昨日、頼みの綱の嫁さんも、ついに発熱。
仕方ないのであらゆる家事を病み上がりがやるという新時代サバイバル・バトル編へと新章突入。
いよいよ発動条件が整ってきやがったぜー!?
そんなコロ篭り休でも、コオヒイひいてレコオド流して休日恒例ヴァイナルカフェ。
QUEENSRYCHE/「Rage For Order」(1986)
朝から洗濯ゴミ出しメシ作り洗い物片付け掃除…と、全ての家事をワンオペレーションでこなすコロ明けマインドクライマー。
ドクターXもシスターメアリーも出てきやしねえ、一人ニッキーなワイリメンバーナウ。
でも仕方ねーんだよだって俺しかいねーんだからBest I Can、とそんなランボー怒りのオーダー俺ぁこんなの頼んでねーぞ!な愉快環境からお届けする本日のヴァイナルカフェ。
今回あげる一枚はこちら、
QUEENSRYCHEの隠れたド傑作、「Rage For Order」だ。
細部の細部に到るまでよく考えられ、よく練られた、計算しかないアルバムだ。
計算された邦題、「炎の伝説」。
勿論、ただジャケが赤かったから何となく付けたとか、そんなことは絶対にない。
知のメタル、つってな。
よーく、このジャケを見てほしい。
世界地図、書いてあんだろそこに。それが知性だ。
メタラーはなんと、地図が読める。知的だ。わかったか?
おっと冗談はさておき、まず特筆すべきは、音楽性の進化だ。
前デビュー作「Warning」から、プログレッシブなプログレッシブが、プログレッシブなまでにプログレッシブした。
でその結果、急に美意識高い系になって、中学生達が着いていけなくなった。
ヒャッハー胸熱バトル漫画と思ってたら、いきなり天元様が世界の小難しいことを何やら言い始めるやつだった。
実際、当時クソスラッシャーだったぼくには、このアルバムのプログレッシブな良さが全く分からなかった。
だから当時、余りのつまらなさに、度肝(ドギーモ)を抜かした。
あまりにもつまらないので、当時、炎上しそうなRの一個多い雑誌にこりゃまんまと騙された、と唇を噛んだ。
だけど当時、あの雑誌はいつもぼくを騙してばかりだったので、またそういうプレイの類いかとすぐに唇を離した。
とはいえこの2nd、とにもかくにもメンバーの力量の成長っぷりが著しい。
何といっても凄いのが、ジェフ・テイトの高音ヴォーカルだ。
どのくらいに凄いかというと、凄いくらいだ。
いや彼だけじゃない。
ギターのクリス・デガーモのリフ構築力もまた、負けてない。
どのくらいに負けてないかというと、負けてないくらいだ。
そして、それらの結果。
張り詰めた緊張感の高さではバンド作品中トップを誇ると言っても過言じゃない、そう過言が言えるようなアルバムとなった。
デジタルのサンプリングも含めてのサイバーなSF的世界観を、過言じゃないくらいにギラリと切れ味の鋭いテンションが際立たせ、引き立てる。
そんな過言じゃない作風の仕上がりになっている。
ただし、
ここで生じた最大の問題は、張り詰めた緊張感が過言じゃなさ過ぎてつまんない、というものだった。
世界観と構築性が過言じゃなさ過ぎてつまんない、というものだった。
つまり、プログレッシヴにプログレッシヴしすぎて、プログレッシヴできないぼくたち問題、が爆誕したのだ。
ある意味でこのアルバムは、彼らにとっての最高域だったのかもしれない。
それは、地味でつまんなくても高い構築美があればメタルは凄い、という評価軸の最高域だ。
どうだ、つまんないけど凄いだろう。
わあほんとだ、確かにつまんないけど、確かに凄いや。
確かに凄いけど、確かにつまんないや。
その実を言えば、後のプログレメタルはその一線の行き来をインフレバトルで反復することになっていくわけで、そんな業の深い土壌を良くも悪くもこのアルバムが作る始祖になった感が強いのだけど、その話はここでは置いておくとして。
実はぼく自身、割と長い間、このアルバムをそういう単に凄いだけのものだと、勝手に捉えていた。
ましてや世は、あともう数年ほど経って迎えるズライチ娯楽大作展開時代だ。
ラリパー主役で映画仕立てに小芝居が効いてて、ちゃんと中学生でもわかりやすい展開とわかりやすいキャッチーさに、ちゃんと中学生でもわかりやすい速い曲もやってる、そんな中学生マインドがクライムなぼくらのオペレーション。
その大波が、このアルバムへの高かった玄人評を、記憶の彼方向こうにまで押し流してくれた。
で、その結果、忘却へと至る本作。
あー、要するにこれって修行編ね、亀の甲羅しょって走るクリリンのことかー…とその昔はその程度位にしか思っていなかった。
でも大人になった、ある日。
本作を改めて聴いたぼくは、もう一回、別な意味で度肝(ドギーモ)を抜かすのだった。
あれ?
なんか良いぞ?
ていうか凄く良いぞ?
どのくらい凄いかというと、凄いくらい良いぞ?
いや、どのくらい凄いかというと、最高傑作の次くらいには良いぞ。
“Gonna Get Close To You”のゾクゾクするようなダークさに差し込む、メロディックな光明とのコントラスト。
かと思えば、この後への道程を兆す“Surgical Strike”のドラマティクスに胸沸く躍動感。
はたまた、切っ先をリフに乗せて進む“Chemical Youth”に、情感を揺さぶるようなバラード“I Will Remember”…。
あれ、
あれ、
あれ?
なんでこの格好良さに気付かなかったんだっけか。
いや、これは多分なんだけど、ぼくだけじゃない。
これは単なる時代感覚でしかないのだけど、当時、それなりに多くのリスナーが、ちょっと経ってからこのアルバムを本当に評価したんじゃないだろうか。
そしておそらくは、その「本当」にいたるまでには「ちょっと」数年くらいが、かかったんじゃないだろうか。
とどのつまりが、その数年分だけ本作は、早かった。
やはりこのアルバムは、そのくらい早かった。
やはりあの時代、中学生どもには早かった。
やはりあの時代、1986年には早かった。
少なくとも、
淡々とした、抑揚を削いだような冷たい質感による娯楽性の欠如が、インパクトの地味さが、ぼくの興味をひくのに数年程かかってしまった。
余りのミステリアスさのため、その謎をとくのに数年程かかってしまった。
余りのゆらめき輝くような近未来的浮遊感に、ついつい数年ほど先の未来まで流されてしまった。
「Rage For Order」。
今にして思えば、あと数年だけ早すぎた、日陰の名盤がこれだった。
早すぎて忘れられた、無名の傑作がこれだった。
そう、
早すぎてあのころには全くわからなかったが、しかし思えばやはり。
かつて「Operation:Mindcrime」というまばゆい光を、この優れたアルバムが陰ながら支えていたのだ。
- アーティスト名:QUEENSRYCHE
- 出身:US
- 作品名:「Rage For Order」
- リリース:1886年
- ジャンル:HEAVY METAL、様式美HEAVY METAL、プログレッシヴメタル
よって、そのほとんどが70~80年代の古いものばかり。
尤も音楽批評というかしこまったものよりは、大概がただの独り言程度のたわいない呟きなので、ゆるーく本気にせず(笑)読んでいただければ幸いです。