やっぱりANTHEMはカッコイイ~ANTHEM/「Crimson & Jet Black」:85p

ANTHEM/「CRIMSON & JET BLACK」 アルバムレビュー
ANTHEM/「CRIMSON & JET BLACK」
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ANTHEM/「Crimson & Jet Black」:85p

ANTHEM

ANTHEM

「やっぱりカッコイイな、ANTHEMは…。」

アルバムが流れ終わった後、何気なくついぽろっと一言、漏れてしまった。
でも、確かにそうなんだ。
「やっぱりカッコイイ」のだ、今でもANTHEMは。

しかも稀有なことに、再結成のゼロ年代以降、いやもっと遡っての初期からのほとんどの活動期において、ずっとこのバンドは毎アルバムの都度、それを続けられている。

だからぼくは、80年代の入り口だった「Bound To Break」や私的最高傑作「Gypsy Ways」を初めて聴いた後も、またゼロ年代に入っての再結成作「Seven Hills」「Overload」などを改めて聴いた後も、そしてこのあいだの英語版リレコ「Nucleus」を前に振り返ってみても、そういえば何度も何度も、それを漏らし続けてきたものだ。
「やっぱりANTHEMはカッコイイ」と。

こんなヘヴィメタル・バンドは、少なくともこの日本には、彼らしかいない。

そんな日本の誇る、最高峰正統派ベテラン・ヘヴィメタルバンド、ANTHEM
2019年、彼らはここにきて国内活動枠を超えて、遂に海外進出へと向けて全編英詞リレコ・ベスト「Nucleus」を製作した。
そして本作「Crimson & Jet Black」は、それに続く次なる一手として出された、やはり同様にフルトラック英詞歌唱となるフルレンス・アルバムだ。

バンドとしてのスタジオ・オリジナルとしては、17作目となる本作。
思わず、やれ海外進出云々と先走り、下駄を履かせ、かさ増しさせる向きもなくはないだろうが、しかし結論から言おう。

ズバリ、これがANTHEMの史上歴代傑作では、全くない。
しかしこれは間違いなく、ANTHEMでしか作れない秀作だ、とは確かに思う。
少なくとも、そのANTHEMとして掲げてきた看板が確かなものであることをしっかりと伝える、その意味においては相応しい、実に堅実なアルバムなのではないだろうか。

そう、だからこそ、冒頭の一言に尽きるのだ。

それでも「やっぱりANTHEMはカッコイイ」と。

おっと、ややながらお固く始めてしまったこのレビュー。
ここらで少しばかり、肩の力を抜くとしよう。

ブランニューでの海外展開作、ということで二度目の全曲英語歌詞で作られたド新作、ってのが売りな本作。
確かにそりゃ、場合によっちゃ日本語のほうがスッと胸に入るかなってところもないわけじゃない上に、「いやあの日本語独特のリズムや語感、そしてそれによるほんのりダサカッコヨさ込みゆえが、ANTHEMの魅力だったろ」という声も頷けなくはないけれど、でもここでそれを言っても仕方がない。

それに英語歌になろうが一切相変わらず、男らしさ溢れる力強さがハスキーさに宿る森川之雄のヴォーカルよ。
彼のこの歌こそが、「ANTHEMのカッコヨさ」を支えている、まずの前面となっているのは間違いない。

そして何より、安定のANTHEMブランドの頼もしさたるや。
なにせ往年から脈々と続く彼ら流の正統派&様式美ピュア・ヘヴィメタルがここに揺らぐはずもなし。

特に本作は、前半の充実ぶりが極めて素晴らしい。
トップを飾るM1“Snake Eyes”は、いかにも彼ららしいアンセミックな(これが言いたかった)名ファストナンバー=速くてカッコイイだし、そしてその疾走感とメロディクさの双方をなめらかに継ぎ保つM2“Wheels Of Fire”(速くてカッコイイ)から、更には鋭角なリフと歌メロのみならずギターソロが耳奪うほど秀逸なM3“Howling Days”(速くてカッコイイ)へ..。

しかもこれらの「速くてカッコイイ」ANTHEM流ヘヴィメタルは、その実、完成度の高い成熟さと質実剛健な手堅さに名実ともに支えられており、えーと何だろ、車で言うと、トヨタのクラウンあたりというか。
そう、さながら日本きっての職人性と技術の探究で細かいとこまで完全に完成されきった国産上級車に乗って、高速三車線の真ん中をスイスイと爽快に飛ばすような疾走感だ。

だからそれは派手な大排気量の外車や、あるいはチャキチャキの最新スポーツカーで最右車線をベタ踏みぶっ飛ばすのとはまた違った、大人のゆとりと貫禄に身を任せられられる、ずっしりした信頼感がそこにはある。

勿論それは実力確かな熟練のメンバー達と、そしてそれを束ねるリーダー柴田直人(Ba)の統率力、ストイックな研鑽を怠らぬ積み重ね、またそれによる一切衰えを見せない作り手としてのプロフェッショナリズムに大きくよるところなのだろう。
(とはいえ、その中でも今回は清水昭男(Gt)の活躍が随所で目覚ましい!)

しかもその一方で、要の4曲目に味変ヘヴィチューン配置したり(“Roaring Vortex”)、ネオクラなインスト曲入れてみたりなどのチャレンジャブルさに海外進出の意気込みを覗くのだけど、でもま、ここらへんは正直、並みといった程度の出来栄えか。
…とこんなものかと思っていたら、ラストのラスト(M11”Danger Flight”)にまさかのメロディックなエモ・キラーチューンが配置されているという油断のならなさよ。

おっと、何にせよ。
ここにきて国産最上クラスの「これこそジャパンの誇る職人ヘヴィメタル」といったファクトリーブランド力をアピールする本作。
そりゃあ外すわけもないし、であれば当然ながらいつもどおり、「やっぱりANTHEMはカッコイイ」となるしかないわけだ。

ANTHEM/「CRIMSON & JET BLACK」

ANTHEM/「CRIMSON & JET BLACK」

DATE
    • アーティスト名:ANTHEM
    • 出身:日本
    • 作品名:「CRIMSON & JET BLACK」
    • リリース:2023年
    • ジャンル:HEAVY METAL、JAPANESE HEAVY METAL、POWER METAL、様式美メタル、
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