いつも心に「Tough It Out」を~FM / 「Old Habits Die Hard」 (2024) :86p

FM / "Old Habits Die Hard" (2024) アルバムレビュー
FM / "Old Habits Die Hard" (2024)
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FM / 「Old Habits Die Hard」 (2024) :86p

よもや、FMの最高傑作が「Tough It Out」(1989)(↓)であることに貴様、反論などあるまいな!?

 

「Tough It Out」(1989)

「Tough It Out」(1989)

…おっと失礼。
大人げなくも、突拍子なく叩きつけてしまった。

「えっ?よもや扱いされるような名盤だったっけ?」(※註釈2)
「えっ?普通にアフロ何とかだと思ってた」
「えっ?てかFMって誰?」

オーケー、オーケー。皆まで言うな。
そうだろう、そうかもしれん、それも一理あろう、それもまた然りだ。
大丈夫、多様性は重要だ。にも関わらず昭和どもはすぐ同調マウント繰り広げるからな!(↑一番上のそれ)

説明しよう、
…って話を始めるとクソ長くなるので掻い摘むが、このFMとは、1984年にアルバムデビューした、SAMSON(※註釈1)の元メンによる、まそこら辺は割とどうでもいいとして、要するに古来的な英国血統書付きハードロックバンドながらアメリカンAORな方向性を当初から見込んで活動を始めては、細々と活動を永らえてきたベテラン・ド地味ブリティッシュ・メロハーバンド、だ。(長い)

一般論的なRが2つもある燃え盛り系でのこいつらのメロハー脱糞代表作といえば、先にも触れた1992年の「Aphrodisiac」あたりが妥当なところかもしれん。
勿論、そりゃ良くねーかっちゃそんなこたぁ全くない名盤なんだけど、でもんじゃそれが最高傑作かと問われたら、話は別だし異論もありなん。

何せ「Tough It Out」(1989)といえば、狙いすましきったかの(当時の)ド直球売れ筋ミーハーかましてよかですか路線。
つまり、下地は出自の正統ブリティッシュ血筋ながらも、時代性と市場性に全振りした(当時の)アーバンクール・アメリカンポップ仕立て。
で、「だが、それがいい」。

何といってもオープナーのタイトルトラック代表される、キラキラシンセAORにUKハードロックならではの抜けきれないしっとりさが滲む、そのセミドライな色合いよ。

しかも他にも甘口御用達“Someday”だとか、デズモンド・チャイルディッシュな“Bad Luck”、これ何てTREAT“Dream That Died”等、ポップ名曲目白押し。

なので結構な名盤だったはずなんだが、まああの時代に英実力派ハードロックバンドがアメリカで売れるのもそう簡単なことじゃないって事情もあってか、ぶっちゃけ、外した。外れた。外れだった。

結果、あの当時はやれ時流過ぎるだの地味過ぎるだの(知ってた)とそこまでの評判もセールスも得られぬまま(※註釈2)、バンドも性凝りてか時流も変わってか、兎に角その後これをやることなく封印しては、次第に土臭いブルージーロックへと移行。

そのまま作品を重ねては、それらとて何時しかユニオン中古CD棚常備群となって消えて…いかずにしぶとく細々と至っての、今ここだ。

と、そんなようやくの本作「Old Habits Die Hard」
なんでも結成40周年にして、これが12thとなるらしい。

では最初にこれを読み解くポイントを、箇条書きでまとめてみよう。

  • そんな純血英国ハードロックバンドが、その出自らしさを忘れることなく
  • 80s USポップロック路線だった名作「Tough It Out」をも視座に含め(ここ大事)
  • かつ渾然としたブルーズドハードロックへと歩んだ、その後の岐路をも踏まえながら
  • それらの経路をこの令和に踏まえてみせた、彼ららしい力作

そうなんだよ、
あのFMの新作が、全面展開じゃないとはいえ、あの「Tough It Out」もちゃんとやってんだよ。
あの適湿ナイトクルーズメロハーやってやがんだよ。

トップチューンM1“Old Habits Die Hard”から入る、アーバンビートとブルージーなギター。
そしてやっぱりソウルフルなヴォーカル、粋も甘いも嗅ぎ分けたかの落ち着きあるアダルティなグルーヴ。

“Tough It Out”やん!
“Tough It Out”FMやん。
おっさんならば剥げた頭を撫でながら(剥げてねーよ!)そう唸らずを得ない、粋なはからいの冒頭戦だ。

勿論、その後もちょいちょいと「Tough It Out」しつつも、これまでを踏まえたベテランらしい安定した押さえどころで、アルバムを展開。

例えば、しっとり濡れを残す加減がいいM3“No Easy Way Out”
明朗めに伸びやかなメロディックさが映えるM5“Whatever It Takes”
はたまた、土っぽさと哀愁が程よいM8“Leap Of Faith”あたりはその最たるものか。

なお後半戦では、個人的には英産ならではの仄暗い哀感を見せるM10“Another Day My World”が一番のお気に入り。
そうそう、こういうのしれっとこなせちまうあたりが、大英帝国復興の狼煙だ。(知らん)
(からのラストM11“Blue Sky Mind”の、抜けそうで抜けないポップさ加減も英メロハーっぽくてニンマリするしな!)

一方で、あれ以来90年代以降のメイン作風となった、イギリスバンドのくせにな大陸臭さも健在。
何せ、M9“Calfornia”なんて曲までやっていやがる始末ときた。
「キャールフォーニャ♪」じゃねーよ、レッチリかっつーの。大体お前らFM UKだったろうが。UKどこ行った。(←意

しかも、今更ながらもやはりそれをディープに受けるご年配ならではな実力派シンガー、スティーヴ・オーバーランドのその圧倒的存在感よ。
昔からポール・ロジャースFREEBAD COMPANY)を引き合いに出されてきた、そのくぐもりつつ艶やかな歌いっぷりたるや、なんと堂に入ったことだろう。

 

そりゃ、どうしたって確かに地味だ。
だって、あのFMなんだから、地味に決まってる。
40年前からの仕様がそもそもからしてそれなんだから、こりゃどうしようもない。

だから、一見さんには断じて勧めない。
少なくとも「あのFM」を知ってる身にしか、勧めない。
だけど、もし「あのFM」を知っているならば、そこにこそ強くこれを勧めたい。
ましてや、いつも心に「Tough It Out」。
そういう向きならばこそ、そしてその後も追っているならばこそ、だったらこれをと勧めたい。

曰く、イギリスの血脈と、アメリカの嗜好性。
それらの出自と歩みの行方を互いに織りなしては、40年もの年月を経て至った熟成がここにあらん。

さあ、諸々知っているという、大人の皆さん。
こんな英米混在熟練メロハーを、今夜あたりは如何だろうか。

 

※註釈1:ブルース・ディッキンソンIRON MAIDEN)がいたりしたことで知られる、ちょい軽め伝説レベルのNWOBHMバンド。正直、そんな言われる程に大し

※註釈2:思えばそれも、ネットなき時代の話。
今頃になってやたらあのアルバムの評判が高く、世には自分のようなリスナーが多かったという事実を知ることになる、この令和のご時世よ…。

 

FM / "Old Habits Die Hard" (2024)

FM / “Old Habits Die Hard” (2024)

DATE
    • アーティスト名:FM
    • 出身:UK
    • 作品名:「Old Habits Die Hard」
    • リリース:2024年
    • ジャンル:HARD ROCK, BRITISH HARD ROCK, MELODIOUS HARD ROCK, AOR 

 

一応しとく注意
・レーティングはあくまで書いてる人の個人的な気分と機嫌のみに基づいたものです。
・ネタが古い、おっさん臭い、と言われても古いおっさんが書いているので、仕様です。
・ふざけたこと書きやがってと言われても、ふざけて書いているのでお許しください。
・ネット上のものがすべて本当だと捉えがちなおじいちゃんや、ネット上のものにはケチつけても許されると思いがちな思春期のおこさまのご意見は全てスルーします。
・要するに、寛大な大人のご対応をよろしくお願いします。な?

 

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