父と、それを追う子のメタル~GO AHEAD AND DIE/「Go Ahead And Die」:83p

アルバムレビュー
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GO AHEAD AND DIE/「Go Ahead And Die」(83p/100)

自身が愛し、そして目指し果たした夢の後を、立派な大人に育った息子が更に、追う。
世の父親達にとって、これはもう紛れなく一つの幸せのかたちであることだろう。

自らが作り上げてきた作品を、我が父のものだと子に誇りに思われる。
また、それらに向かう背中を、我が父の姿だと子に憧れ抱かれる。
そうしてやがて父と同じ道を目指すようになり、また父と同じ音楽を愛するようになり、かくして一人前となった息子に、父として、またその道の先輩として、手を差し伸べることが出来る。のみならず、一緒に活動し、歩んでいくことが出来る。
しかも、音楽で。ロックで。メタルで。
そんな男の夢をものの見事に実らせたマックス・カヴァレラというオヤジは、何と幸福なことだろうか。
まずは作品云々を語る前に、ぼく自身一人の父親の身として、何より先にそう思わずにいられない。

SEPULTRASOULFLY、その他幾つかのバンドでこれまで活動してきたマックス・カヴァレラ。その彼の息子イゴール・アマデウス・カヴァレラがバンマスを担っているというこのバンド、初となる1stデビューフルレンスが先日リリースされた。
しかも先の通り、ここにはマックス自身もメンバーとして参加しているという。

GO AHEAD AND DIE
随分と物騒なバンド名だが、名は体を表す、殺伐かつ剣呑たるバイオレントな激烈メタルがその身上だ。
スラッシュメタル、クラストコア、ハードコアパンク、ブラックメタル…。
それらの因子を含んでざらつき歪んだサウンドは、オールドスクールながらも、ダーティかつどす黒く邪気孕んだもの。
CELTIC FROSTHELLHAMMER。成程、黒ずみの色素には、そんな影響が覗けなくも、ない。
ENTOMBEDSODOM。或いは、そんなバンドらの名も、やもすればここに浮かぶことだろう。

しかし、である。
それら以上に何者にも増して強く思わされること、それはここで向けられている眼差しの先に、明らかに初期SEPULTRAがある、ということだ。
血、であろうか。道、であろうか。
その凶暴でノイジーな音像には、まだ世界戦に打って出る前の80年代、ブラジルかの地で荒削りにギラついていたあの頃の彼等が見えるかのようだ。

かつて父が目指し、これで世界を取ってやるのだと挑んだ音楽を、今度は子がそれを次いで、その現代感覚によって追おうとしている。しかもその傍に、偉大な父を据えて。
確かにこの音楽は一見、荒々しく凶々しいことこの上なく聴こえるかもしれない。しかし、そこに流れている愛情は、実に温かなことこの上ないものだ。

DATE
  • アーティスト名:GO AHEAD AND DIE
  • 出身:BRAZIL
  • 作品名:「Go Ahead And Die」
  • リリース:2021年
  • THRASH METAL、HARD CORE、CRUST CORE/CRUST PUNK、BLACK METAL他
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