80年代メタル幕の内弁当、一丁~ENFORCER /「Zenith」(74p/100)

アルバムレビュー
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不味くはないが、焦点はバラけた

★ENFORCER /「Zenith」(2019)

思えばアルバムを重ねること、今回で5作目。
そろそろいい加減スピード一辺倒を考える頃合いに、彼等も来たというところなのだろう。

まずは、のっけからのメロハー展開を前に、しばらく追わないでいた身を棚に置いて、少しばかり驚いてしまった。
スウェーデンの(元?)スピードメタルバンド、ENFORCER
これまでは初期METALLICAを彷彿させるようなチャキチャキした足回りのシャープさでIRON MAIDENばりのリフメタルを身上としていた印象が強かったが、前作でどうやら方向性をワイドレンジに拡散させたご様子。
続く本作では売りモノの一つだったスピード技を抑えめに落とし、よりノスタルジックな歌モノメタル志向を強めてきている。

「ダサくてアグレッシヴなヘヴィメタルやっていたバンドが、垢抜け初めて急にポップさを意識しはじめる」という80年代さながらなシナリオなぞりに苦笑も浮かぶが、要するにここで見せているのは往年のLAメタル全盛期に見られた、ややポップ寄りなメタル路線。
そこを射程に置きながら、ネオクラプレイから果てはプログレッシヴメタリックなものまで手掛けてみたりなど、ギターをメインとした持ち前の器用な手捌きで盛り付けたこれは差し詰め、80年代メタル幕の内弁当だ。

成る程、程良い取り揃えの幕の内弁当だからして、そりゃ決して不味くはないものの、反面、魅力が分散し、焦点のバラけた散漫さも否めない。
ここらでまずはあれこれ試みてみました、というチャレンジャブルな気概自体は決して悪くないが、その変化が吉と出るのか、或いは過渡期なのか否かはまだ現時点では未知数と言ったところ。
そこに別段水を差す気もないが、しかし若々しいフラッシーなファストさを用いての勢い溢れるレトロモダンなアプローチがその良さだったと思っていたのに、ただのノスタルジックな懐古ものに陥る危険性をふと覚えたりも。

うーん…。
こんなサボり身が個人的嗜好を話しても仕方なかろうが、軽排気量カートでブン回しカッ飛んでいた頃のが、やっぱり好きだけどねえ…。

DATE
  • アーティスト名:ENFORCER
  • 出身:スウェーデン
  • 作品名:「Zenith」
  • リリース:2019年
  • 正統派メタル、北欧メタル、NWOTHM他
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