秋空の下、そんじゃやっときますかね今週の4枚。
今週は(も)おっさん向けセレクト。
でもあれすね、もうね、STRATOVARIUSだけ聴いときゃいんじゃないかな!
STRATOVARIUS/「Survive」:92p
ストラトさん、ついに本気を出してしまうwwwwww
そんなSTRATOVARIUS快心の傑作が、ここに爆誕した。
なにせ北欧メロディック・パワー・メタルというこのバンドに皆が求めるとともに、何より本人ら自身が求め深め追ってきたことの結実を、こちらの予想を大きく超えたレベルでやらかしおった。
キャッチーなメロディと畳み掛ける疾走感によって押し寄せる、高揚感と興奮。
度とツボを押さえたネオクラプレイに満ちる、気品と威厳。
程よくドラマティックだが、剛性を損なわないメタリックなバランスと作品構成。
オープナーからそんな彼ららしいファストで良質なメタルチューンが続くのだが、なんといってもシンガロングが止まらないM10“Before The Fall”に沸き高まる、クライマックスの情動よ。
そのおかげでラスト曲が長尺のくせに大した出来でもないのも、これで完全帳消しに。
さらには光明切り開かんM8“Glory Days”のリリカルさに、シンセポップばりの哀愁が広がるM5“We Are Not Alone”…。
このように本作は楽曲のカラバリも揃えつつ、各々に濃度も濃くって、そして何より速い曲の出来が秀逸だからパンチ力も俄然高い。
いやはや、ここに来てSTRATOVARIUSというバンドの才能の突出さを楽曲毎に噛み締めさせられるとともに、北欧メロパワの圧倒的魅力を再認識させられるとは正直、全く想像せなんだ。
さーせん、完全にナメまくってました。投了、降参、完敗。
VENOM.IMC/「There’s Only Black」:73p
VENOMがクロノス(コンラッド・ラント)サイドとマンタス(ジェフリー・ダン)他サイドに分かれて互いに、俺が!俺達がVENOMだ!と刹那みたいなことを言いあって、分裂。
こっちはそのおマンタス、デモリッションおマンらによる分家組の2nd。
残りのアバドン(アンソニー・ブライ)は前作でのツアー初日を前にして「実は曲を全く覚えてない」「ていうか昔の曲も全部忘れた」と本当のことを言ったので、クビ確定。
代わりに元MASSACREのジェラミー・クリングというちゃんとしたドラマーが加わったので、逆にパワーアップしとる。
とにかく本作は序盤の駆け出し3曲が強烈で、このスタートダッシュだけでインパクトは十分。
クロノス側のおどろおどろしさよりもこっちゃ突貫力と獰猛性ありきとばかりに、ガツガツとバイオレントに突き進むクランチスタイルのベテラン・スラッシュが圧巻だ。
ところが威勢の裏腹で体力がもたずにヘタりが早いのが、おじいちゃんの基本仕様。
早くもその次あたりから「ん?」と首が傾げ始め、その後ぽつりぽつりと小さなアタリはあるも、息絶え絶えに尻つぼみしていき、あーやっぱりVENOMだったわとホッコリさせられる。
これだったらいっそトップ3曲だけでニューアルバム出来たと言えば良かったのに、だったらアバドンのブレインでもギリ覚えられたかもしれないのに、と思うやもしれぬが、ちょっと待ってそうじゃない。
後になってやれ元祖スラッシュメタル、ブラックメタルの始祖だのとレジェンダリーに讃えられてきたVENOMだけど、そもそも80年代にはもうこいつらすでにヴェノムカッコワライみたいな存在だったじゃん、そんなVENOM(笑)がこんだけ頑張ってんだからよくねーか、ていうかカッコワライのくせに逆に3曲もよく続いた、こいつら計算なら実質アルバム3枚分だ大したもんだ、寧ろ残りのほうの微妙さこそがVENOMってとこねーか、と思えてくるからさすがVENOM(笑)だ。
そんなわけで、上の評点はそのカッコワライ分が10pくらい含んでいるのであしからず。
WHITE SPIRIT/「Right or Wrong」:60p
あのヤニック・ガーズ(IRON MAIDEN)が嘗て在籍していたことで知られる(=知られない)NWOBHMバンドWHITE SPIRITが、何の因果かこの令和に40年以上ぶりの新作を出すという。
それだけで驚いたけど、やっぱりそれだけだった。
いきなり1曲目の泣きメロにNWOBHMならではの煮え切らない叙情スメルを醸していて、おっ、これはと身を乗り出すも、その曲を終えたSEでヒュー、ボッカァーン!とアルバムも同時に爆死。
なにせあのリッチー・ブラックモアやってみたなヘヴィメタル・サウンドが、40年経ったらしょぼいエイティーズ・メロハーになっており、がっくりしかけるのだが、考えたらハナから期待していたわけでもねーし、まいっかと腰を据え直してポチポチ早送りを繰り返してアルバムが終わった今ココ。
どうやら眠ってた当時の楽曲を掘り起こしてリメイクしたようなのだが、そもそもお蔵入りすんだからそういう程度のもので、こりゃ道理で眠るわけだと逆に納得するシステムを採用。
つまりは明らかにぼくらおっさんがあの時代を懐かしむための自己慰撫アイテムであって、初めて向かうなら40年以上前の1stを聴くほうが絶対にいいし、何気に今聴いてすらも様式美してて全然カッコイイ。(多分)
なお調べてみたらシンガーのブライアン・ハウは2020年にすでに亡くなっていて、そのタイトルトラック他一部代わりにジェフ・スコット・ソートがお仕事してる。
THE HU/「Rumble of Thunder」:64p
この夏のFUJI ROCK参戦&来日でなんか注目度が高まっていた、モンゴルのフォーク・メタル。
思わず興味本位で手を伸ばしたけど、そのままスっと手を戻した。
民族衣装で着飾りながら民族楽器を多用してはなんとなく想像できるモンゴルの世界観を表現していて、おっさんどもならアレだわ、ゴーリキー・パークとGWARを合わせたやつが現代にモンゴル版でやってるとこ想像すれば、そこそこに近いものが浮かぶんじゃないかな。
雄大に広がる大地に砂混じりの風が吹きすさぶ大陸感と、明るめの旅情感がもたらす独特のポップなトラッド・ムードは、北欧フォークメタルというよりはアイリッシュパンクに通じそうというか、正直モンゴルと言われてもキラーカーンとモンゴルマンくらいしか知識もないけれど、何となく「キングダム」の世界とかそこらへんを思わせるところがある。読んだことないけど。
それもあってか、思いの外にトップから数曲くらいはちょっとばかりの興味が持続するのだけど、しかし。
如何せん似たようなタルい曲が連なってるせいか、それ以降は“This is Mongol”と歌われても、ふーんそうだね、モンゴルだねふーん…と段々飽きてきて、そのうちに腰を据え直してポチポチ早送りを繰り返してアルバムが終わった今ココ。
母国語で歌っているからか、アルバム一周後には、何言ってっか全くわかんなくて体感時間クソ長い中国の歴史映画を、吹き替え字幕ナシでひたすら見せられた気分になれる。見たことないけど。
以上、今週の4枚でした。
え、スリッパ新作出てるって?
ではまた来週。