この夏の清涼剤~WOLF ALICE/「Blue Weekend」:70p

アルバムレビュー
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WOLF ALICE/「Blue Weekend」:70p

実を言うとこれを書いているのは、嬉しい四連休の始まりの朝だ。

先週に梅雨が開けてからというもの、すっかり真夏のガチ到来。
殺人的なまでに照りつける日差しは、こないだの初夏までとは別物とばかりに本気を出しまくりだ。
さすがに少々勘弁願いたいところではあるが、しかしそれでも夏本番。
そりゃあ、どうしたってこの太陽の下、開放的にならざるを得ないし、ふとどこかにでも行きたくなる。

そうだな、
ウチのガキどもでも連れて、海水浴にでもふらっと車を出してみようか。
あるいは、宿泊はしないけれど、山の自然にふれるべくデイキャンプでも行ってこようか。

…なーんつって、ね。
何せ、このコロナ下だ。
この手の遠出はさすがに少々、憚られる。
せいぜい近所のプールが関の山ってとこか。

さあて。
そんな心踊る夏の連休の始まりに、珍しくなのか、こんなものを聴いてみた。
米産にはない、スタイリッシュでこじゃれた、なんとも軽快なUKオルタナティヴの人気者。
当然ながら、メタラーどもには大概馴染みのない連中だろう。
実はぼくもこの三枚目にして、初挑戦だ。

WOLF ALICE
2010年にデビューして以来、英国シーンのブライテストホープ扱いで一躍大注目。
当然のように国内チャートでもブレイクし、今や若手の出世頭ともなっている彼等の、これが先日リリースされた三作目ともなるフルレンスである。

そう。
同じ狼でも、こっちはアリス。
昨日触れた、脳筋全力投球なクワイヤとオケまみれの狼とは、毛並みも血統も違ってる。

ちなみにアルバムタイトルは、「Blue Weekend」。
てちょっと待て。それはない。
夏の透けるような青空ならいいけれど、こっちゃ別に憂鬱でも何でもない。
まあ、ここらへんの陰りたがり屋は英国のお家芸ってことにしておこう。

それはさておき、アルバムの内容はさすがの程良さと、バラエティだ。
つまりはやはり秀才、多才にして多彩。
こんな門外漢のメタルオヤジが語るまでもないのだが、ギターロック的な旨味とソフィストケイトされたソフトなガールポップを混ぜ合わせながらも、シューゲイザーのノイジーさに加減を加えて、カラフルな色味を展開している。

とくにクリアで柔らかなエリー・ロウゼルの歌のタッチは、この手には疎いぼくのようなリスナーにすらも大変心地よく響く。
しかも、それを含めたこの音像は、とても軽やかで、鮮やかで。
夏のちょっとした清涼剤には丁度いいくらいに、涼やかだ。

何せアルバムは#1″The Beach“に始まり、#11”The Beach Ⅱ“に終わるという、そんな海岸物語。
そういうとすぐさまヤンキーならば、やれビーチでパツキンビキニがコレモンのプリケツにおっぱいぼーん、ってのがド定番だろうが、そこはやっぱりえげれす産。
品よく、さながら朝日の広がりを見せるかのように爽やかに始まり、そして沈みゆく夕陽のように夜のノイズに飲まれながらドリーミンに終わってみせている。

と、そんなオサレ気取りな本作だが、正直言うと、そこにこそ、ちょっと思わぬところがないわけじゃない。

というのもぶっちゃけ、確かにカラバリは多いけれど、彩色豊かではあるけれど、どうにもそれらの色みが得てして表層的なのだ。

例えば、ラップで迫る#4”Smile”、更にはパンキッシュな#7”Paly The Greatest Hits”が象徴的だ。
特に後者は「こちら側」の範疇を半歩踏んでいる分理解出来るが、せいぜい「やってみました」程度の腰の軽さで、所詮おざなりでしかない。
やりゃーいいってもんじゃねーんだよ、とつい一瞬ガナりたくなるが、ちょっと待て。
こんなのは連中にとっちゃタダの色付けアイテムだ、脇役だ、定食についてるお漬物だ。
それにケチつけるのはさすがに野暮ってもの。こっちゃ大人だ、やめておこう。

とどのつまりが、雰囲気モノの「なんちゃってオルタナ」。
ふとそんな気がしないでもないのだけど、恐らくそれはそれでいいのだろう。
雰囲気もの、全然オッケーだ。
なんちゃってだって、大アリだ。
だって夏なんて、そのほとんどが雰囲気に流されるだけじゃないか。
どうせ夏なんて、ナンチャッテで大概は終わっていくじゃないか。
オーケー、今日のぼくは連休朝で滅法気分が軽いんだ、
大目に見てあげよう。

そんな夏の朝、ギラつく太陽が本気を出す前の清涼剤に、こんな彩りの一枚はいかがだろう。
ぼくらメタラーにも、このくらいなら案外いけるんじゃないかな。

 

★追記(2021年07月31日)
「今週のチェック」から引用。

出たな今週のオサレロキノン枠。
つまりは「この夏の雰囲気UKオルタナアイテム」、以上OSIMAI。
でも、それでいんじゃないのかな。

なんかボツボツやってる出だしはどうでもいいけれど、M4″Smile“くらいになるとキャラ作りナンチャッテグランジ&アンビエントが安っぽさを数周して「これはこれでアリなんじゃねーの?」となってくる。

でもこれって「オルタナなんて所詮どの古着着るかの、ただの気分のセレクト合戦だよね」っていう提案なわけで。
じゃあもうその気分が合う人達だけで集まって、M7″Play The Greatest Hits“(↓)とかを真顔で「刺々しい」とか「ヒリヒリする」とか言ってそうな方々でろきろき呑々と楽しくやってればぼかーいいと思いまーす以上さBRUTAL TRUTHでも聴いてこよっと。

DATE
    • アーティスト名:WOLF ALICE
    • 出身:UK
    • 作品名:「Blue Weekend」
    • リリース:2021年
    • ALTERNATIVE ROCK、INDIE ROCK、GUITER ROCK、UK ROCK、POP ROCK、他
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