SUBTERRANEAN MASQUERADE/「Mountain Fever」:80p
世界はやっぱり広くて、そして、世には知りもしない魅力的な音楽にあふれている。
そんな驚きと発見をずっと繰り返してきているのが、ロックファンというものだろう。
これだけデジタル情報技術が進化し、これだけグローバル化が発展し、これだけ誰もが調べる気になれば幾らでも調べられそうな時代になってすら、それは全く変わらない。
このバンドの存在を知ったのは、実を言うと本当に何というきっかけじゃない。
というのも晩酌のお供にスマホをいじっていたら、ぼくのSpotifyに、ぽろん、と彼等が現れたのだ。(↓証拠笑)
「新しい音楽と出会おう」
まさにそうだった。
そのとおり、ぼくはこのSUBTERRANEAN MASQUERADEという、新しい音楽に出会ったのだ。
正確にはテクノロジーによって意図的に出会わされたのだが、そっち系の小面倒臭いことは今はいい、最新情報技術よありがとう。
イスラエルで活動を続ける、中東プログレバンド。
何やら謎に長ったらしい名前だが、えーと、さ、サ、サブテレニアン・マスカレード…?で合っているのだろうか。
なんでも結成はかなり早く、1997年とのことだからもう結成24年となる。
つまりは十分過ぎるベテランだし、どうやらアルバムもかれこれ4~5枚位は出しているようだ。(ソースはSpotifyのディスコグラフィ)
尤もネット上でも情報が少ないので、その是非は不明。すまん。
さて、「プログレ」と一応呼称してはみたものの、いわゆる「それ」とは若干、いや結構。異質だ。
まず、サイケデリックな音像ににじむイスラエルらしいご当地中東情緒が何とも特徴的だ。
例えば、M3”Mountain Fever”などはどうだろう(↓)。
やたらと熱気のあるラテンのムードすら持った叙情的な序盤から、やがてリズムチェンジしてのアラビアンなチャカポコドラム…ぼくはそっちに疎いので楽器や演奏法を知らないのだが、を軸にした暗黒アラジンなドラマティック展開を迎えていく。
その圧巻さたるや。
しかも彼等の場合、それにのみに終始しない。
例えば、そこから続く、M4”Inward。
ここではやはり中東的メロによって目鮮やかに、ポップ、とすら言いたくなるほどの明度ある情景を広げていくのだが、そこからなんと。
インドとデスメタルとジャズの暗黒混沌へと迷い込み、やがてはサックスプレイをも取り込んだ予想斜め上の劇性を展開していく。
その新味と切れ味とを併せ持った個性の豊かさといい、それらを高度に具現化してみせる手練の程といい、思わず言葉を飲んでしまった。
更には、M1″Snake Charmer“の妖しく踊る熱気を帯びた奇妙な叙情性から、ぐうーっと広がり迫る(しかし暴力性すら秘めた)異国情緒。
そして、イスラエルかの地でPAIN OF SALVATIONをお祭り気分で独自解釈したらこうなりました、みたいなM8”Ya Shema Evynecha”に、手違いでブラックメタルのドギついダークエキスが流れこんだかのM9”For The Leader,With Strings Music”…。
その手技のスリリングさに、目眩く展開に、目が、いや、耳が、離せない。
プログレ音痴の、元プログレ嫌いのぼくですら、自ずとそうなってしまう。
というかそうした「あの手」のいかめしげな高尚上からマウント「おプログレ」触感が全くなく、むしろロック然とした熱度がやたらにも高いので、ついつい響いてしまう。
それもまた、彼らの音楽的魅力の下支えにほかならない。
にしても、面白い。
実にユニークな存在感だ。
その出自からどうしてもORPHANED LANDが引き合いに出されるのだろうが、なんというのか、血が近いだけで、じゃあその系統なのかと問われると少しばかり違いそうだ。
こちらはもう少し、メタルとは元来少しばかり距離を維持しながら様々なエッセンスを混入、というか容赦なく咀嚼して肉にしてきたようにも思えてくる。
民族音楽。
ハードロック。
プログレメタル。
デスメタル/ブラックメタル。
エクスペリメンタル。
サイケデリック。
ラテン音楽。
ゴスペル。
それらを現代欧米ロックの文脈とは違う環境下や世界観で飲み込んで、作られた独自のバンドサウンド。
それを便宜上、「プログレ」と呼んでみたに過ぎない。
そうとすら思えてくる。
かくも変幻自在ながらも、情熱とぬくもりに満ちた、エスニックプログレ。
いや、そう言っていいのかどうかもよく知らないのだが、とにかくちょっと刺激的で、個性的な存在ではある。
今後、ぼくも少しばかり彼等には注目していくとしよう。
★追記(2021年08月07日)
「今週のチェック」から引用。
イスラエル出身。
ご当地中東テイストをふんだんに散りばめた暗黒メタリック・エスノプログレ・バンド、実は結成24年のベテランによる多分5枚目のフルレンス。
このサイケデリカを際立たす異国情緒ならではな独特のエスニックスパイスもさることながら、生々しいロックの熱気が、いい。そんな現代欧米ロックの文脈とは違う環境下や世界観で作られた独自のバンドサウンドが、なんというか、後進国の熱気でもってゴリっと力強くラフに押し出されているのが、ぼくは好きだ。
そう思って、これを聴いてから少しばかりバックカタログを掘り漁っているんだけど、これが楽しい。実に味わいが、ある。(↓とかね)
なのでこのアルバムで興味を抱いた方には、是非ともオススメしたい。
なんて、ニワカの分際でしたり顔をするのも、まったくもって申し訳ないんだが。ちなみにORPHANED LANDのメンバーも流動的に…なのか一時的なのかよくわからないんだけど加わっていたりもするらしいです。
-
- アーティスト名:SUBTERRANEAN MASQUERADE
- 出身:イスラエル
- 作品名:「Mountain Fever」
- リリース:2021年
- ジャンル:PROGRESSIVE ROCK、PROGRESSIVE METAL他