COVET/”Catharsis”:81p

COVET/”catharsis”
POLYPHIA(一緒に来日ツアーも敢行)やスティーヴ・ヴァイらに次世代ギターヒロインとヨイショされてすっかりギタサーの姫ともてはやされた挙げ句、Djentはアニメじゃないの、ジャンルは妻子持ちなそこのギターさんにフリンミーとホライズンしてしまわれたことで炎上しまくる羽目となった(やめろ)、タッピングの女王ことイヴェット・ヤングさんによる実質インストユニット、COVET。
しかもそのこっぴどい失恋の果てに、メンバーとの仲まで険悪化して離散。
終いには買ったばかりのツアーバンも盗まれるなど、踏んだり蹴ったりの散々な目を経ての本3rdとなる。
ソフト・マスロック、ポストロックをベースにしながら、前作からよりポップさをぐっと増強。
彼女が語る通り、ときに80年代フュージョンや、ときにシューゲイザーな濁りザラついたテイスト(M1“Coronal”など)をも着色。
透明感溢れながらも、色味豊かな内容となっている。
なかでも秀逸なのが、高揚感と清涼感のある軽やかさに、一摘みのビターさが効いたポップチューンM2“Firebird”。
さらにはそこからシームレスに続く、いかにも彼女らしい変則さが冴えるM3“bronco”、そしてピアノをフューチュアさせたエレガントなM5“interlude”など。
そして甘口センチメンタルなM8“Lovespell”が後半、サックス(ここではMINUS THE BEARのアレックス・ローズが参加)と交わることでそのメランコリアのスケールを広げつつ、アルバムを閉じていく…。
一つだけ不満を零すなら、時折混ざる彼女の儚げなヴォーカルの存在が音の向こうに隠れてしまいがちなことだが、それもインスト作品を意図してのものなのだろう。
テクニカルで流麗なギタープレイの妙味を味わいながら、しかしそれのみに終わらない幻想的な美しさと、どこかレトロなノスタルジア。
そしてそれらに女性らしい繊細さと優しさすらたたえるエモーショナルさが流れるおかげで、ヒーリングミュージックみたいな癒やし効果すら機能してる。
間違いなく、彼女のなかでは、これまでで一番優れたアルバムに仕上がった。
SLEEP TOKEN/”Take Me Back To Eden”:79p

SLEEP TOKEN/”Take Me Back To Eden”
近年ちょいちょい面白い駒を出してる英国シーンから、最近になっていきなりその名をバズり出してきた彼ら。
マスク姿の匿名性というミステリアスさもあってか、ここしばらく急激に注目を集めている、クリムゾン先生のグローリー仮面な本3rd(多分)。
といってもぼくも本作からのご入学なんだが、その音楽性を「R&B meets ポストメタル」と言えば伝わるだろうか。
それはもう冒頭のM2“The Summoning”で、何を況や。
TOOLでもおっ始めんのかと思いきや、重厚メタルコアdjentみもあるよにほんのりヌーメタ色まで絡めつつ、中盤以降からはまさかのドしっとりと濡れそぼつこの暗黒R&B展開よ。
おかげで天下のMMR誌までが「ロックの可能性を極限に広げるこれは人類滅亡の陰謀なんだよ!!(なんだってー!!)」と、どういうことだクソ林絶賛。
他にも、M3“Granite”のクールさを経た末に、ジャジーなピアノに官能的に導かれるM4“Aqua Regia”に至っての黒艶アダルト・コンテンポラリーさに最早メタルバンドであることすら忘れかけるのだが、しかしそこからの激流慟哭ブラックゲイジーなM5“Vote”への雪崩込みよ。
と思えば、それに反して恋愛リアリティショーでもやってんのかな青春お花畑ポップM9“DYWTYLM”などなど。
かようにあれこれ色々やってるものの、こうやって「叫んでよし&ガッツリと歌ってよし」のヴォーカルの深みある力量がそれを可能にせしめる相当な下敷きになっているのはよくわかる。
ただし、だからといってそれイコールアルバムとしての評価や完成度と結束しているかといえばそうとも限らず、良く言えば「伸びしろがまだ残っている」、悪く言えば「改善の余地あり」。
で普通に言えば、「割ともっさり目」「ていうかタルい」「大体1時間以上もいらんだろこれ」以上。
よって評点はそこらをすくい合わせたところとなっているのだけど、でも悪くないと思いますよ。
終盤、いい感じにエモさを増してレンジ広げていくのもええのではないでしょうか。
THE MODERN AGE SLAVERY/”1901|The First Mother”:73p

THE MODERN AGE SLAVERY/”1901|The First Mother”
バンド名がオシャレ過ぎるとか誰も言うなよ、と例のRが2つもあって誌名がオシャレ過ぎる炎上専門誌でいじられてて笑った、この現代社会のオシャレ奴隷ども。
イタリアのオシャレデスメタル/デスコアによる、Napalm RecordsからFireflash Recordsへと所属先を移してのこれがフルレンス4thか。
欧州デスメタルに、メロブラ・エッセンスと、デスコアのブチギレ・テンションとジャキジャキした鋭角さ。
そこにSLIPKNOTの突貫さとKORNの漆黒トラウマエモーションなどのニューメタル添加物でコードをオレンジに書き換えたようなオシャレ作り。
とくにDARKANEあるいは体丸まった後期ジョナサン・デイヴィスなゴスメロでピーポくんシットしながらディムボギャる冒頭のM1“Pro Patria Mori”から騒がしく物騒かつに幕開ける本作だが、
「しかしそんなキャッチーさは、そこまででした。」と海外評で書かれて噴いてしまうなど。(くそー)
とはいえ、以降も猛然としたデスメタルをデジタルと怒号でブッタ切り裂いては、激重ブレイクダウンでモッシュパートへと持ち込む。
と思えば、陰惨な暗黒サイバーシンセを絡んでみせては、
「ぶばー。ぶばばばー。ぶおーん、ぶおーん。」と能天気EDMバトル開催。(M3“Irradiate All the Earth”)
他にも、爆裂ブラストビート、ハイこちらです。
複雑チャンキーリフ盛り合わせ、ハイ上のフードコートです。
凶暴ガテラル、値落ちセール棚からどうぞ。
エレクトロニカ、向こうのご年配向けオシャレコーナーです。
FEAR FACTORYの世界観の出来損ない、どっかそこらへんにぶっ転がってございます。
と、そこそこ入り用なものが安価で揃っちゃいるけれど、どれも皆三流品以下なイトーヨーカ堂メタル/コアといった感じしか拭えない。
しかもラストを飾るM11“Blind”は、勿論ヒネリもクソもなくベタにあの曲のカヴァーで、一応ファストなアレンジをしてはみたものの、アルバム同様に右の耳から左の耳へと抜けていく始末。
なお「1901|The First Mother」というちゅうがくせいがかんがえたタイトルは、彼ら曰く、ヴィクトリア女王が死んだ「1901年」の意にして、やれ「近代の夜明けで第一次大戦前の哲学者が云々…」と今の銀河を理解するために少し長くなるぞ、あと「The First Mother」に至っては「あそれ単にこれ次からの3部作のまだ第1章ってこと」とものの見事に俺達の戦いはこれからだと強調してしまっているので、奴隷先生の来世にご期待ください。
THE OCEAN/”Holocene”:80P

THE OCEAN/”Holocene”
ゼロ年代からその名を広めてきた、現代ジャーマン・プログレ界の怪物、THE OCEAN。
本作は「Holocene」と、前作「Phanerozoic Ⅱ」に収録されていたクローザーと同じタイトルであることからわかるように、2018年の「Phanerozoic Ⅰ」、そしてその前「Phanerozoic Ⅱ」に続く、三部作のこれが完結編となっている。
プログレッシヴ・ロックというか(いやプログレなんだけど)ポストメタル、ポストロック、スラッジ、ゴシック、インダストリアルなどをボーダーレスに渡るかの多彩なサウンドながら、ここにきて従来よりもエレクトロニカの要素をぐっと増強。
それにともなってか、本作では、動性よりも静性を重視した作りが印象的だ。
つまりは、重厚さよりも、浮遊感を。
あるいはより柔和に。より知的に、より優雅に、より繊細に。
ゆったり、じわじわと静謐な情念がゆらめき高まっていく壮大さを標榜しているのだが、しかしそのエレガントで理知的なソフトさのぶんだけ逆に言うと大人し目な作風となっている。
あれれ、こんなんだったっけ?
どうやら世間でも賛否がそれなりに別れているようなのだが、それも確かにわからないでもない話。
実際、ぼくもその淡々とした勿体ぶりようと回りくどさに、最初は不安になっていたバカツラュスャーだ。
往年のMASSIVE ATTACKみたいな始まりからその哀感とビート力が早めに高まっていくM1“Preboreal”や、そこから浮遊感と高揚感を高めてヘヴィにTOOLするM2“Boreal”などはダイナミックでいいのだが、次第にヒプノティックさが強まっていく中盤以降は、まさに然り。
大体さっきっからずっと「静→ダル→ダル→とにかくクソダル→動」のパターンばっかじゃねーか、大丈夫かこれ?となりかけるのだが、とはいえしかし。
後期NINE INCH NAILSに通じるような、いつまでも醒めない呪われた白昼夢のようなアンビエントな麻痺感を味わう一興もそこにあったり、はたまた北欧の女性シンガー、カリン・パークがノスタルジックな歌声で初期MUSEする冒頭から怒涛のメタルコア・バトル展開へとなだれ込むM6“Unconformities”などもありと、これはこれで意外にもバラエティ豊かで聴き応えがある。
そんなわけでラストの暗黒マジカルドゥームに至るまで、何だかんだでやれクソ退屈だのクソ地味だのとクソ減らず口こぼしてた身すらも、結局一枚楽しませてしまうのだから、やっぱり流石でしかないわ。
以上、今週の4枚でした。
THE OCEAN、最初は「全然ダメだろこれ」「ていうかタルいんですけど」だったんですが、聴けば聴くほどよくなっていく典型スルメ現象。
ひとまず一週間ヘビロテした結果がこれ↑なのですが、も少し聴き込んでみたくなる。やもすりゃ過去イチになりかねんぞ!?
え、何もうRANCIDもフーファイもA7Xも新作出てんのマジで?
こりゃ忙しくなんな!(わくわく)
それではまた来週。

COVET, SLEEP TOKEN, THE MODERN AGE SLAVERY, THE OCEAN,
・ネタが古い、おっさん臭い、と言われても古いおっさんが書いているので、仕様です。
・ふざけたこと書きやがってと言われても、ふざけて書いているのでお許しください。
・ネット上のものがすべて本当だと捉えがちなおじいちゃんや、ネット上のものにはケチつけても許されると思いがちな思春期のおこさまのご意見は全てスルーします。
・要するに、寛大な大人のご対応をよろしくお願いします。な?