ラファエル・メンデスというシンガーは、いいですね。
ブルース・ディッキンソンばりのゴリゴリと力強い雄々しさを備えた野太いウホウホシンギングで、いたく気に入ったウホ。そこでちょっと調べてみたら、ブラジルのICON OF SINというバンドのヴォーカリストなのだということがわかった。
なんでも、元々はYoutubeの「歌ってみた」系動画でブルース・ディッキンソンの物真似をしていた人のようで、それを見た「Fronties Records」がスカウトし、彼がバンド活動できるようにお膳立てを行い、このICON OF SINとしてデビューした、という流れまでは理解した。で、このICON OF SINはどうやらセルフタイトルで今年デビューアルバムもリリースしているという。
そこで興味を持って、早速それを聴いてみた。…のだが…。
うーん。
どこをどう聴いても、どこをどうひっくり返しても、本作のほうが全然、いい。すまん、レビューではやもすれば、ぼくがティモ・トルキをdisっていると読んだ人もいるかもしれない。
(書き手としてはそのつもりはあまりなくて、ここはいいんだけれどここはダメ、少なくともぼくのメタルやロックに対する価値観からすれば全然ない、という意味なのだが)でも、言うても流石は、一流だ。
流石は、第一線で戦ってきた歴戦のトップミュージシャンだ。
しっかりとシンガーの個性を生かし、本来のバンドを遥かに超えて彼の持ち味を引き立てながら、優れた楽曲を用いて、しっかり見栄えある演奏によって、こうやってアピールしている。だから事実、こうやって門外漢のぼくにすら、「このシンガー、いいな!」って思わせるという結果を現実に出している。
恐らくぼくがこの「ICON OF SIN」を最初に聴いてれば、「ディッキンソンの猿真似シンガーが、野暮ったくてダッサくてしょうもないD級田舎メタルやってるだけ」としか思わなかっただろう。今更だけど、好き嫌いはさておいても、そこにおいては凄いと認めざるを得ない。
ごめん、
なんだかんだでティモ・トルキ、やっぱり大したものですわ。
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- アーティスト名:TIMO ROLKKI’S AVALON
- 出身:フィンランド
- 作品名:「The Enigma Birth」
- リリース:2021年
- MELODIC SPEED METAL、MELODIC POWER METAL、北欧METAL、HEAVY METAL他