竹下通りがパンクを教えてくれた~SEX PISTOLS/「Never Mind The Bollocks」(1978)

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朝からメルカリ行きの押入れ古着達と格闘する、日曜アサ。
少し一段落したので、今のうちにやっておこうコオヒイ入れてレコオド流して休日恒例ヴァイナルカフェ。

SEX PISTOLS/「Never Mind The Bollocks」(1978)

14だか15だかの頃だから、もう30年以上も昔の話になるか。
パンクス、という田舎ヤンキーとは違うファッショナブルでも過激な不良に憧れたぼくは、あの日、北関東の片田舎から一人それになるための服を買いに、東京に出てきていた。

とはいえど、なにぶんあの時代の田舎モンの中学生。
当然ながら服をおいそれと買えるほどの財力などろくに持っておらず、なけなしのこずかいから電車賃を差っ引けば、Tシャツを買うくらいが席の山だった。

さて、パンクスの服はどこで買えるのだろうか。
ファッションといえば、原宿だ。
ファッションといえば、竹下通りだ。
そういう時代だった。その程度の認識だった。
そして、パンクといえば、原宿だ。
パンクといえば、多分よくわからないけど、きっと竹下通りなんだろう。
確か、そういう時代だった。おそらく、その程度の認識だった。

初めて一人でいく原宿は、竹下通りは、田舎もんのガキにとってはちょっと怖いところだった。
未知の存在だった。
憧れと同時に、都会という底なしの怖さが、そこにはあった。
でも、ぼくはそんな怖い存在に、怖いパンクスになりたいのだ。
そう思いきって、一人で竹下通りとかいう、やたらと細いくせに人混みでごった返していた路地へと挑むのだった。

幾つもの、洋服屋。
幾つもの、雑貨屋。
へえ、これが原宿か。これが竹下通りか。
そう気圧され、圧倒されている田舎中学生の耳に、馴染みのあるロックが流れてきた。

SEX PISTOLSだ。
ああ、これ知ってる。
こないだ、貸しレコード屋で借りてダビングしたやつだ。
不良のパンクスになりたくて、どこかで聞いた「パンクならSEX PISTOLSだ」という情報だけを頼りに貸しレコード屋で借りてきたやつだ。

Never Mind The Bollocks」。
タイトルの意味はよくわからないけど、ヘナヘナのボーカルがイカしてた、ヘナヘナのロックンロールが不良っぽくてクールだった、あのアルバムだ。

てことは、ここがパンクの服屋なのだろうか。
奇抜なロックファッションばかりが飾られている、この店がパンクスになるための店なんだろうか。
このピストルズの流れている店で、ピストルズの服が、パンクの服が、売っているのだろうか。

不安と怖さと期待を入り混じらせながら、僕はその店に入り。
そして、最終的には、なけなしの小遣いで「ANARCHY」なんて血文字で書かれたTシャツを買って、ぼくはこれでパンクスという不良になれたんだ、と心を躍らせながら、店内に流れるSEX PISTOLSを背にするのだった。

もう、かれこれ30年以上も昔の話だ。

原宿に行って、インスタ映えするスイーツを食べたい。
14歳の誕生日プレゼントに、そう娘にせがまれた。
11月下旬生まれの彼女だから、昨年も暮れが迫り始めた話だ。
結局、年末の忙しさだったり新型コロナウイルスだったり何だので行けず終いになっており、やっと約束を果たせたのはついこの間の9月の連休のこと、一年ごしのお願いとなってしまった。

折角だから、お気に入りの「WEGO」の大型店でお洋服も見たい。
ったく何が折角だから、だ。どうせパパにたかる気満々なのだろうが、まあいい、一年ごしのお祝いだ。少し位は叶わせてやろう。
そう思って、ぼくら親子は原宿に向かうのだった。

さて、彼女のお目当ての「WEGO」も、「映える」とやらのスイーツも、どうやら竹下通りの真ん中ほどにあるという。
仕方なくぼくは、田舎者の子供達〜勿論例外なくウチの娘もそれなのだが〜でごった返している竹下通りを、彼女を見失わないよう注意しながら進んでいった。

嗚呼、竹下通りを歩くなんて、いつぶりだろうか。
前にいつ来たかなんて、まったく覚えていやしない。
下手をしたら10年、いや20年、いややもすりゃそれ以上経っているのもしれない。

にしても竹下通りも来ていない間に随分と、廃れたものだな。
もはや観光地、いやそれ以下に成り果てている。
昭和が終わって、「原宿」が終わって、時代が変わって、平成が終わって、ネットが普及し、SNSが普及している今。
田舎中学生の修学旅行先のいくつかの1つ。竹下通りというのは、せいぜい今やそんなものなんだろう。
ああ、そういやぼくも田舎中学生だったときに来たっけな。
あの頃とはえらい違いだな。

そう感慨にひたっていたおっさんの耳に、パンクファッションに加えてビジュアル系じみたロックアイテムを扱う服屋の店頭から、馴染みのあるロックが流れてきた。

SEX PISTOLSだ。
ああ、これ知ってる。
30年以上も前に、ここで聞いたやつだ。
そして、30年以上も前に不良のパンクスになりたくて、「パンクならSEX PISTOLSだ」という情報だけを頼りに貸しレコード屋で借りてきたやつだ。
そして、30年以上も前に不良のパンクスになりたくて、田舎から竹下通りに出てきたぼくが、ここで、この店で聞いたやつだ。

Never Mind The Bollocks」。

なんということだろうか。
パンクスという不良に憧れて原宿に、竹下通りにきた30年前の店は、その30年後もここでずっとずっと、毎日毎日、来る日も来る日もSEX PISTOLSのこのアルバムを繰り返しているというのか。

いや、それはもっともっと前からだったに違いない。

そして、この店は明日も明後日も、その次の日も、その次の次の日も、今後何年もまたSEX PISTOLSのこのアルバムを、繰り返すというのか。

感慨だのノスタルジーだのそんなもの以上に、そのループのきりのなさ、そのループの罠に足を捕られて、思わず呆然と立ち尽くしてしまったぼくだが、しかし。
あの頃の、30年前のぼくと偶然にも似たような歳となっていたぼくの娘に、そんなループの罠は微微たりとすら、起動もせず。
そこに流れている「Never Mind The Bollocks」もせいぜい街頭の雑音と同じくらいの存在としか認識していない様子で彼女は、そんなSEX PISTOLSにも、そこにかけられていたパンクファッションにも微塵の興味すらも持たず、「WEGO」に向かってスタスタと歩いていってしまった。

慌てて彼女を、「WEGO」と映えるスイーツが欲しくてここにパパ、つまりはぼくに連れてこられた14歳の彼女の背を追いながら、ぼくは30年以上もの昔のことを思い出していた。

ああ、そうだ。
ぼくは14だか15歳のころ、ちょうど彼女と同じころ。
パンクスという不良になりたくて、SEX PISTOLSにあこがれて、そしてここに来たんだっけか。
ここに来て、このSEX PISTOLSのアルバムを耳にしたんだっけか。

しかし。
そんな昭和の不良への憧れ、パンクスへの憧れ。ロックへの憧れ。
そんなものは、もう30年も経った今やここには欠片もない。
あるのは今やせいぜい、「WEGO」と映えるスイーツくらいなのだろう。
最早その程度位にしか、田舎中学生の憧れをもうここは、竹下通りという場所は、再生産が出来ないのだろう。
にも関わらず、そんな中でもここでは30年以上もずっとずっと、SEX PISTOLSをループさせているのか。
なんか、色々と、すげーなここは…。

 

アルバムA面の3曲目、”No Feeling“。
邦題は「わかってたまるか」。

アルバムでは地味な部類に入るその曲が、しかし何百回も聴いてきたあの馴染みあるメロが丁度店頭から流れるなか、そしておそらくはこの場所で何万回も繰り返しループされているのであろう、あのメロが流れるなか。
田舎の中学生たちがごった返す〜勿論例外なくウチの娘も、そして30年前のぼくもまたそれだったのだが〜夕暮れの竹下通りを。
つまりは、あの鮮やかだった「Never Mind The Bollocks」から30年も経った竹下通りを、ぼくは急ぐのだった。

「わかってたまるか」と。

DATE
  • アーティスト名:SEX PISTOLS
  • 出身:UK
  • 作品名:「Never Mind The Bollocks」
  • リリース:1978年
  • ジャンル:PUNK、LONDON PUNK、UK PUNK他
ヴァイナルカフェとは

近年やっとアナログレコードにハマった超絶情弱時代乗り遅れ管理人、黒崎正刀が、休日の朝に趣味でコオヒイをひいて、その日の気分で持ってるレコオドを流し、まったり鑑賞している間にゆるーくSNSなどで書いているものを、こちらのブログに転用したもの。
よって、そのほとんどが70~80年代の古いものばかり。
尤も音楽批評というかしこまったものよりは、大概がただの独り言程度のたわいない呟きなので、ゆるーく本気にせず(笑)読んでいただければ幸いです。

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