今週は、抜きん出ていないけれど皆そこそこ悪くない感じでした。
HARAKIRI FOR THE SKY/Maera:82点
(今週のオヌヌメ)
南海オーストラリア彼の地にて北欧の寒風を吹きまとわせている抒情派ポストブラック、豪州からAokigagara(青木ヶ原)で切腹メタラー。
これまでも割と質の備わった良作をコンスタントに連ねてきた彼らだが、この5thにてスコンと抜けたかの伸びようだ。
リリカルなメロディを豊かに駆使しつつ、トレモロ絡めた激柔自在の緩急ある展開を見せており、聴きどころも多彩。
ぶっちゃけ、これという個性やアーティシズムに長けた唯一無二性はさ程に見られぬものの、そのぶんフックと完成度とで出来の良さを示している。
しかもこのバンドの場合、ガチ本場勢に対し、オージーバンドらしい良い意味での大らかな大味さ感じられるのがお国柄、そこが個性といえばそうなのか。
とまれ、今後の腹のかっさばきぶりにも期待したい。
THE END MACHINE/Phase 2:73点
そもそもこのメンツを揃えさせて、なんでこんなしょうもない時代錯誤オルタナ崩れを今更見せられなきゃあかんねん。
そう前作での90年代の呪いの深さに呆れた方、そんな向きにはようやく届きかけた朗報だ。
本家復活DOKKENただしドン・ドッケン以外、というこのプロジェクトバンドが、この令和に張り切り挑んだおっさんリバイバル復刻劇。
“Tooth And Nail”みたいなオープニングからして何を況や、楽曲ニュアンスはおろか往年を思わせるジョージ・リンチのギタータッチまでと、イイ線まであと僅か位には手も届きそうな頑張りようだ。
尤もユーロ感覚なドン・ドッケンの柔和なメロディック要素はやっぱりここに致命的に抜け落ちているし、何より正直なところ、所詮の実態といえばこりゃ言わば遥か峠を終えた老ミュージ達の同窓会。
よって後ろ向きなノスタルジー以上には全く欠片すら響きもしないだろうが、ならばこそ。
嗚呼ここでドンの声がなあ、と往年のファンがそう叶わぬ思いを噛み締めほろ苦い懐古に浸れる位の出来には、そこそこなってはいることだろう。
SWEET OBLIVION/Relentless:80点
もう一丁の復刻枠だが、但しこちらはより巧妙でヒネリがある。
「ぼくの考えたQUEENSRYCHE」をジェフ・テイト本人使って再現させる、そんなズライチ二次創作(いや1.5次か?)企画、第二段。
しかしここに先のような後ろ向きさが希薄なのは、より新たな才能と感性のインプットという新風を流入させながらそのレジティマシー(正統性)を上手いこと継続維持出来ているからだろう。
しかも、DGMの中の人が勤めた前作も悪くはなかったが、ダレのあったあちらより今回の方が、よりメリハリと良メロに満ちており、トーンや世界観含めてしっくりくる。
個人的には「Empire」以降30年以上も経ってようやくズライチはこれだよという手応えを覚えたのだが、とはいえそれが本家ではなくギャラリーフェイクな贋作だとは、なんともはや。
「いいじゃないか、俺は好きだぜ偽物安物粗悪品。
気軽に扱えるし、壊れても惜しくないし、無くしても平気だし、何より飽きたら捨てられるところがイカしてるぜ」
(「めだかボックス」梟博士)
NOFX/Single Album:71点
のっけからいきなり、まどろっこしくて長ったらしい彼等らしからぬ(しかも微妙な)長尺ミドルチューン。
どげんしたかファット・マイク先輩!?と思わずモヤッとさせられるも、聞けばどうやら本作、当初は2枚組を想定して作ったものらしい。(コロナで企画が飛んだとか)
成る程、レンジ広めに構えたカラフル多彩な作風はその産物か。
尤も一枚に絞り込んだのは結果的に正解だった感しか覚えないが、それはさておき何やかんやでおっぱじまっちまえばやはりいつものNOFX、メロパンク総本山の筆頭らしい貫禄と熟練技はお手の物。
何でもござれな腕さばきといい、ハーコーメロコア一筋三十余年は、やはりもって伊達じゃない。
さて、そんな今のこのバンドを象徴するかの1曲が、AVENGED SEVENFORLDが客演した”Linewleum”だ。
彼等はここでかの往年の名曲をモジりつつ、その溌溂とした疾走力をエナジーにして、シーンと後続らへの応援歌と昇華せしめている。
この曲こそが本作のトピックと同時に大きな存在意義そのものであり、よってそれをどう捉えるかがこのアルバムの各自価値指標となるだろう。
以下、補足というか、生々しい本音ぼやき。
いや上でも全然本音なんだけどさ!
DOKKEN同窓会、大量添加物思い出スパイス効用でプラス20点。
それがどうしたという人は差っ引いてください。ていうか聴かんでいいでしょう、人生における時間の無駄を過ごします。
でも今だにちょっと「90年代のグランジトラウマ」がかったアレンジとか、ちょいちょいしてんのな、いいおっさんが。
いや価値転換が出来ないおっさんだからこそか。
ノスタルジー味わいつつ、「いらんねんそれ」とつぶやきながらも、でもちょっぴり切なくなる。
一方なんちゃってズライチは、それよりも遥かにちゃんとしてる感ありますね。
悪くない。ていうか、イイ。
現代を向き、しっかりアップデイトしたQUEENSRYCHEを描こうとしてるのも好印象。
あ、そうレビューに書けばよかった。(笑)
オヌヌメまではしないけれど、今回これが実は一番良くできていたりしますね。
おっと、「ここでかよ!」な情報補足を。
今回関わっているのはDGMのシモーネ・ムラローニに替わって、SECRET SPHEREのアルド・ロノビレだとのこと。
いい曲書くし、いいギターも弾いてんな。
SECRET SPHEREってしばらくろくにおっかけてないけれど、ちょっと興味湧いてきた。
NOFX、なあ…。
そりゃ”Linoleum”のアレンジセルフカバーは確かに最大ポイントゲッターだし、それはそれでいんだけどさ、ぶっちゃけこれアルバムとしてどうよ?
取り敢えず冒頭の長ったらしくてタルい曲、いるかこれ?
ていうかそもそも、いらん曲多すぎ問題。
いやあマジで良かったわ、2枚組で更に余計なもん盛られなくて。捨て曲詰め込められたらどうしようかって思った。
よって当然ながらも低め評点。
切腹大空、普通にイイし、まあこれまでよりも抜けたけど、欲言えばもう皮一、二枚は剥けてくんねーかな。
そんなわけでこの点数に、今のところしときます。
「期待」ってのはそういう意味を込めて、ですね。
以上。
さあ来週はオフスプも出るよー!
そんな期待はしてないけれど。