「月刊どりむし」創刊2号~DREAM THEATER/Lost Not Forgotten Archives : A Dramatic Tour Of Events-Select Board Mixes:73p
毎月リリース決定、DREAM THEATER公式ブートレグ・シリーズ第2弾。
つまりは先月の「月刊どりむし」創刊特別号に続いて、今月号である第二号がリリースされた。
計13曲のセットリストで、がっつり2時間超え。
かなり相応のボリュームだ。
とはいえ先月の創刊号、あれは流石にゴージャスかつスペシャルな秘蔵品過ぎた。
なにせ「Image Amd Words」の再現ライブ来日音源、Live At Budokanドーン!だ。
その特別版なだけに、続く本号の見劣り感がハンパないが、これはもう相手が悪い。そこらへんは比べるのがむしろ可哀想だ、ということにしてあげよう。
そんなわけで今回の2作目は、2011年から翌年2012年にかけての、アルバム「A Dramatic Turn Of Events」にまつわるワールドツアーからのライブ音源をまとめたものであるという。
そう、丁度マイク・ポートノイ(Ds)が脱退し、後任としてマイク・マンジーニが加わったタイミングのものだ。
以下、レーベルから出ている基礎情報を引用しておく。
ドリーム・シアターの公式ブートレグ・シリーズ第2弾は2011~12年ツアーのライヴ音源を収めた『Lost Not Forgotten Archives: A Dramatic Tour of Events – Select Board Mixes』
プログレッシヴ・メタルの頂点に君臨し続けるドリーム・シアターが、ライヴ、デモ、スタジオ・アウトテイクなどの秘蔵音源を公式ブートレグとしてリリースする“Lost Not Forgotten Archives”(=忘るまじ喪失音源集)シリーズ。6月発売の第1弾作品『イメージズ・アンド・ワーズ~ライヴ・イン・ジャパン2017』に続く第2弾は、『ア・ドラマティック・ツアー・オブ・イヴェンツ~セレクト・ボード・ミックス』。
本作は、2011年発売の11thアルバム『ア・ドラマティック・ターン・オブ・イヴェンツ』を引っ提げた2011/2012年ツアーよりセレクトされたライヴ音源(2CD/約120分)。
アルバム発売の前年にリーダー的存在だったマイク・ポートノイ(Dr)が衝撃の脱退、“世界最速ドラマー”の異名を持つマイク・マンジーニ加入後初のツアーでもある。
この作品は2013年のXmasにファンクラブ限定でダウンロード配信されたことはあるが、フィジカル(CD/LP)とストリーミング配信は今回が初めてとなる。
また同年発売された当ツアーのライヴ映像作品との被り曲はなく、ラストの「As I Am」はジャパン・ツアー2012の追加公演<4/24 SHIBUYA-AX>のアンコール音源を収録している。
とまあこのように、アルバムは各会場での音源をツギハギにしており、前回に比べれば統一感は薄い。
とはいえ、そこはベストテイクを集めているのに加えて、未発のものばかり。
ファンならずとも興味を抱かされよう。
さて内容のほうだが、まずは、いきなりのM1“Under A Glass Moon”だ。
アルバムテイクをなぞりながらも、それより重いリフと、強い躍動感。
そして圧巻のドラマティクス。
特に中盤からの展開、鍵盤とギターとビートが渾然果敢に絡み合うさまは、お馴染みなれどやはり壮観だ。
そしてそこから始まる、怒涛のテクニカル・プログレ・メタル一大絵巻…。
と誰しも想像するところだろうが、しかし。
ドリムシの最大の利点でありながら、しかし実は意外と彼等のイメージから理解されていないこと。
それは、いい曲を書き続けてきたバンドはやはり強い、という単純明快で当然な、しかしだからこそ強力なれっきとした事実だ。
プログレッシブでテクニカルだから、凄いのではない。
プログレッシブな「いい曲」を書き続けてきたバンドだからこそ凄いのであって、だからこそこういうライブが如何様にも映えるのだ。
ここを意外にも、割と多くのリスナーが読み間違えている。
実際、セットリスト的にはどの作品からも比較的バランスよく楽曲を並べているのだが、しかしどちらかというと「このアルバムからこれやんの?」といったものも少ないわけではない。
しかし、そんな選曲でいながらも、それらのいずれもが魅惑のメロディとリフと歌をともない、鮮やかな彩りを与えている。
そのカラーリングが、凄い。
なかでも中盤、#7”The Great Debate”からの名曲#8”Another Day”、そして#9” Through My Words”への流れに、それは特に現れているだろう。
その他聞きどころも多いのだが、ライブのクライマックス、#11” The Count Of Tuscany”ではアコースティックにあわせてラブリエがエモーショナルに歌い上げる展開が待っているので、これもよく味わいたいところだ。
また我々日本のファンとしては、アンコール扱いのラスト2曲のうち、2012年の東京公演で演じられた#13”As I Am”が収録されているのにも注目か。
それと、もう一つ。
”To Live Forever”が演奏されているのにも、注目だ。
古いファンならご存知の方もいようが、これは「Awake」期に”Lie“のシングルにのみ収録された、アルバム未収録曲だ。
(後にベストアルバムに収録されることになったが)
時折このように彼等のライブ・セットリストに加えられてはいるが、知らない方も多かろう故、触れておく。
(つっても正直、それ程大した曲ではないんだが)
「A Dramatic Turn Of Events」ツアーからの音源で、そのアルバム収録曲入れてねーのかよ(いらないけど)とか、
しかも「Lost Not Forgotten Archives」ってタイトルしといて”Lost Not Forgotten“入れてねーのかよ(いらないけど)とか、
でもドラムソロは入れんのかよ(いらないけど)とか、
そういうツッコミも浮かぶところだけど、これほどの壮大なライブサウンドを出してくれたお礼を前にやめておくとしよう。(してるけど)
なお、評点は前第1弾を90pとしてのものとして換算しているので悪しからず。
★追記(2021年08月07日)
「今週のチェック」から引用。
今週の、言うてみれば裏オススメ。
やー、まだ二回目ですけど、すごくええっすね、この企画。
しかもDREAM THEATERしか出来ない上に、最近そういうドリならではの孤高さが陰ってきたところに、いい時期のいい企画だと思う。だってぶっちゃけこないだ新作リリースのニュース流れてたけど、前作が前作だっただけに、ふーん、って感じだったもんなあ。
だったら、ぼく的にはこっちのが全然楽しみだわ。とそんな二作目、「月刊どりむし」の創刊2号目だけど、まあ創刊号のスペシャルな目玉企画に比べるのも可哀想だから置くとしても、これはこれで十分に楽しめる。
というか、こういう楽しみ自体が本来のこの企画なんだな、と思わされる。本作を聴くと判るのだけれど、なんというか、全力のオフィシャル・ライブアルバム!っていうものとは違う、さらっと「こんなライブテイク集も実はあるんですけど…」みたいなポジショニング。
でもそれこそがブートレグな企画っぽくて、いい。そんな、「こういうものもあるのか」を味わう。
それがこの企画のおそらくは本質なんだろう。とはいえですよ、
そこはやっぱりドリムシだ。
聴き応えが違う。まず何と言っても、幕開けが”Under A Glass Moon“ってのが、たまらない。
そりゃあもう、嫌がおうにも、高められる。アゲられる。
あの神盤「Image And Word」で与えられていた「”Metropolice“を受け継いでクライマックスにつなげる橋」とは違う、オープナーの役目を演じているのだけれど、それを立派にこなしている。
(勿論それも、ライブテイクならではの荒々しい躍動感あってのものだ)
ここら辺の楽曲味変が、ライブアルバムの面白いところだ。尤もライブアルバムとして見ると、ここからの前半数曲が(曲はいんだけど)ちょいとダレるというかテンションが落ちるのだけど、しかし。
中盤のブレラン展開”The Great Dabate“で開かれる後半こそが、この作品の醍醐味だ。しかもそこから怒涛の”Another Day“を経て、メトポリ2からの感動的かつ息を飲むような”Though My Words“へ。
このエモーションの高まりたるや。
(この導入の中音域ラブリエがたまらん)
そして、必聴のクライマックスにして後期ドリのド名曲”The Count of Tuscany”…。ぐはあ。
参った。
降参だ。
なんやかんやで、ドリムシだ。そんなわけで2時間越えのフルボリュームなのでちょっと真っ向向かうのに構えと余裕が必要だけど、でも盆休みの時間の空いた夜の晩酌の肴にはうってつけだと思います。
是非に。
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- アーティスト名:DREAM THEATER
- 出身:US
- 作品名:「Lost Not Forgotten Archives : A Dramatic Tour Of Events-Select Board Mixes」
- リリース:2021年
- ジャンル:PROGRESSIVE METAL、他