IMPERIAL TRIUMPHANT/「Spirit Of Ecstasy」:70p

IMPAERIAL TRIUMPHANT/「Spirit Of Ecstasy」
ピッチフォーキーでピッチフォーカブルな、額に「NO Pitchfork NO LIFE」と入れ墨を入れている全国一千万のメタリック・ピッチフォーカーの皆さんこんにちは。(知らん)
そんな高音楽偏差値メタルヘッズ達が師走を迎えてのここ数週間、まるで競いあうように2022年ベスト10アルバムの1枚として血眼でSNSに挙げることが定められた今年屈指のエクストリーム自意識メタルアイテム、ここでも忘れる前に最初に挙げておくとしよう。
「エクスペリメンタル・ブラック・デスメタル」という、エクスペリメンタルなのかブラックメタルなのかデスメタルなのか知っているのか雷電なのかなパワーワードによって解説されることで「ジャンル分けとは一体」と思わずにいられない、ニューヨークのアヴァンギャルド・ディソナント・メタルトリオ。
こんな連中がかのCentury Mediaから出してくるのがこの令和とばかりに、本3枚目ではエクストリームメタルにノイズと不協和音と映画音楽とプログレとジャズ/フュージョン/ピッチフォークをぶちまけ混ぜ込んでは、「現代社会に通じる自由民主主義の終焉」などをテーマにした独自の前衛サウンドスケープを1時間弱もひたすら垂れ流してくれるので、「そういやもう2022年も終わりだけどその前にあのラーメン屋行っとくか」などとしみじみ考えさせられる。
よってそのトチ狂った世界観を眺めるような楽しみはあっても、大衆的娯楽性は決して高くはないものの、とはいえ大御所ジャズ奏者ケニー・Gが参加してのサックスはじめ意外とメロディックなところもあったりで決して聴きづらいわけではないしで、音楽の意味はよくわからんがとにかくすごい自信だ!とは思うけれどやっぱりそれ以上にさして面白みは正直薄いがそういうのを求める自体が間違ってるメタルなこれ。
でこいつらのこういうアー写を見る限り、ジャケにもあった黄金仮面をかぶる様式美っぷりがくりむぞん先生GLORYのアレで、やっぱり変態は仮面で繋がるのだな。
POLYPHIA/「Remember That You Will Die」:80p

POLYPHIA/「Remember That You Will Die」
そんなトライアンフなインテリペリはさておいて、今週何が良かったって、油断していたこの年の瀬に届いた米クッソテク・インストユニットの新作だ。
これまでもBABYMETALとの絡みで「何者だこいつら」と話題になっていた彼らだが、本作で4枚目スタジオ・フルレンスにして、これまでの最高傑作というに相応しい出来になっている。
スティーヴ・ヴァイ相手にヒケとらないというイカレきったプレイでバズったM12“Ego Death”が下の動画なんだが、個人的にはアルバムはむしろそれ以上。
なにせDEFTONESのチノ・モレノなどインストゥルメンタル・ナンバーに拘らない多彩なゲストを呼んでいるのだが、実は彼らの優れているところはそのズバ抜けたテクニカルさそのもののみならず、あちらこちらのクセあるゲストの個性や才能をもうまく前面に活かしながら自身の神業を併せてアピれる、その柔軟なセンスと対応可能レンジの広さに他ならない。
ソフィア・ブラックを迎えて「あいうえお」なジャパニーズカワイイ・ハイパーポップやらせた新境地M5“ABC”のこれなんて、何を況や。
いいからそこのメタラーもちとこれ見てみ中毒性ヤバイんだけど。
ていうかアメリカ人さん、ベッドでラーメンすすんのかよ!?
その他にもカナダのキーボーディストANOMALIEを呼んでドリルンベースやってみたなM3“The Audacity”や、KILLSTATIONが持ち前のエモラップを披露するM6“Memento Mori”などと、モダンポップからHIP HOPまでジャンルレスにして実に多彩。
初期の彼ららしいヘヴィネスにまどろむようなシューゲイザー的幻想美が巻き込み合うチノ・モレノとのM11“Bloodbath”も勿論、いい雰囲気だ。
MOTHER VULTURE/「Mother Knows Best」:76p

MOTHER VULTURE/「Mother Knows Best」
英ブリストル発、目下母国でのフェスなどで名を高めているらしいイキのいい新人の本デビューアルバムだが、これが思いの外にお気に入り。
ストーナーがかったロックンロールからして、引き合いの真っ先にQUEENS OF THE STONE AGEが挙げられそうだが、とはいえあんなオシャレ枠ではないうえ、もっと凶暴でポンコツでガラクタでアマタ悪くて、そこがイイ。
よって時折スラッジィにズルリと沈んでみせたり、70年代マジカルなサイケデリカでとぐろ巻いたりをスパイスに効かせながらも、ハードコア特有の熱気の生々しいヒリつきさを保っていて、しかもギターサウンドが割とSKID ROWなユースのゴンさんワイルド。
かたやどこぞで「ヴォーカルを務めているのがヘリウムガスを吸ったアクセル・ローズ」と評されて笑ったハイトーンシンガーだが、つい感高まるとダーティなガテラル咆哮をも混ぜ込みイキってくるマガジンヤンキー漫画高校並みな偏差値の低さでなんとも好印象だ。
その音楽性をブルーズパンクなどと呼ばれつつも、FU MANCHUばりなストーナー感覚に加えてTHE WHITE STRIPESあたりにも通じるガラージィな隙間とブリブリグルーヴを併せ持っているという一石二鳥ハゲタカ(Vulture)だけにっぷりなので、ROYAL BLOODやこないだのMETALLICAラーズのせがれ達のTAIPEI HOUSTONとかが気に入ったメタラーの中には、こっちのがバカで粗暴で性に合うという向きも意外とあるのでは。(てかぼくがそう)
ところで「折角こんなにハッチャケてんだから、若いくせにしみったれた音楽業界への不平とボヤキばかり歌ってんじゃねえ」みたいなことを海外評で見たんだけど、そんな歌詞ばっかなのかこいつら。(知らん)
IBUKI/「My Life」:74p

IBUKI/「My Life」
実力派女性メタル・シンガーによる、ソロ3作目。個人的には彼女のアルバムはこれが初めて。
なのでこれを聴く限り、オーセンティックなジャパニーズ・ヘヴィメタルに和テイスト・モダンゴシックをあわせたような世界観、音楽性となっており、曲名や歌詞内容にも桜吹雪が随所に咲き乱れてる。
てジャケは薔薇なのかよ、そこは桜じゃねーのかよ、となりかけるけど美人は常に正しいので仕方ない。
光射し込むM1“Treasure”のANGRAバトルから駆け出しつつも、重厚ダークミドルを和楽器で彩っては千本桜景厳ばりに多量に花散ってくM3“舞桜”で、その和模様に演歌味がいきなり卍解急上昇。
済まぬさんも壁にめりこまん圧倒的なシャウトとハイトーンでマーシフルにフェイトされていると、やがて坂本冬美の“夜桜お七”をさくらさくらとカヴァーしてのクライマックスではマーティ・フリードマンも腰抜かすかのコブシ効きまくり完全演歌メタルにまで昇華。
かたやその綺羅びやかかつメタリックな装いの中に、バラードはじめ時折ふと浮かぶJ-POP的感性も程よいエッセンスになっている。
ただし唯一の難は、今一つフックのあるキラーチューンに欠けるせいか、そのテンポの良さもあってか割とスルスルとアルバムが進み、抜けてしまいがちなことか。
までもソロ活のみでここまで作り上げてしまう技能は確かに凄いにゃ違いないのだが。
なお製作には地獄カルテットのギタリスト、小林信一氏なども関わっている様子。
以上、今週の4枚でした。
実はこれら以外にもバージニアのインディーロック・バンド、TURNOVERの新作が程よい緩やかさのドリームポップでなかなか良くてリピっていたりしましたね。
ではまた来週。

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