HELLOWEEN/ST:80p
「HELLOWEENという物語」、がある。
不朽のマスターピース「Keeper Of The Sevenkeys」二部作を出し、一躍ジャーマンメタルのその名通りの守護神となった彼らの、その四十年近くにもなる歩み。
そしてそれを取り巻く時間軸をも含んだ環境因子。
それらによって綴られてきた物語がもたらす音楽に、ぼくらはこれまで幾度となく感動、興奮させられ、時には落胆、困惑させられ、そして時に逸れたり離れたりしながらも、長らく魅了され続けてきた。
そんな「HELLOWEENという物語」〜小洒落てそれを「守護神伝」なんて名付けてもいいかもしれないが〜の、そのあらすじを一言で言うのであれば、畢竟「メロディックパワーメタル(ジャーマンメタル)の体現」であることは誰しも疑いないことだろう。
そして、本作は。
そんな「HELLOWEENという物語」に対し、当の本人である彼等自身が、どう向き合うのか。
そのことがこれまでよりも遥かに問われるアルバムとなっている。
「HELLOWEEN」と、自らのバンドネームをセルフタイトルとして冠していることも、まさにその証左に他ならない。
というわけで、いよいよ出されたこのアルバム。
本来的にはメモリアルプロジェクトだったはずのPUMPKINS UNITEDの流れを受けて、そのままの陣営で本格始動。
つまりはアンディ・デリスは勿論のこと、そこにカイ・ハンセン、マイケル・キスクまでを迎えてトリプルシンガー、七人体制となった夢のカボチャラインナップによるファン待望、初のスタジオアルバム、である。
そんなお祭りアルバムともなれば皆が望むものは最早明確であろうが、彼等もまたそれを受けつつも、しかしそれでいて昨今のサウンドをも踏襲。
よって往年のあの頃のスタイルを散りばめながらも、基軸のスタンスはあくまで、現在の延長線上というものだ。
故にそこまで過剰に原点回帰に勤しんで、ノスタルジックな焼き直しにふけるわけでもない。
あくまで現在の成熟したバンドのまま、その道程を、つまりは「HELLOWEENという物語」とはこういうものである、と今ここに伝えてみせているのが印象的だ。
楽曲は、いかにもなオープナー#1”Out For The Groly”からクライマックスの長尺曲#12”Skyfall”まで、全12曲。
正直、これらが抜きん出ているか、本当に粒揃いかと問われれば些かながら首も傾げようが、だからと言ってこちらのハッピーハロウィンパーティなお祭り気分を削げさせることもないだろう。
それと最近の彼等の悪癖に加えて更にはりきりが増したか、積載過多で情報量が多すぎるせいでスッキリさに欠ける、ていうか盛り過ぎでカタルシスが伝わりづらい、早い話が「クドイ」という明らかなマイナス面もないわけでもないが、まあ、その祝祭気分に免じてギリ減点は許してあげられる程度。(本当のことを言えば完全に全然アウトだが)
しかもカイやキスケの参入にも関わらず、誰よりも出色しているのがアンディの才気であることにも驚かされる。
このことは、彼のメロディセンスやミュージシャンとしての資質が、如何にこれまでのバンドの重きを担っていたかを改めて知らされる事実だ。
過去から、現在、そしてその先へ。
メロディックパワーメタルを貫き通してきた彼等による、これは自らの集大成にして、今を踏まえながらもこの後すら視座に収めた作品だ。
つまりはここに、今なお現在進行形な「HELLOWEENという物語」が綴られているのだ。
★追記(2021年07月03日)
「今週のチェック」から引用。
出たな、新作はろゐん実際どうよ問題。
まずの概ねの評価自体は、この通り。それは間違いない。
で、お祭り気分に水を差すわけではないが、ちょっとだけ思うのが「やべーぞハイプだ!」
成程、評価の通り、いいアルバムではある。賛同だ。
成熟し、今を生きているHELLOWEENが、アーカイブを用いながら現在進行系で紡いでいる彼等らしい音楽ではあるとは、書いた通りに、そう思う。
そこは、十分に買ってます。
その意味で、この面子で今、彼等がやるべき甲斐はあった。例えば”Eagle Fly Free“
を劣化させたみたいな#1”Out For The Glory“から始まり、”I Wnat Out“を彷彿させる(しかもそこにアンディ・デリスのなめらかなメロ展開という色味が加わるのも、いい)#3″Best Time“。…で、あと何があるっけ?
他、そんなぱっとしなくね?ってのが、まず一点ね。
ごっちゃりとワキャワキャしている割に、スコーンと来るものがちと弱い。
正直、もう少し、ぐぐっと迫る曲が欲しかった。
これはこちらの期待し過ぎなんだろうか。それと、もうひとつ。
祭り騒ぎに水を差すようで申し訳ないけれど、そもそもHELLOWEENにこういうの求めていたっけ、てのないですか?例えば、レビューにも書きましたね、これ。。
そして、ここが喉に刺さった魚の骨のように、ずーっと引っかかる。最近の彼等の悪癖に加えて更にはりきりが増したか、積載過多で情報量が多すぎるせいでスッキリさに欠ける、ていうか盛り過ぎでカタルシスが伝わりづらい、早い話が「クドイ」という明らかなマイナス面もないわけでもないが、まあ、その祝祭気分に免じてギリ減点は許してあげられる程度。(本当のことを言えば完全にアウトだが)
そりゃ「原点回帰作」、ってわけでもないからね、あくまで「今の彼等の軸上にキーパい要素を散りばめる」っていう作りだからね。
ケチをつけるのもちとお門違いだりって気もする。
するけれど、お祭りだからこそ、それが目立つ。あのさ、HELOWEENの原初的な魅力って、もっとストレートなジャーマンメタルの魅力じゃなかったっけ?
あれ、いつからこうなったんだっけ?なんつーかさ、張り切りすぎて盛り盛りすぎて、テンションは判るけれどカタルシスが今ひとつ伝わりきれてない。
ゴテゴテしてて、いらん情報が多すぎる。
つまり、クドい。
いやこれでも割とクドさ脱臭してんだ、というのも判るんだけど、それでも、クドい。
「80年代のジャンプ漫画じゃねーんだ、今のジャンプ漫画の書き込み量の標準見ろ!」てのも判るけれど、それでもすまんな、おっさんには胃にもたれる。そんなわけで、別にお祭り騒ぎを否定したいわけでも全くないんだが、このアルバムを聴いた最初のカーニバル気分が次第に違和感に変わっていくのを無視できなくなってしまった。
ちょっと、今回はお勧めは抜いておく。
また聴き込んでいるうちに「やっぱいいじゃん」となったら、何かの形で評価します。まあ…ねーだろうなー(笑)。
- アーティスト名:HELLOWEEN
- 出身:ドイツ
- 作品名:「HELLOWEEN」(ST)
- リリース:2021年
- MELODIC POWER METAL、GERMAN METAL、正統派HEAVY METAL、他