廻り、廻る、罪と罰~OZZY OSBOURNE/「The Ultimate Sin」(1986)

OZZY OSBOURNE/「The Ultimate Sin」 ヴァイナルカフェ
OZZY OSBOURNE/「The Ultimate Sin」
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ようやく熱も下がったし、日曜だし、7月も終わるし、コロコロだけどコオヒイひいてレコオド流して休日恒例ヴァイナルカフェ。

でもリビングは家族が来るかもなので、一人ベランダにて涼しげな真夏の朝から。

OZZY OSBOURNE/「The Ultimate Sin」(1986)

OZZY OSBOURNE/「The Ultimate Sin」

OZZY OSBOURNE/「The Ultimate Sin」

オジー最大の問題作…と、嘗てこのアルバムがそう呼ばれたあの日、あの時代。
だけどぼくは、何でこれが「問題」だとされているのか、全くわからなかった。

シンプルすぎる。
アメリカすぎる。
ポップすぎる。
売れ線を狙いすぎる。

そう、ぼくらの上の世代はさも物知りげにぼくに語ってみせていて、嗚呼、要するに彼らのお気に召さないことをやってモダン化したから叩かれたのか、とそこまでは理解出来たけど、んじゃそれの何がどうして問題なのか。ぼくにはそこが全く、わからなかった。

中でもシングルカットされた、”Shot In The Dark”
ダークなメロディックさをたたえたこの曲がかっこよくて、案外とぼくの当時のお気に入りのナンバーだったのだけど、でもそう言うときまって上の世代は、ぼくに対して「お前は何もわかってない」と食ってかかってきた。
一体何の根拠があってあんたらは、ぼくが「何もわかってない」と言えるのか。あの頃ぼくは、それが全くわからなかった。

ところが、やがて時が経つと、その曲は彼ら最大のヒット曲の一つとなっていき、当然ながらライブの定番曲となっていき、
そして何と。
ぼくに何もわかってないと怒っていた上の世代らまでが、ライブでは拳をあげて興奮気味に、感動気味に、合唱しているじゃないか。

あんたらは一体何でそれを批判したくせに、なんでそれで興奮しているのか。
じゃああのとき何でぼくは、「お前は何もわかってない」と怒られたのか。
そんな光景に、ぼくは全く何が何やらわからなかった。

そして、いつの間にやらときは流れ流れ。
あの日ぼくは何で怒られたのか全くわからないまま大人になり、あの日うとましかった上の世代をもあっという間に超えてしまった。

そして、はたと気がついたら、どうだ。
今度はぼくが、ぼくに気に召さないことをやっているバンドの新作にケチをつけては、やもすればそれがいいという連中に対して、「全く何もわかってない」と物知りげにぼやくような、そんな「そっち側」にすらなっているではないか。

そうか、そうだったのか。
そんな身になって、やっと。
あの日に全くわからなかった「問題作」の姿が、身に染みるかのごとくわかるようになってきた。
「これは問題作だ」と、それを「問題」にしたい、「問題」とすることで承認が得られる何か側がいる、ということがわかるようになってきた。
つまりそこにある本質は、ご立派な音楽論なんかじゃ全くなくって、根はただの承認問題だったのだ、ということがわかるようになってきた。

そう、要するに。
「全くわかってない」のは、ぼくだけじゃなくて、上の世代も同じだったのだ。
そして、その「全くわかってない」とは、実はその音楽のことではなく、ただ「他者」のことだったのだ。

しかるにぼくらは、他者のことを互いに何もわかっていなかった。
というかぼくらは、ぼくらの自意識以外を何一つ理解しようとしていなかった。

だからあの頃の、上世代からの「お前は何もわかっていない」とはつまり、「自分はお前らを認めない」と言っているのと同じであり、そんな上の世代のことを、ぼくは「そんなお前らこそ、ぼくら以外の何ものかだ」と言っていたのだ。

いや、それでも今にして思えば、純朴な時代だった。
だってあの頃は「上世代」と「ぼくら」という世代対立、という至極わかりやすい上下構造の時代だった。

しかし、今やどうだ。
いつの間にかそこには「上」も「下」も何もなくなって、そしてただの「個」と「他」になって、やがて「お前ら」は「自分以外の何ものか」になってしまっているではないか。

The Ultimate Sin。

廻り、廻る、罪と罰。
今なお巡り、巡る、無知の罠。

このレコードから流れる「罪と罰」が、時を超えてそれをぼくらに伝えてくる。
やっぱりお前らは何もわかっていないままだ、と。
”Shot In The Dark”、これこそが何者すらも見えない闇への痛切な一撃だ、と。
オジーの歌が、さもおどけ気味にそう伝えてくる。

そして、そのとおり。至極残念なことなんだが、それでもぼくらはやっぱりその自意識の呪いから抜け出れなくて。
だからぼくらはあの日からずっと、互いに「お前は何もわかってない」を呪わしげにぶつけあい続けていて。

そしていつだって、今だって、互いに何もわかっていないままなのだ。

OZZY OSBOURNE/「The Ultimate Sin」

OZZY OSBOURNE/「The Ultimate Sin」

DATE
  • アーティスト名:OZZY OSBOURNE
  • 出身:UK
  • 作品名:「The Ultimate Sin」
  • リリース:1886年
  • ジャンル:HEAVY METAL、様式美HEAVY METAL

 

ヴァイナルカフェとは
近年やっとアナログレコードにハマった超絶情弱時代乗り遅れ管理人、黒崎正刀が、休日の朝に趣味でコオヒイをひいて、その日の気分で持ってるレコオドを流し、まったり鑑賞している間にゆるーくSNSなどで書いているものを、こちらのブログに転用したもの。
よって、そのほとんどが70~80年代の古いものばかり。
尤も音楽批評というかしこまったものよりは、大概がただの独り言程度のたわいない呟きなので、ゆるーく本気にせず(笑)読んでいただければ幸いです。
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