お盆消化中につき、積み上がった新譜達をちぎっては投げ、ちぎっては投げする(ちぎっても投げてもダメ!)本日もやっておきますね、今週の4枚。
WORMROT/「Hiss」/84p

WORMROT/「Hiss」/84p
このところいきなり話題になってる、噂のEarache所属シンガポール・グラインダーズ・トリオ、これがどうやら4thらしい。
そんな出してたんか。
音楽的主軸をグラインドコアに置きながらも、それのみならずガシガシと音楽的垣根を壊しては轟流で次々と飲み込んでいくハイブリッド・スタイルなのだが、何よりもまず、それがやたらスッキリとしたテイストとなっているのが面白い。
例えばスラッシュメタル、オールドスクール~ニュースクール、クラスト、ノイズ、デスメタル、ブラックメタル、カオティックハードコア…。
それらの要素で刺々しく激性を重ねた末に、ジャズ、プログレッシヴロック、サッドコア、果てはバイオリニストまで加えてごっそりとした混沌の終末に描き向かいながらも、しかしその喉ごしの良さで一気に聴き通させてしまう。
その要因は、単なる雑食性ですまさない高い構築力と、取り揃えのセンスの良さ。
更には不思議なメロディックさと、それにより成される世界観の伝達能力の高さであり、つまり乱暴に要約すれば「すげー激烈混沌雑多なのにアート、てのをキャッチーかつスマートにわかりやすく表現すんのがうまい」という話に尽きる。
反面、手綺麗過ぎるせいなのか、やもするとスルっと抜けて進んでしまう感もあるのだけど、これは作風の良し悪し(いや悪くはないが)なのかもしれないな、とここでは理解しておくとしよう。
しかし巷でも言われているように、本作リリース後すでにヴォーカルが脱退。
今後の行方に、注目ってことで。
PERFUME/「Plasma」:80p

PERFUME/「Plasma」:80p
あれ、これまだアルバム未収録だったっけ?という曲が多い気がしておじいちゃんさっきご飯食べたばかりでしょなんだけど、それはさておきぱひうむ、4年ぶりの新作だ。
このところ御大による最新ダンストレンドへのアップデート意識や彼女ら自身の成熟とはうらはらに、いかんせんアダルティで地味な作風へと向かいがちだったなか、ガーシー砲をケツに喰らって炙られたせいかここにきてカラフルではつらつとしたきらめき感が俄然強まっているのは、割とありがたい。
勿論、そこにはどこか懐かしい人工樹脂的(“さよならプラスティックワールド”に滲む自己言及性よ!)なシティポップ志向をもはらんではいるのだけど、でもそれよりももっと全体の作風としては、柔らかでありつつも弾力性を備えた、多彩な配色。
例えば中毒性の高い“ポリゴンウェイヴ”、そして高明度ポップな“再生”に、メロウに揺らぐ“Flow”…と曲粒の良さが際立つなか、しかし個人的には軽やかに跳躍するような“アンドロイド&”あたりに、かつて彼女らが内包していたメタ的自己言及性、つまりは「生身の美少女が演じる無機質性、だからこそ生じる揺らぎが生々しい自己矛盾ドラマ」を彷彿させており、そこがちょっとだけ微笑ましくあったりして。
SOULFLY/「Totem」:74p

SOULFLY/「Totem」:74p
ちょっと前に金の問題でもめてた気がしたら、音楽面の屋台骨マーク・リゾ(Gu)がいつの間にやめていた、SOULFLYの新作。
それもあんのか知らないが、ファーストインプレはやたら往年のSEPULTRAっぽくなってんなあ、というものだったが、程なく聴いて成程、要するにここしばらくの音楽性とマックス要素を煮詰めこんで前面化したのだという、考えてみりゃこの布陣ならそうなるわなという当たり前の帰結に。
も少し具体的には、彼ららしいハードコア流れのグルーヴメタリックさとチャカポコトライバルとを幾分マイルドに仕込みつつ、表層に(VENOMやSODOMルーツの)前身的ブラックメタルのプリミティヴな邪性と鋭角さとでアグレッションを味付けたような作風というか。
それもあるのか、あるいはリゾ抜きで楽曲面のインパクトが弱まってんのか、若干ながらもフックの掛かりの弱い印象を拭えなくもないのだが、しかし。
とはいえこれが出来るのもマックス・カヴァレラならではという、未だに強いその特性評に加えて、やはりなんだかんだで叩きつけられる轟音に、そりゃ血も沸くし滾るし煽らされるという高熱度っぷりは流石でしかない。
DUB WAR/「Westgate Under Fire」:63p

DUB WAR/「Westgate Under Fire」:65p
ついこないだうちのヴァイナルカフェでかつてのアルバムを扱ったばかりかと思えば、まさかの新作。
つーかSKINDRED(てかこっちはどうなったんだっけ?)じゃなくって、この時代にdub warって。
そんなベンジー・ウェッブ率いる、元祖ラガマフィン・ミクスチャーメタル。
何せ90年代前期というまだ完全にメタルとHIP HOPが完全溶解する前夜期にイギリスかの地で、彼らは他の誰よりも二歩も三歩も早くからレゲエメタル、ダブメタルの始祖として孤軍奮闘していたのだ。
そして、だがしかし。
そういう連中が、んじゃ凄ぇ格好良かったのかといえば、腕を組んで「うーん、だからって必ずしもそいうもんでもねーんだよな…(苦笑」と言うのは、実はMORDREDにも通じるところもあったりするわけで。
そりゃ嘗ても現状も、向こうよりは遥かにマシながらも、しかしこれだって「あの時代のがその分年食った今になって、もっかいホコリ叩いて引っ張り出した前時代ミクスチャー」という十分過ぎるほどの化石発掘グッズ。
なので確かにぼくみたいな「あの時代」のリアルタイマーならば、バリ強めな思い出スパイスの効用のせいでそれなりにイケなくもないが、だからといって「今これ」から入るのを他所様に勧めるのは、なんぼなんでも気が引けるというもの。
てことで評点はあくまで、スパイスを洗い流した上のものとして勘定しとく。
「意外に聴けるじゃん」っていう人は、1995年の代表作「Pain」をどうぞ。
ちなみにこっちは、未だに私的レート81p、だ。(注:当社比)
ふう。
…え、もうARCH ENEMYもインフレ連中の同窓会も新作出てんのマジで?
はーい、そこらまだ未チェックでーす。
そんじゃ皆さん、よき夏休みを。
また来週。