14年後の色達~BETWEEN THE BURIED AND ME/「ColorsⅡ」:80p

アルバムレビュー
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BETWEEN THE BURIED AND ME/「ColorsⅡ」:80p

言うまでもないことだが、続編、というのは鬼門だ。

その知名度や傑出度があればあるだけ、ある程度の注目と集客の見込みを得られようが、しかしその反面、自らをメタクソ高く規定してしまうハードルとともに、限定されたイメージや世界観の方向性の維持、一方で焼き直しに終始しない新味、などなど雁字がらめな鎖のなかでの戦いを強いられる。
それが、続編の宿命だ。
結果、クソみたいに堕した映画の「~2」作品を見てうなだれた経験は、誰にだって数限りなくあることだろう。

そんな「続編」の難しさは、ロックだって同じ話だ。

それなりに成熟を勧めていったバンドが、ふと往年の傑作アルバムの続編を作る、という。
これに一抹の不安と警戒心すら抱かない、期待しかないというリスナーは、よっぽどおめでたく出来た純朴だ。

「次のアルバムは、あの傑作の続編なんだ。」
そんなバンドのセリフの大概は、「冗談じゃない、こんなところにいられるか!俺は部屋に戻るぞ!」と殺人事件の起こった山荘で言ってみせるのと同じくらいリスキーなものでしかない。

BETWEEN THE BURIED AND MEが、かつての「Colors」の続編を製作するのだという。
マジか。
それ、来ちまったか。
ピリっと、不安が脳裏をよぎる。

とはいえ、彼らくらいの力量があるなら。あの「Colors」ならば。
そう思いつつもどこかに不安と警戒心が残る。続編とは、得てしてそういう存在だ。

思えばメタルコア全盛期のゼロ年代初頭に、セルフタイトルド・アルバムでデビューしたときは余りに荒削り過ぎて正体が今ひとつつかめなかったものだが、しかし。
3rd「Alaska」が出る頃にはすっかり現していた頭角を、続く4th「Color」で、洗練とともに見事に開花。
それが彼らの出世街道であった。
14年も昔の話である。

そんな「Color」の続編をここに来て作るというのだが、でも彼らの場合、ここに幾つかの勝因ファクターが起因している。

1つ目。彼らはすでに「続編」を作りながらここに至っている、という経緯だ。
例えば、シングルに続いてそれをフルレンスにまで押し広げてみせた、「The Parallax II: Future Sequence」。
そして前作、二部構成アルバムの後編、「AutomataⅡ」。
これらの制作活動を経て、そこで再び「Color」に戻る、というのは道程としてもそう不自然なものではない。

2つ目は、「Colors」というのは、些か特殊な作品だった、ということ。
というのも、アルバム一枚を通して、シームレスに楽曲が切れ目なく繋がっているのである。

いや、「楽曲」という意識がそこに全くなかったわけではないのだけど、しかし個々がつなぎ目なくジョイントされているそこには、楽曲単位での区切りというのが極めて希薄であった。
結果、全編を通して目まぐるしい展開をひたすらに繰り返してみせたその作風は、さながら大きなキャンバスに一つのテーマを描くというよりは、寄せ集めた一塊をアートにした、といったもの。
だからその名の通り、様々な「色」達をはぎ合わせて作った、ちぐはぐなクレイジーパターンのパッチワーク的な作風を、そのアートスタイルこそを今続編として継ぐのだ、というのであればそれはそれでアリかもしれない。

さて。かくしてこのたびリリースされた続編、「ColorsⅡ」。
14年前の「色」達は、一体どのようにここで変色しているのだろうか。

まずは大方の予想の通り、作風は同様だ。
各々の楽曲を接続させながら、そこに多展開の小ドラマを散りばめ盛り込んでいく、といった作りになっている。

それについては嘗ての「Colors」と同じなのだが、しかし成程、そこにおいてもバンドの成長と経験がここに生かされており、大軸の流れが「Colors」以上にクリアなものとなっているのが印象的だ。

イントロからブルータルに畳み掛ける、デスメタ展開。
そして目まぐるしく音像をカラフルに変えながら繰り広げられる、縦横無尽、変幻自在のパートまたパートをすり抜けるジェットコースター…。
それらがしかし、よりスムーズに繋がり連なりながら、一つの波となって様々に塗られた色彩(Colors)を飲み込みながら、うねりとしてのドラマチクスにすら向かっている。

「混沌にとっ散らかっているけど、だからこそ何が飛び出すか、どっちに向かうか判らないという、破綻ギリ手前のフリーキーさが魅力なのだ」。
そんな「Colors」から、いやそれらも相変わらず引き継いではいながらも、しかしそれでいて、より全体としてのドラマ性がまとまりあるものになっている。
だからここでは破綻美などというものではなく、より構築性のある作り込まれた作風を見せているのが特徴だ。
これは間違いなく前作までの創作活動とスキルアップを経て得てきたものだろう。
そのぶんだけ、14年のぶんだけ、バンドの成長がそこに伺えよう。

なかでも象徴的なのが、妖しくメランコリックな南国叙情から一気にマニックに雪崩込む、M4″Fix The Error“(↓)の存在だ。
アッパーにチャキチャキと賑やかしく小回り利かして疾駆しながら、でいて彼ららしいユーモアと狂気を、色とりどりのメロと、ある種のポップネスに巻き込んで突き進んでいく。
この大波の中にありながらもある種の楽曲として異質な存在感を放っている、本作中盤の盛り上がりどころだ。
こういうフックを意図的に仕掛けられるようになったのも、今の彼らならではであるだろう。

「続編」という、鬼門。
それを難なく越えながら、これを意義あるものと作り上げてみせたのは、14年という彼らが得てきた経験値に他ならない。

これがオリジナルの「Colors」を越えているか否かは、様々意見があっていい。
しかしながら、いずれにしても共通して言えること、認めるべきこと。
それは、14年前にはなかった、いや出せなかったバンドの「色」(Colors)をここに改めて塗り重ねられたことだろう。

すなわち、成長と、成熟。
14年前に塗られた色達の上に、新たなそのカラーが鮮明に今、塗り加えられている。
そしてそれこそが「続編」としてここに加わった、14年後の「色」達なのだ。

DATE
  • アーティスト名:BETWEEN THE BURIED AND ME
  • 出身:US
  • 作品名:「ColorsⅡ」
  • リリース:2021年
  • ジャンル:METALCORE、DEATH METAL、PROGRESSIVE METAL他
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