LITURGY/”93696″ :93696p

LITURGY
米ニューヨーク発、
宗教学的指向の極めて強いインテリ芸術集団、現代プログレッシヴ/エクスペリメンタル・ポストブラックメタル・ユニット、LITURGYの新作がリリースされた。
バンドのブレインにして中心人物ヘイラ・ハント・ヘンドリックス(Vo.Gt)自らして「超越ブラックメタル」というその音楽性は、キリスト神秘主義に照らしての高度な計算により構築された、唯一無二の存在感。
LITURGY=キリスト教の「典礼」を意味するバンド名に相応しく、今回のタイトル「93696」も「天国、または文明の新しいイオンをセレマ数秘術に基づいて算出した数値」とのことで、とてもじゃないがVAN HALEN「OU812」なヘビメタ脳じゃないことが伝わってくる。
しかもCD二枚組、レコードでは何と4枚組の4章構成になっており、それぞれのテーマは次の通りだ。
- 1章「主権」
- 2章「階層」
- 3章「開放」
- 4章「個体化」
…と、ここまでで読むことを完全に放棄したくなったおいそこのOU812頭よさんも、大丈夫!
音楽的にはそこまで難解かと言われれば、案外そうでもない。
要するにポストブラックメタルをポストロック、ジャズ、教会音楽、プログレ、エレクトロニカ、ピッチフォークで因数分解して再構築してデリダ的に脱構築してポストマルクス主義のポストに投函した、まあアレがこうするちょっとだけ変わったメタルの一種だと思って、堅苦しい感じじゃなく気楽に楽しんでもらえればいいんじゃないかな。
さあ、それでは1章、「Sovereignity(主権)」より、M2“Djennaration”(「文明的退廃」の意と思われる)を。
その文明的、潜在的、難解的ナントカ的に続いて、M3“Caela”ではオリエンタルな音階とアジアンな笛によって、現代グローバル社会のはらむ世界的搾取問題をダイナミズムの中に内包した複雑な表現に成功している。
そして何より特筆すべきは、M5“Haelegen 2”。
ここではあえて道化を演じることで、キリスト教的オペニズムに対するアンチテーゼを表現している。
そして迎える、タイトルトラックM11“93696”。
ここではなんと、その美しさの中にもはかなさを内包した、ハナミズムに対するアンチテーゼをキリスト教的オペニズムとして開花。
さらに現代オペニズムのアイコニックかつアンセミックな祝祭感に溢れたラストを迎えると、そこにはハナミズム的開放感とともに、全1時間22分というボリュームがまるで30分くらいのものでしかないかの体感を覚えるのであった….。
…で、えーと、すみません。
今30分くらい経ったんですけどぼく、そろそろベビメタ聴きたいんでこれ止めていいですか?
※てめーふざけんなよってなられたお方は、ちゃんとレビューしたこちらをお読みになられてから、一旦深呼吸してください。

LITURGY/”93696″
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- アーティスト名:オペニズム
- 出身:ハナミズム
- 作品名:「”アンチテーゼ”」
- リリース:93696年
- ジャンル:前衛的