更なる先、へと~BORN OF OSIRIS/「Angel Or Alien」:74p

アルバムレビュー
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BORN OF OSIRIS/「Angel Or Alien」:74p

成る程、これだったのか。
そうだったのか。彼等はここを目指していたのか。

本作を聴いて、BORN OF OSIRISというバンドのこのしばらくの道程を、ようやく理解することが出来た。

いや確かにそれらはこれまでもうすらぼんやりと示されてはいただろう。
しかしやっとここで、はっきり、そしてまざまざとリアルに望むことができた。
そんな達観さが、ここにはある。

今だから言える…というわけでもなく当初にも思っていたが、2019年に出した前作「The Simulation」は、色々な意味で…というか正直あらゆる全てにおいて、中途半端なアルバムだった。

まず、そもそもからしてこれをフルレンス・アルバムと括っていいのかさえも微妙なくらいに、それは満ち足りていなかった。
何せ全8曲。しかもうち1曲は短いインストだから、実質7曲だ。
収録時間にしてみれば、25分程度。
コンパクトどころじゃない、言うてみればミニアルバムみたいなものだ。
その時点でもう既に尺としても、足りていない。

無論、それならそれでも内容が充実していれば別に何ら問題もない話。
しかしその内容自体も短尺な作りに合わせてではないだろうが、それもまたぶっちゃけ地味で中途半端。
いや、決して悪い作品だと貶める程でもないのだが、やはり今ひとつのレベルで、どこか足りていない。抜けてない。

シンセサイズドな方向性へと振り切るわけでもなく、かといってその前に出した初期リメイク作「The Eternal Reign」での自己確認を踏まえた初期回帰にがっつり向きあうわけでもなく、あいまいでどこかどっちつかず。
試行錯誤しているのはよく判るのだが、しかしそれが完全に結実してない。

そんな、双方を齧りながら食べきらずに終わってしまったかの、何とも物足りない作品だった。

思えば、BORN OF OSIRISは、デビュー作以来、コンスタントに2~3年スパンでスタジオフルレンスを出してきたバンドだ。
しかしそれを考えたら、2015年の「Soul Sphere」以来、1stミニアルバムの採録作とその寸足らずのフルレンスもどきと、要するにここ6年間、まともなスタジオアルバムが出ていない。
で、そんな中。
ぐぐっと長年ためこんだ跳躍力をようやく全力発揮することとなった機会、それがこの本作「Angel Or Alien」だったのだ。

このような背景を理解できれば、このアルバムが何を目指しているか、その眼差しが見えてくるだろう。
然るに、「The Simulation」を踏み台とした、さらなる先へ。
その延長戦上のまま、新たなる地平線へ。
その結果が、ここにある。

フューチュアリスティックなイントロから始まる#1”Pster Child”(↑)から、マシーナリーなリフに映える叙情的なギターソロが印象的な#2”White Nile”へ。
北欧メロデス、ラウドロックに近い滑らかなメロウネスとクリーンな歌メロを放つこれらからして、その意識が伝わってくる。

ガガッッ、ガガガッ、ガッ。

重く引っ掛かりブツ切るかのメカニカルなDjentリフを基軸にしつつも、しかしそこに塗られたカラフルなシンセをより前面に。
結果広がるサイバーな世界観の中に、エレクトロニカやデジタルな音像がより露わに散りばめ色取られ、多彩にアルバムを染め上げる。

一方でヴォーカルはツイン体制をより強調させ、メロディックさを与えて、歌メロを強化。
今やキャッチーなこのヴォーカルラインは、やもすればデスヴォイス以上に重要な役目をはたしているとすら言えよう。

そして、これまでも顔を出していた東洋風のメロを用いた、タイトルトラック#3″Angel or Alien“。
MV(↓)にも選ばれたこの曲も、やはり象徴的だ。

これらの楽曲から見えること、それはいわば彼らがここ十年やってきた、キーボードとヴォーカルの前面化によって果たしうるモダナイズドの賜物だ。
つまりは、Djent表現を使ったプログレッシヴ・デスコアから、よりメジャー感のある広いメタルへのアップデート。
敢えて言うならば、「Djent系オサレメタル」への彼ら流ジョブチェン。
前ミニアルバム(?)では果たせなかったそれを、ここではかなり踏み込んで実現している。
それが本作最大の、見どころだ。

とはいえ不満がないわけではない。
まず何よりも、「これ」をやるには楽曲のインパクトが弱い。
こっちの畑に向かうなら向かうでいいが、そこは化け物メロディメイカーがひしめいている魔窟だ。
そこに挑んで頭一つ抜きん出るには、この位ではまだまだとしか言いようがない。

しかし、ここに小さく育まれている可能性を、最後に一つ触れておこう。
それは、ラスト曲、#14”Shadowmoune”でのサックスの導入だ。
抒情性に満ちたなかでのアーバンテイストなサックスの音色、これがなんとも味わいをもたらし、胸をにじませてくれる。
実はこのサックスはオープナー#1の最後にも出てくるものだ。

そりゃ確かに今時エクストリームメタルにサックスを入れたからどうという話でもないだろうが、それでも彼らにおいては新しい味覚であることに違いはない。
これがまた今後の彼らの道にどう活かされていくのか。もう少し注目していきたいところだ。

 

★追記(2021年07月17日)
「今週のチェック」から引用。

前作の「これ実際どうなん?」を、なんとか語りきった感じだけは、しました。
ああ、これやりたかったんだね、もわかった。

でもなあ、正直、インパクト弱いんだよなあ。
がっつんとまだ、つき抜けていない。
何処かにモヤっが、正直、少し残っている。
あれもこれもで中途半端、ってのがまだ残っている感じもするかな。

DATE
    • アーティスト名:BORN OF OSIRIS
    • 出身:US
    • 作品名:「Angel Or Alien」
    • リリース:2021年
    • DJENT、DEATH CORE、METAL CORE、他
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