今週のチェック/THE WINERY DOGS, DRYAD, ISSA, ETHYL ETHER-The Weekly Reviews

THE WINERY DOGS, DRYAD, ISSA, ETHYL ETHER-The Weekly Reviews 今週のチェック
THE WINERY DOGS, DRYAD, ISSA, ETHYL ETHER-The Weekly Reviews
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THE WINERY DOGS/”III”:80P

THE WINERY DOGS/"III"

THE WINERY DOGS/”III”

今週の少子高齢化問題誌囲い込み枠、リッチー・コッツェン(Gt/Vo)、ビリー・シーン(Ba)、マイク・ポートノイ(Dr)らによるバカテク完全老犬保護プロジェクト、およそ8年ぶりとなるタイトル通りの新作3thフル。

新作というかもう音楽性自体が旧作っていう、何せメンツが90年代MR.BIGであとドラム適当に頼むわという、やることに目新しさもクソもなしな顔ぶれ。
当然の結果それ以上でも以下でも全くないんだけど、でも世界中の聴き手の誰一人たりともここにそれ以外を微塵すら求めてないので、需要と供給が双方で取れてるため全く問題が起こってない相互ダッドメタル。

一応音楽性を説明しとくと70年代ブルーズド・ハードロックの80年代HR/HM解釈からのその焼き直し令和版で、いやだからそれMR.コッツェンBIG、以上。

ただしこの三人ならではの、かなりジャムっぽい生々しい作りで、その熱気を帯びた極上プレイが耳を引くのと、しかしあくまで主体は渋ウマシンガーによる歌モノって、やっぱりMR.BIGか。

何せ、実際それやってた超一級の現役達人おっさんだけが集まってそれやってたおっさんなことをやるのだからどうあっても外れようもなく、何やらせても一流で当たり前、だけじゃなくてツボを押さえた曲展開と構成もいわずもがなで、刺激や新味は皆無だけどそれケチつけるのも恥ずかしくなるくらいの一級品。

ぶっちゃけおっさんの身として冷静に聞けば、普通に今回の新譜中で一番ダントツにちゃんとしてるというか明らかに役者が違ってて(そりゃそうだろ)最早流石だと思うしかないので、あとはそれが面白いと思えるか否かくらいしか評価軸が存在していない。

よってネオクラものとは違った類の弾き倒しプレイがそれもまた元来のハードロックの醍醐味だし(元々コッツェンはそういう異色シュレッダーが出自だ)、その上でそこにリズムとギターにソウルフレイヴァーなR&Bの黒みを塗り含ませるのがいかにも彼らならでは。

例えばM1“Xanadu”でいきなりアッパーに黒ずむジャズファンクっぷりにはポートノイさんも匙どころかバチ叩き投げつけ、やっぱり拾い直してはブルージーな大人のメロウネスへと転じるM2“Mad World”へと自然に紡ぐ冒頭の流れ。

或いはビリー・シーンのベースグルーヴがクールにちょっと前なら覚えちゃいるが昭和のことだとちと判らねェ港の横浜M5“Stars”
かと思えばダディとブラザーとリトルボーイがシャイボーイシャイボーイの化身となりて駆け巡るM8“Gaslight”などなど、こう見てみると聴きどころも割と多くて、少なくともリッチー・コッツェンの似たような企画モノSMITH/KOTZENよりは遥かによく出来ている。
(そりゃ色味は多少若干違うけど、でもハタからすりゃそんな大きく変わらないって)

さらにM9“Lorelei”なんて、こういうコクみ染みたドシンプルな酔いどれブルーズやらせて歌わせたら、そりゃあ百戦錬磨のおっさんどもに誰も勝てる気がしなくなるというもの。
ファルセットを織り交ぜるイケオヤジ、コッツェンのハスキーな歌声も相変わらずに絶品だ。

DRYAD/”The Abyssal Plain”:75p

DRYAD/"The Abyssal Plain"

DRYAD/”The Abyssal Plain”

死を運ぶかの不吉さと陰鬱さ、それは寒々しくも、しかし美しい。
そんなアコースティックなイントロに導かれたと思いきや、続くM2“Bottomfeeder”でいきなりつんざくようなトレモロリフと爆裂Dビートのブラック暴風雨にみまわれ、そして同時にスタジオの壁向こうで人のかたちをした犬たちがキャンキャンやかましく鳴き始める。

そのように、ヴォーカルを犬のように使ってみせるという冒とく的なシンフォブラックTDN犬メタルに笑っていると、M5のロキのお城でクラストパンクとブラックリフにのせて犬たちが今度は「アタッ!アタッ!アタッ!」とエクストリーム北斗神拳。
かと思えばM6“Pompeii Worm”では、ポンペイ島のミミズがデスメタリックに踊りだして、人間犬も大はしゃぎだワン。

その素敵なアイディアのおかげで、額に「インディーロック」と入れ墨を入れている人たち以外は認められない、ただのメタルには興味ありませんで知られる意識ピッチ系フォークメタルにも本デビュー作が取り上げられる誉れを受けた、米アイオワ州の最近ちょっとばかり名を高めている地下ブラッケンド・クラストバンド。

金切り犬と低く獰猛に轟く野獣先輩ヴォイスの高低両端に振り切ったツートンヴォーカルと、不気味なシンセオルガンを各所にまぶしたシンフォブラックを、パワーバイオレンス並みの荒い勢いで走らせつつ、アンダーグラウンド・テイストをあえて生かしたその閉所恐怖症サウンドのローファイさが逆にワンチャン醸そうとしてる(犬だけに)エクスペリメンタルなアート雰囲気。

そんな世界観と音楽性ながら、しかしちゃんと聴くと結構キャッチーなリフ重ねや気の効いたソロを工夫して選び使いながら、テンポよくザクザクワンワン叫び切り進んでいってるこの真夏の淫夢な本作のテーマは、ええっ深海!?

ああ、このリバーブかけた犬やくぐもった濃霧サウンドはこれ、水中だからってコンセプトだからですか、成る程。(全く納得できない)
なんだ、もうよくわかんないけど、んじゃそれでいいよ深海ブラックで。

追記(2023/02/12):
このバンドに女性メンバーがいるのはアー写で知ってたんだが、どうせ鍵盤のシンフォニック担当だろと勝手に思いこんでいまして。
で、さっきこのPV(↓)見た。

まさかの犬担当だったよ!

ISSA/”Lights of Japan”:73p

LISSA/"Lights of Japan"

ISSA/”Lights of Japan”

ノルウェーの歌姫らしいイッサ・オヴァースヴェーンさんの、これでスタジオ・アルバム7thも数えるのだとか。

ちょっとひとっぱしり夜明けにランナウェイしてくるかのオープナーM1”Live Again”に続いて、「ヨドバシはメタル」と言わんジャケも伝えるM2のタイトルトラック”Lights of Japan”では、ヒロミゴーの生きとし生ける生霊でも受肉したようなジャパーンが2億4千万回くらいエキゾチックに炸裂する。

まるでカタで押したようなフロンティアなばかりのサウンドに、若干ながらも失笑しかけるのだけど、しかし。
おめーそこはもうそういうとこだから空気読んで察しろよといういかにもわれらがジャパーンらしい2億4千万メロの瞳の圧が怖いどころかこのご時世、レーベルという名のスシマシーンが規格通りにカタ押しした大量のシャリに切りおきのネタ置いて皿にのっけたやつを固定された音楽メディアレーンの上でぐるぐると回しては、高年齢層の固定席が品定めして消費を繰り返すという格安スシチェーンビジネスみたいなそれをいたずらにぺろぺろナメやがってけしからんと破滅まで追い詰められるかのDangerous AttractionなSNS社会みたいなので恐る恐るちゃんと向かいますね。

北欧の歌の上手い美人さんを雇っての歌モノ・シンセメロディックロック、という試みはそこそこに成功。
サクサクとテンポよく、しかも抑揚よく綺羅びやかながら過剰に刺激も抑えめと、更年期障害に悩みがちな高齢者たちの心もうるわしてくれるかのハツラツ・ポップサウンドが広がっている。

だけどその反面、手応えも広く薄く低めといった感じで、透明感もあって確かに心地よくはあれどリスナー層方々の毛根同様にスルスルと抜け落ちていくかの印象。
で結局アルバムが終わればさして強いフックも引っかからず、精々そういや2億4千万回くらいジャパーンしてたっけな、くらいが残るだけ。

確かに単に美貌だけじゃなくハイトーンの伸びもいい力量ある良シンガーであることも伝わるし、とりまきもそれを引き立てるに十分足る実力派を固めてるのもわかるのだけど、でもこういうのってイチに楽曲本来の脱糞力ありきであって、これってそこ少しばかり頼りなくねっすか?

例えばM4“Stop the Rain”からサックスが心澄まされるM4“Moon of Love”の流れとか、かなりイイ線届きそうなのにもう一歩で至っていないのが勿体なくてもどかしいばかり。
(M5“Chains”も然りだなあ…)

…とか外野がしたり顔でヘンに詰めると、「おめーはいいから黙って反社メタルだけ聞いてろ」と2億4千万メロ言われそうなのでいい加減ここらへんにしときますごめんなさいAUTOPSYでも出しておきますねお大事に。

ETHYL ETHER/”Violent Entertainment”:62p

ETHYL ETHER/"Violent Entertainment"

ETHYL ETHER/”Violent Entertainment”

2020年リリースの前アルバムがAMA(南アフリカ音楽賞)にノミネートさえたおかげで某大手メタルサイトで激推しされて注目が注がれ始めた、南アフリカ共和国はケープタウンのサイケオルタナ・バンドの新作、これで多分4th。
なおバンド名は、エチル・エーテル。(多分)

「SNSに支配されて思考停止してしまった我々先進国の現代社会への、アフリカからのアンチテーゼ」といった、いかにもどこぞのポエム専門誌の舌なめずりが聞こえてきそうな作り手の意図がどんくらいあんのかよくわかんないけど、でも大手海外評がそう言ってんならそうなんだろお前らの中ではな、と軽々しく乗っかってみる。

…はいいのだけど、でもそういうわりにそのグローバリズムの原点だった90年代先進国てゆーかつまりはアメリカイギリスのロック、要するにあの頃のグランジオルタナUKロックサウンドをめっちゃ無邪気に楽しげに思考停止で鳴らしてるんですけどいいのそれでっていう。

オープナーのM1“Dead Conversation”からしてストーナーグルーヴとややサイケデリックな誘引性を含みつつ、しかしそこに気だるくもナイフのように尖った90年代グランジのギザギザハートなダウナーさが見て取れる。

かと思えばその後はTHE CUREJOY DIVISIONの漆黒をマリマン経由で食いつまんでみたり、インディーロックのお花畑でまどろみおシュ芸ほわぽにごっこしたり、OASISをサイケに包み直してみたり、ちょっぴりロマンチックにスマパンしてみたと思えば気まぐれでレゲエ入れてみたり…。

とどのつまりがロック後進国バンドが後追いで90年代ロックを純朴にベタネタあれこれつまんでみたフェイク品集といった感じで、しかもタルい中盤曲がこぞって聴くもしょうもないので早送りしたくなるしで、ひずんだ音出してそうなとこが絶賛するほどここに何かあまり先鋭な魅力をぼくには感じれなかったんだが、しかし魂がポエムを刈り取るかたちをしている方々だときっと何か読み込めるものも違うのだろう。

個人的には末期RAGE AGAINST THE MACHINEトレント・レズナーと無邪気にレネゲイドにファンクしているM8“Exhibitions”の躍動ベクトルのほうがずっと好きなんだけど、まつってもそれとて模造品感しかないすね。

うーん。
今週は地味というか、実は色々と聴いてたんだけど最終的なチョイスが「レビューしといて何だけど、他の選べばよかったかも」感しかないな…。

ま、まだ2月上旬だし、そういう週もあるさ。
ていうかそんなことよりインフレだ!

ではまた来週。

THE WINERY DOGS, DRYAD, ISSA, ETHYL ETHER-The Weekly Reviews

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一応しとく注意
・レーティングはあくまで書いてる人の個人的な気分と機嫌のみに基づいたものです。
・ネタが古い、おっさん臭い、と言われても古いおっさんが書いているので、仕様です。
・ふざけたこと書きやがってと言われても、ふざけて書いているのでお許しください。
・ネット上のものがすべて本当だと捉えがちなおじいちゃんや、ネット上のものにはケチつけても許されると思いがちな思春期のおこさまのご意見は全てスルーします。
・要するに、寛大な大人のご対応をよろしくお願いします。な?
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