ATREYUのくせに~ATREYU/「Baptize」:78p

アルバムレビュー
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ATREYU/「Baptize」(78p/100)

突き抜けない、と言う表現は彼等のためにあるかのようだ。

凡庸産業メタルコア道を歩み続けること、早二十年以上。
実は少々縁あってコイツラのことは、ド初期のVictory契約前からずうっと見てきているのだが、思えばその頃からずっとそうだった。
当初の、こりゃあかんわと項垂れる程ショボかった時代に比べれば、一応それなりに垢抜け皮剥けしてきたものの、それでもいつまで経っても一向に、突き抜けることがない。

いや、彼等とても本国アメリカでは相応に売れ続けている存在ではあるのだが、音楽作品はそれとは別で、やっぱり突き抜けないまま。
そんな安定の突き抜けなさを毎度毎度繰り返しているせいで、ここまで来るといい加減ある種芸の域というか、この連中はもうそういうものなのだと、何故か思えてきてしまう。
それが、突き抜けない系メタルコアバンド、ATREYUだ。

悪くはないのだけど、中途半端でパッとしない。
ミーハーなんだけど、振り切れない。
よって、そこそこいい線行くんだけど、でも絶対に、突き抜けない。
そんな突き抜けない芸を極めたアンブレイカーATREYUだが、あれれどうした、今回はちょっといつもよりも頑張っているではないか。

方向性はいつもながら、…まあ一応彼等なりに色々と新しくトライはしているんだろうが、それも所詮はATREYUという程度なのでスルーするとして。それはさておき、ここにおいては印象的なメロを配置し、フックのあるトラックをいつもより揃えてきている。
いい歳してゲザファッカな#4”Broken Again”の他、#6“Weed”や#11”Untouchable”も悪くないし、大人っぽい#14”Stay”なんてちょっと「おおっ!」と乗り出しかけた位だ。
ATREYUのくせに。

とはいえ、そこは言うてもATREYU
最終集計では結局やっぱり突き抜けないで終わるのが「らしい」ところであり、「流石」なところでもあり、そして今やそれもまた愛嬌と憎めないのが彼等なのだけど、しかし、とはいえ連中もここまで至れば十分過ぎる古参の存在。
当然実力も場数も経験も重ねてきている訳で、そのベテランとしてのこなれた力量や引き出しの多さが創作活動においてもしっかり活かされてきているのにはちょっと感心させられた。

突き抜けなくとも、継続は力なり。
それをまさか彼等に教わる日が来るとは、何とも感慨が深い。
ATREYUのくせに。

 

★追記(2021年06月19日)
「今週のチェック」から引用。

 

ATREYUのくせに」ってその「くせに」って、別に「ごときが」「風情が」みたいなガチな蔑みの意味じゃないっすよ。
愛情込みのやつですよ。
ちょっと可愛くてツンデレな、「ふ、ふん。ちょ、調子のらないでよね、ATREYUくんのくせにっ!」ってほうのやつですよ。
そこ、勘違いしないように。

それはそうと、突き抜けない系メタルコアのくせに、なんかいい感じなんだよなあこのアルバム。
レビューにあげた、ちんこの皮むけてる#14″Stay“だけじゃなく、いい曲をしっかり敷き詰めながら、しかも程よくバラエティを広げつつ、今様さも取り込んで、一級品のポップメタル作り込んできている。
加えてこの曲(↓)からも判るように、ギターラインも効果をしっかり考えられているし、ゴスってた頃にはヘボヘボだったデス声にも太みが養ってきた。
頑張って成熟と洗練を重ねながら、あともう少しの域にまで突き抜けようとしている。
ATREYUくんのくせに。

DATE
  • アーティスト名:ATREYU
  • 出身:US
  • 作品名:「Baptize」
  • リリース:2021年
  • METALCORE他
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