NINE INCH NAILS / 「Tron: Ares Soundtrack」 :84p

NINE INCH NAILS / 「Tron: Ares Soundtrack」
本10月に日米同時公開のディズニー新作映画「トロン:アレス」のサウンドトラックを手掛けるのが何と、かのトレント・レズナー、
しかもNINE INCH NAILS名義によるバンドオフィシャルのニューアルバム扱い、というわけで目下話題となっているこちら。
相方はやはり、アティカス・ロスが努めてる。
「ソーシャル・ネットワーク」筆頭に、「ドラゴン・タトゥーの女」、「ゴーン・ガール」他、これまで映画仕事にちょいちょい携わっては栄えある賞も受けてきた彼だが、NIN名義としてはこれが初めて。
なんでもディズニーさんとこの社長が言い出しっぺらしいが、詳細はggれアリン。
ただしヴォーカルトラックは20ウン曲中4曲のみという基本あくまでサントラ、しかもドラマを邪魔しないかの劇中BGM使用を多分にわきまえた本格ヅラの映画音楽集なので、その前提も踏まえず旧来のNINファンがキャッキャウフフ能天気に手を出していいかは、ちょい別の話ってことで。
やもすりゃ、まともな歌モノって実質先行シングルのこれ(↓)とラストの数曲だけじゃねーかよざけんな金返せ、というコレジャナインチNAILSに対して、いやこれまで出した「Ghosts」シリーズとかもインストですしおすしと言われましても、そりゃ釈然とするはずもなく。
そりゃ確かにこのシングル曲(↓)は問答無用のカッコよさだし、いや何なら他チューンもトリップホップありダークウェーブありゴリっとインダストリありと、NINらしさもちゃんとある上、思いの外に娯楽性も備わってるしで、ガチめロックファンでも存外聴けてまう作り。
トレントとどこぞの知らん女さんシンガーのしっぽりミニマルデュエット曲も、ちゃんとイキフンあるしな。(M12“Who Wants To Live Foever?”)
実際ぼくも、「とはいえこの名義出しなら、もうちょいサービスあってもバチあたんねーだろ」と当初は訝しんでだクチなんだが、しかし。
意外にこの手のショートレンジ詰め込みデジっこインストって、作業脳の邪魔もしないし、小一時間程酒飲んでネトゲしてるときのぱっと流しにも丁度よし、何ならジムランからナイトクルーズのお供によしで、予想以上の汎用性。
(ピコピコディープなM5“This Changes Everything”とか、世紀末サイバーブルーなM14“Target Identified”辺りも、たまらん)
しかも(映画評は知らんが)、レトロネオンフューチャーなあのトロンの世界観に膝まで浸りながら、ほんのりアンビエントなエレクトロの海を浮遊するかのエクスゆるメンタルなうま味だったり、
はたまた雨の神田の立ち食いでどんぶり頼んでは店のジジイから怒鳴られる電気羊のドリーミン気分味わったりなどと、
「どうせおアートな雰囲気モノなんだろ」以上にちゃんと楽しめるよう作ってくんだから流石はレズナー先生。
LORNA SHORE / 「 I Feel The Everblack Festering Within Me」 :72p

LORNA SHORE / 「 I Feel The Everblack Festering Within Me」
「アメリカ片田舎の豚小屋にぶっ転がってた令和のBAL-SAGOTH」、
かは知らんが、ちょいちょいキャリアを積んできた気鋭の米シンフォニック下水デスコア、前作で名を挙げてのここが勝負どこ注目どこな、5th。
「壮麗大仰なヨーロピアン上級ブラメタを、米ブルゲロデスの下品粗野蛮行さと合致させて、品性上下水道直結」
という彼らの目論見は、新加入な稀代のブランド下水豚ヴ汚ーカル、ウィル・ラモスという逸品を得ての前作で、ある程度まで達成。
しかもそれで格上げされた予算で続く本作を作り込むことで、やっとその品位を作品性として実績足らしめた、といった感じか。
しかもこのバンドは欧州産と違って、そのお美しく高潔なおちんフォにっくさだけじゃない、ギン勃ちデスコアらしいブレイクダウンをはじめとする米肉食メタルならではのフィジカリティを売り込んでくんのが熱くてイイ。
そんな令和の醜美合算メロブラにて、情緒また情緒のブラストで息継ぐことなく無呼吸連打で畳み掛ける、このエクストリームド激情(劇場)。
中でもメロと勢いが斬りあい極めて早くも前半で早漏にイき果てるM4“Unbreaklable”の、あこれ鬼の形相したラストのモヒカンが斧構えて襲いかかってくるやつと見粉う悲壮感、
に続いてのM5“Glenwood”で血滾り涙溢れ拳回さん疾走ぶりに、すわここがアルバムの最高潮と思わず熱く高ぶらんレベルだ。
と、ここら辺りまではいんだけど。
困ったことにこいつら、押してダメなら押してみろな足し算しか知らない地頭猿バゴスなので、作品構成も「起承転結」どころか「起結結結」という桂正和漫画ばりにケツまたケツ叩き売り。(ケツだけに)
しかも、基本かつやマナーで延々とバカロリーな揚げものばかりを揚げ続けるため、せっかく前編での興奮で奮った拳が次々と真顔に戻ってはうなだれていくというここまでがバルサミコ酢のワンセンテンス。
終いにはいい加減いつまで見せ続けられんだこのドンパチっていう、ストーリーはクソ浅くて単調なくせにバトルシーンだけ御大層で体感時間がバグったアクション映画をひたすら見せ続けられるというかなSAKAMOTO気分になれること一興。
あれこのバルス雑魚の一つ覚え、もしかして前のアルバムで言ったことと全く同じじゃね?
いや仕立ては多少良くなったけど、ひょっとして中身全く変わってない?
とそろそろようやく気付き初めての今ココなんだけど、まそれでもこんだけ高めにレーティング出来てんのは、だって今年出てた枯齢ドブの新作に比べたら遥かにまだ聴くに耐
THRICE / 「Horizons/West」 :83p

THRICE / 「Horizons/West」
ゼロ年代スクリーモの名盤、「The Artist in the Ambulance」(2003年)から、思えば遠くへ来たもんだ。
あれやこれやと音楽レンジの挑戦広げて、今やプログレッシヴ・オルタナメタルといえばいいのかな立ち位置のTHRICEさん、これが12th。
2021年の前作「Horizons/East」リリース時からその続編を出すとアナウンス以降、とんと音沙汰ないまま、この2025年秋に4年ぶりの伏線回収なやっと出た「West」編。
アンビエント色が強い内向き内省型、じりじり&じくじくな籠もり系を軸に、ミステリアスな荒涼索莫たる(90-00年代的な意味での)ポストハードコア・テイストが印象的だった前作だったが、はてこちらはそれを受けつつも、どちらかといえばベクトル外向きに情感噴出くっきりと、対照イメージを押し出し。
(つってもせいぜい「どちらかといえば」レベルの差異でしかないけど)
イントロが前作のラストを継ぎながらも、あこれフーファイ始まるやつなM1“Blackout”の力強さから始まって、ガラージインディロックおあがりよなボトムと先鋭感あるM2“Gnash”へ。
その後も時にグランジオルタナでザラついてみせたり、ニューウェイブやってみっかしたり、はたまたマッシブなアタックあり、英ケランゲの気持ちに「これなんて似てないトムヨーク」とイジられたりと、前作より(比較的)狙い明確で情感の抑揚も気持ち高め設定に。
しかもそれらを経てのラストに向かうに従い、闇より出でて闇より黒くな帳(とばり)をおろして黒き結界にすべての情念が飲まれていく『光→暗』という、こちらの後編の流れは成る程、
モノトーンなダークさにやがてエモエモしい薄明かりが光明色彩差し込んでいく前作「East」の『暗→光』展開に対して、二作一対らしい双方表裏一体な構成だとも言えるか。
なのでこの東西連作、どっちが好きかは個々の嗜好次第だろうが、少なくとも前回「East」の静性強めな滲みペールトーンに対して、「West」のこっちゃカラパレ前作より動的なうえ、キャッチーでロックらしくて、がゆえにメタラー的にはわかりやすみが強め。
あーでも前作には、それがゆえに際立ち放ってたエモグレッシブキラーM4”Northen Lights”の存在感あったかんなー、って感じで、とどのつまりがどっちもどっちな五分戦。
いやこれって別に比べ競うもんどころか、普通合わせるもんだろダブルアルバムなんだからってごもっともな話なんですけど、それはそうと4年も経ってここまで来たら強いて双方鑑みて総評するとすれば、んー。
せめぎ合って前作82pにこっちが83p、て現状かな。(ほとんど変わらず)
AMORPHIS / 「Borderland」 :63p

AMORPHIS / 「Borderland」
フィンランドの片田舎のおっさんバンド、おしゃれ化に失敗する。15th。
活動歴35年以上、元90年代メロデスの出自も今や昔、とっくにそこからの脱却をはかり終えてからは、デス声も含んではいるものの、基盤としてのメランコリックなメロディックメタル道を進めてきたこのバンド。
3年ぶりとなる新作では、それを求めつつも前作でのあからさまな70年代的なアプローチやサイケなプログレ要素を溶解させる反面、洗練と身軽なコンパクトさに定めたミドルテンポメインのハードロックを軸にしたあっさりマイルドな北欧ゴシックロックのしゅっとしたモダンヅラな方向性へと標榜。
…したまでは良いんだが、なにぶんそもそものセンスがおっさんだという悲報、案の定もっさくてタルくてダサくて野暮ったい、面白みもインパクトもまるでない多田野ありがちが出来上がってしまわれるなど。
結果、持ち味の北欧風メランコリア煮つけ郷土料理カレワラ添えも、単なる薄口でパンチのない煮崩れでしかなくなって、これだったら前作までのが全然良かったようにしか思えない。
なので、本作でついに母国チャートトップ!という話にも、よかったね位しか言いようがないんだが、でもやっぱりその歴戦の功績は伊達ではなくって、こう辛辣に難癖つけてみても、それでも浸透性高くて時折ふと琴線に触れかかったりで地味にジワるから侮れないんだよなあ、そう殺傷力高くもないくせに。
んじゃ、次作期待ってことで。
以上、今週の4枚でした。
なんかもう今週は、いっかなって。
アモ、残念でしたね。
でもドンマイそういうときもあるさ、おっさんだもの。

NINE INCH NAILS, LORNA SHORE, THRICE, AMORPHIS,
・ネタが古い、おっさん臭い、と言われても古いおっさんが書いているので、仕様です。
・ふざけたこと書きやがってと言われても、ふざけて書いているのでお許しください。
・ネット上のものがすべて本当だと捉えがちなおじいちゃんや、ネット上のものにはケチつけても許されると思いがちな思春期のおこさまのご意見は全てスルーします。
・要するに、寛大な大人のご対応をよろしくお願いします。な?