秋になって最初の週末。
もう気温これでいいだろ?
暑くなるなよ暑くなるなよ、絶対に暑くなるなよ!
そんな涼やかな秋の朝に、コオヒイひいてレコオド流して休日恒例ヴァイナルカフェ。
本日はQUIET RIOTを。
ってこれなのかよ。いや寧ろ今となったらこれだろやっぱ!
QUIET RIOT/「Quiet Riot」(1988)
80年代LAメタル草創期の筆頭といったら、QUIET RIOTだ。
かの天才ギタリスト、ランディ・ローズを世におくり出したのも、このバンドだった。
尤もそれはただランディが嘗て在籍していたというだけで、それどころかこいつらはランディの才能にも気付かずぼけーっと見過ごしていただけなんだが、とにかくそんなLAメタル勃興期の代表格は、間違いなく彼らだった。
その後ラインナップを整えての1984年、全米デビュー・アルバム「METAL HEALTH」がLAメタルシーンの先鞭をつけて全米1位を獲得したものの、それが早くもこのバンドの絶頂期。
続くアルバムもコンディションがクリティカルで奮わずじまい、その後もずるずると失速していくのだった。
そんな1986年には、みんな大好き愛されシンガー、毛ヴィン・ダブロウが解雇。
落ち目に転じたとはいえ、元全米トップバンド。しかも華やかなりしLAメタル全盛期に花形ヴォーカルをアルバム制作前にレーベルやバンドがクビにするということからも、どれだけ彼に人望が厚かったかが伝わってくるハートウォーム・エピソードだ。
中でも当時そのケヴィダブと大の仲良しで知られていた元メンバーのルディ・サーゾがこの件を知って、ざまあメシウマ大草原と腹を抱えて涙ながらに悲しんだというが、それはさておき。
そして、その後バンドが迎えたシンガーが、なんと元RAUGH CUTTのポール・ショーティノだった。
って、ポール・ショーティノって!
と世界中からのツッコミを受けながら、どこをどう考えても短命フラグしか見あたらない謎の陣営を敷いて作った、バンド中最大の意作にして違作にして異作にして遺作が、本作である。
「QUIET RIOT(QR)」。
ここにきてバンドのセルフネームド・タイトル、ネタがなかったのかそれとも後がなかったのか、いや後はなかったんだけど、とりあえず付けられた邦題は「新たなる暴動」。
勿論これは彼らの1st、「静かなる暴動」にかけたものだ。
ちなみにこの後、新たなる暴動は全く起きなかった。
しかも本作にて、バンドは音楽性を大きく変更。
まあポール・ショーティノを呼んでおいてパーティオーナイはさすがにやらんだろうと思われていたものの、ここではなんと起死回生とばかりに従来のQUIET RIOTのイメージだった、カモンフィルザノイズなパーティーロックバンドの華やかさを完全に脱色させており、ブルーズドベースの激渋な大人ミドル・ハードロックへと一転。
しかもこれが全然悪くないどころか、むしろ最高傑作とも言うべき出来栄えを誇るに至っている。
なんといっても明らかに格上のシンガー、ポール・ショーティノの歌が白眉だ。
正直、ぼく自身は別に歌の上手い下手でバンドを選ぶようなリスナーではないクソスラッシャーなんだが、この人については別格だ。
かのQUIET RIOTにいながら、しかしハスキーにしゃがれた声でソウルフルに歌い上げてみせるそのシンギングの威力たるや、古巣ROUGH CUTT時代の彼に奥方を寝取られたと知ったロニー・ジェイムス・ディオが受けたインパクトと同様な程に絶大だ。(やめろ)
しかもここでは、ショーティノがまたコクのあるいい曲を書いてるのだ。
なんといっても、オープナー”Stay With Me Tonight“が、名曲だ。
アルバム冒頭からミドルテンポで粘つくようなブルージーな情念を訴えるその曲の存在感は、これまでのバンド名からは想像の出来ないものであった。
このようにアルバムの作風は全体的に、当代的な70年代レトロモダン・ハードロック風味。
あの当時の風潮もあってか、LED ZEPPELIN的な楽曲もちらほら見受けられよう。
そしてさながらロバート・プラントばりの歌唱で魅了するショーティノは、これまでの彼のバンドでも見られなかったかの逸材ぶりをいかんなく発揮している。
例えば、バラード”Run To You“。
しゃがれた声に熱気を込めるショーティノの歌は、ロニーの奥方が彼にそう言い出しそうなくらい(やめろ)秀逸だ。
一方後半では、短インストからエモーショナルさを高める”Don’t Wanna Be Your Fool“の流れが素晴らしいのだが、これもやはりショーティノのライティングによるもの。
そんなショーティノならではのコクみを備えた味わい深いブルーズテイストに、QUIET RIOTというバンド本来の明朗快活な持ち味はロニーの奥方さながら喰われてしまっており(やめろ)、しっとりとしたエモーションの濃さが支配的だ。
一方で、カルロス・カヴァーゾのペンによる曲は相変わらずそう面白みのないロックナンバーばかりなのだが、それでもやはりショーティノという看板が歌うと、また違った味わいになるのが流石の手腕という他ない。
さすがはロニーにその実力を見初められてHEAR’N AIDにも抜擢して名を高めてやった恩を、奥方を寝取って返すくらいの度量持ちだ。(やめろ)
とまあ、このようにこの当代的な時流にあわせた70年代リバイバル路線は決して悪くはなかったのだが、しかし。
さすがにバンドイメージを覆したこの大胆すぎる路線変更は、当然ながら功を成すわけもなく、旧来のファンをあててんのよタカヤの打ち切り展開ばりの勢いで置き去りにしながら、QUIET RIOTというバンドは80年代の喧騒の藻屑へと消えていくのであった。
80年代末期、すでに出涸らしだったバンドに異彩で異才のシンガーという可燃剤を加えてろうそくの最後の炎をみせた、一瞬のきらめきアルバム。
今にして思えば、これはそんな、何ともはかない一枚だったのだろう…。
なお、かくしてバンドが瓦解した後、ロニーの奥方に入り込んだことで知られるショーティノのキングコブラは、その後KING KOBRAへと加入し
って、おいやめろいい加減!
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ヴァイナルカフェとは |
近年やっとアナログレコードにハマった超絶情弱時代乗り遅れ管理人、黒崎正刀が、休日の朝に趣味でコオヒイをひいて、その日の気分で持ってるレコオドを流し、まったり鑑賞している間にゆるーくSNSなどで書いているものを、こちらのブログに転用したもの。 |