【今週のチェック】SKID ROW, PROTECTOR, ALTER BRIDGE, THOTCRIME,

「平日休みと18万円を生贄に、新型iPhone14を召喚。
さらに翌日定時上がりからのビッグカメラで、カバーと液晶フィルムを装着して、守備力倍増でターンエンド。」
「甘いな、双方iOS更新。おまえの今日の祝日午前中を破壊させてもらうぞ。」
「仕方ない。ならば祝日休みの残り午後を捧げて、データ移転！」
「残念だったな、滅びのLINEトラップ発動。これでお前のLINEデータは全て粉砕される！」←ココまで来て一日終わった

そんな文化の日に、今週の文化的な新作４枚。

SKID ROW/「The Gang’s All Here」:72p

SKID ROW/「The Gang’s All Here」

90年代末にセバスチャン・バック(Vo)が不仲を理由に離脱した後、転々とシンガーを変えては都度ぽつりぽつりの活動を見せてきたSKID ROW。
いっときトニー・ハーネル（元TNT）やら元DRAGONFORCEのZPサートやらが加わるも、どうせすぐ出てくだろというおおかたの予想に正直に答えて、案の定ろくな仕事も残さずに即脱退。

しかしその後、元H.E.A.T.のエリック・グロンウォールというこれまた長続きする気が全くしない実力派シンガーが加入して、この令和に16年ぶりとなる新作をリリースしおった。

「え、16年前にアルバムなんて出したっけ？」
「え、1995年のサブポップヒューマンになりたいグランジ何とか以来じゃないの？」
「え、Slave To The Grind以降にこいつら何か出してたの？」
と、アイリメンバーユーじゃ全くなかった往年のリスナーの方々も少なくなさそうだが、でも大丈夫。
単にそれらのアルバムがいずれも脳が正常に機能してれば記憶しておく必要が全くないと処理されるくらいの出来だっただけなので、あなたはまだメタル・アルツハイマーじゃありません。

そんなわけで我が生涯に一片の期待なしで向かう新作だけど、これがそんなマイナス地点からの予想をはるか越えて大きく上回った出来でやんの。

つってもジャケからしてのちゃんと前向きじゃなさで所詮は昭和向けなのもご安心なんだが、でももうこの人達だってちょいとヘタすりゃ81 and Life、おじいちゃん鼻と耳にチェーンはさっき繋げたでしょなのでそれは仕様として、SKID ROWという朽ち看板に求められるようなサウンドをナチュラルに鳴らしていて、しかも出来も決して悪くないからちょっとだけ驚いた。

加えて若々しいシンガーがはつらつと、令和らしくムリにオラつきイキがらず、勿論鼻と耳をチェーンで繋いでみせるモンキーのビジネスに手もつけず、そつのないまっとうな仕事をこなしている。

しかも元々演奏サイドのソングライティング力と器用さが屋台骨を下支えていたバンドだけに、キャッチーなメロディと、鼻と耳をチェーンで繋ぐようなワイルドなロックンロール、加えて一匙の新しいポップさを「らしさ」のもとでうまくバランシングされており、アルバム一枚をスムーズなまでの違和感のなさで聴かせる技量は流石のもの。

とはいえ別段そこまで、やれ傑作だSKIDが帰ってきたとはしゃぐ程でもないし、それにヴォーカルもどうせすぐに出てゲフンゲフンという、小粒程度の良作か。
なので、いやマジでスルーしても大丈夫。どうせ5年後には、みんな「え、Slave To The Grind以降にこいつら何か出してたの？」って忘れてっから。

PROTECTOR/「Excessive Outburst of Depravity」:79p

PROTECTOR/「Excessive Outburst of Depravity」

１年くらい前にPARADOXが「ヘラシー2」出してて笑ったが、こいつらもか。

SODOM、DESTRUCTION、KREATORの「ジャーマン三羽烏」といったらあまりに知られた存在（あまり知られてない）だが、「ジャーマン3Pスラッシュ」と言ったらPARADOX、PROTECTOR、PYRACANDAであることもまたよく知られた存在（知られてない）だ。

しかもその一角たるPROTECTORといえば、ドイツ勢屈指の武闘派な孤高と知られており（知られてない）、なかでも最後、孤高過ぎて終いにオリメンすら一人もいなくなり、どう考えてもいいものが出来るはずがない陣営でハドラーすらどうなっているかわからないレベルのクソ駄作をヒり出して消えていったことは世に広く知られた事実（知られてない）であろう。

しかしそれがテン年代にその活動を、人知れず（やっぱり知られてない）再開したようで、どうやら本作前にも、これまでも復活後にアルバムを数枚出してたようなのだが、当然ながらやっぱり全く知られてない。（言っちゃった）

よってメンツも定かならないのだけど、少なくともここでは何の手違いかおっさんどもやたらと張り切っており、スピードとキレのあるオールドスクールいやそりゃ古いんだけどなハードコアまぶし良質スラッシュメタルで、高齢者ヘッドバンギングなあやうい作りになっていてちょっとほっこりした。

センスの高いジャケからもそのチャーミングさが伝わる通りだが、シンプルな一つ覚え突貫ビートに、いちいち刺々しく疾駆するギター。
そしてそこに邪気はらんだヴォーカルも往年のKREATORやSODOMを思わせる汚らしさを禍々しくコケオドしくブチまけており、これぞあの時代の中学生ジャーマンスラッシュという何ともハートウォーミングな、いいぞもっとやれ。

よくよく冷静に聴くと勢いばっかで大して中身がないとこもちゃんとPROTECTORしていて、これまたプラス5点の好印象アルバム。

ALTER BRIDGE/「Pains & Kings」:70p

ALTER BRIDGE/「Pains & Kings」

コンスタントにテン年代以降のオルタナ・メタルの良心をアルバムに落とし込んできてるALTER BRIDGEの現時点最新更新。

エモーショナルな歌モノ路線は彼ららしくいつもながら、しかし冒頭からこれが戦争だ（“This is War”↓）とかなり明度低めのシリアスな構えで、ここんとこにぐっとマシマシしての暗め重めイカつめ何度目なダークトーン使いで迫ってくる。

ほう今回のテイストはそうきたか、と頷きながらも、しかし始まってしまえば基本基軸自体は当然変わらずで、カラバリだって実は割といつも通り、やっぱり良くも悪くもブレもない、まっとうにまっとうなことしかしてない大人のメタル。
反面、優等生で面白みが云々と憎まれ口が喉まで出そうになるけれど、こんだけ充実度の高いいいものを定期便でちゃんと律儀に書き揃えてくるのって、実際問題大したもんだ。

今更ながらだが、M2“Dead Among the Living”、あるいはダムヤンキースみたいな抜けをみせるM4“Stay”のようなヘヴィグルーヴに明朗でおおらかな大陸感を込めたアメリカンハードロック・チューンに向かわされるたび、そこに色気含んで艷やかに歌い上げるマイルズ・ケネディのシンガーとしての卓越ぶりをアルバム毎度に知らされる。

ただしドヤ長尺のわりに凡庸なM7はじめ、後半クドさが増して飽きが出てくるが。（平常運転）

THOTCRIME/「D1G1T4L_DR1FT」:68p

THOTCRIME/「D1G1T4L_DR1FT」

おっさんしかいない後ろ向きの新作ばっかで怒られそうなので、んじゃここでSTRYPERの新作を。

嘘。
４人組の米欧多国籍サイバー・グラインダーズ、これが2ndらしい。

タイトルが「D1G1T4L_DR1FT」とちょっと何言ってるかわかんなくて、連載再開早々円4m侍にデコ貫かれかねないオシャレセンスで、ニンテンドーコアとグラインドコア、カオティックハードコア/マスロックとハイパーポップを手当たり次第にかき混ぜてから原色の人工着色料をべちゃべちゃぶちこんでこしらえたような、さながらこのジャケのようなネオンカラーとブラックライトだけのギドギド感覚な高校一年生レベルのサウンド世界を展開してる。

現代EDMかと思ったらただのATARI TEENAGE RIOTの悪意とLOCUST毒バッタの体液だったやつ注入させてスクリーモしたiwrestledabearonceというか、でもあそこほどに統率的なクレバーさがなく、とりあえずやってみたの勢い先行であちこち衝突事故おこしとる作りながら、逆にそこに突破口を見る思いも。

とはいえ、イキり顔であちこち手を出すだけ出しといて、炎上したらどうせ着慣れないネクタイスーツに死んだ魚みたいな目で下向いて謝罪でもすれば許されんだろYoutuberみたいな適当さにかなりチョロまかされてる気しか今んとこないけれど、でももうしばらくは目をつけておきたいと思わせるだけのギラっとした存在感だけは悪くない。

以上、今週の４枚でした。
今週は、んーーーー。
別に加えることもないかな。

ではまた来週。

SKID ROW, PROTECTOR, ALTER BRIDGE, THOTCRIME,