THE HELLACOPTERS / 「Overdriver」 :84p

THE HELLACOPTERS / 「Overdriver」
2008年の解散から2022年に再び再開を果たしての、リユニオン二作目にして9th。
なおドレゲン(Gt)は今回不参加っぽい。
暴走ロケンロー、などと呼ばれていたのもそれ平成の昔話。
とうの初期2枚でその役目を終えて、「ヘラコといえば男味染みR&Rだろ」という令和の現状。
本作でもそれに応じられる看板を引き継いでは、かつ程よい勢いは欠かせないながらも、渋みとコクみたおやかなオヤジバンドとしての年輪と現役みある仕上がりという平常運行ぶり。
結果、いい意味で「普通にいい」。
「格別」だの「彼らのアルバム中抜きん出て」だのとは思わないが、しかしこれはこれで、いや、ヘラコはこれ「が」いい。
しっかりと、そう言える旨みが詰まってる。
軽快なアップビートチューンから、鍵盤利かせたホンキートンクな70年代調、あるいは初期KISSやCHEAP TRICKあたりを思わすポップな甘口風もあれば、でいて北欧バンドらしいメロディックさも忘れない。
そんなバラエティの豊かさに、彼らならではの懐の広さと引き出しの深さがある。
ラフだけどヴィンテージで、自然体で、だけどカッコイイ。
そういう、普通にいい、オヤジによるオヤジのためのロックンロールアルバムだ。
なかでも賑やかしく彼ららしさでゼロ年代スウェディッシュガラージやってのけとるM4“Wrong Face On”が秀でているが、M6“Doomsday Daydream”のノスタルジックな哀愁も流石。(ギターがたまらん)
かたやフーファイっぽい(そうか)M8“Coming Down”や、THE WHO(そうか)を甘酸っぱさに漬けたかのM9“Do You Feel Normal”あたりも、ここに程良い味付けだ。
にしてもヘラコが再結成して活動数年、
今この令和にアルバムを出すならこういうアルバムだろ、とそれをしっかりちゃんと満たしてみせる安心感、何なら安定感すら感じさせてくれる嬉しさよ。
もっかい言うけど、ヘラコはこれ「が」いい。
MANTAR / 「Post Apocalyptic Depression」 :82p

MANTAR / 「Post Apocalyptic Depression」
ドイツ発、ギター&ドラムのベースレスおっさんデュオ轟音メタルユニット、おマンターによる前作同様メタブレ発の5th。
さて、
三年位前にちょっと厳しめに向かった、その前作レビュー。
そこでのカレッジ正史の音楽高偏差値な優等生ちゃんぶった小賢しさに、
マンタァだかメメタァだか知らねーが、やってることしょぼくれ気味だった頃のENTOMBEDじゃねーか、とかそんな悪態付いていたような気がするのだけど、
はい、多田野90年代極寒戦中派の老いぼれによる八つ当たりでしたーっ!
しかもそこに引っ張られる程にえんとんべどでもなく、ちゃんと令和ブラッケンスラッジパンクしてましたーっ!
そんな、まンたまンたーな、毎度の手のひら返しを経ての本作。
音楽性はそこに通じる「パンクとしての」グランジ/オルタナを指向しながら、スラッジコア、デス&ロール、ブラッケンドハードコアなどにも通じる粗暴濁流サウンド。
ただし前作に比べると、しみったれた暗鬱さじゃねーやメランコリックさを減らした分だけ、作風としてはストレートでアッパー。
結果、ハードコアパンクの攻撃性とそれが故のロックンロールな骨格が若干際立ったか。
それもあってか前半、なんとなく駆け出しが弱めというかメロディックに欠けて一本調子な気もするが(前作に比べれば色合い的に多少、ね)、
しかし、おどろおどろしくおどろがおどるM6“Halsgericht”で暖気完了。
「Bleach」時代のNIRVANAが元来持ってたトゲトゲしい黒みを令和に摘出したようなM7“Pit of Gulit”や、
暗黒スラッジM10“Face of Torture”で沈み込んだからと思えば、グラコアブラスト着火なM11“Axe Death Scenario”など後半戦を経ての
ラスト、ゾンビもおどるおどるしい墓場でのドゥームパーティクローザーに至るまで、粗野なダーティグルーヴを絶やさない。
そんなわけで、改めての正当評価に至ったこのおまんター。
「うっさくてカッコいいメタル」として、そうだな、HIGH ON FIREもKVELERTAKも頭でっかくなる前の初期派だろってあたりには、是非このお薬出しておきますね。
WINONA FIGHTER / 「My Apologies To The Chef」 :80p

WINONA FIGHTER / 「My Apologies To The Chef」
ウィノナ・ファイターってwwwww
どう見てもおちょくりでしかない草原バンド名の前に、そびえ立つ出オチ感。
これはあかんやつだろと屍拾い覚悟で向かってみたのだけど、
いやでもちょっと待て、これ何気によくねーか、と。
米ナッシュビル出身の女性ヴォーカル・ポップパンク・トリオによる、Riseさんとっからのデビューアルバム。
全ショートレンジ曲で潔くも、計14曲と多めな収録数。
にも関わらず、気取らぬ敷居でサクサク小気味よく聴かせ進んでみせては、あれれ、終わってみると意外や意外。
あれもこれもで欲張って頼み並べたくせに、割と全部イケたぞな晩杯屋レベルのコスパの良さ。
女子ヴォーカルココ・キナンを主役に据えた、歌モノありきをベースに
時折、オフスプインスパイアなM4“Hamms In A Glass”や、これなんてマリマンなM10“Attention”というパkオマージュネタを混ぜ入れながら、でいてうまいこと初期PARAMOREやら後期エモみ含んだBLINKやらATARISやらの、ゼロ年代百均パンクの出汁取りラーメンおあがりよ。
現状、「じゃあそこ試合決定で」とぽっと勝ち抜けてはみたけど、この後どうすんの?みたいなよく分からなさはあるけれど、
でもそれはそうとしたって、勢いある瞬間風速とシンガーのキャラ感、ちゃんと聴かせるための工夫がなされたアレンジ力などで、値上げ必至の世知辛い現世でちゃんと品揃えと食い出とが揃ったコンビニ弁当くらいはいける感。
個人的には、M6“Swimmer’s Ear”あたりの極薄ビターを帯びた淡めなトーンの青春みとか、割と好物すね。
LACUNA COIL / 「Sleepless Empire」 :68p

LACUNA COIL / 「Sleepless Empire」
イタリアの誇るゼロ年代女性ヴォーカル系モダンなのかメタル、LACUNA電脳コイル10枚目。
えーと、あれっすね、
聴けばそこそこなんだけど、なんかもうこのバンドも熟する末まできたなって感じで、それ以外に格段の良さも悪さも、語るところも、そそるところもろくに見当たらない、
そんな多田野活動報告、以上。で?っていう、はい元気です作。
年季の入った円熟みある演奏に、豊かな歌唱力。
ゴシックな色付けにダークサイバーのスパイシーさ加味、
この手がはまりがちなおしんぽミルキードラマティックさも程々に、がっつり重厚な本場欧州メタルサウンド。
ミドルからアップテンポまで剛柔のバランスを取りながら、ベテランらしくそつなく手堅くもかける手ちゃんとかけてアルバム一枚、しっかりまとめている完成度は確かに判るんだけど、
んじゃそれが面白いかって言われると全然話ゃ別で、無刺激、無感動、無高揚でスルスルすり抜けていく感しかない。
唯一、ダートラメロデスやりかけるM6“Hosting the Shadow”だけは姿勢を正しかけるんだけど、なんだ多田野ラムゴのランディ・ブライさん客演曲だったわ。
そっから民族マジカル混じり込んで畳み掛けるM7“In Nomine Patris”までが今回イチのピークで、ここらだけはアリかなーと。
以上、今週の4枚でした。
まとめっと、
フェラ子は普通にいい、
(先週についでだな)
メメタァは前作より今回推し、
ウィノナライダーは今後も注目、てことで。
あとLACUNA電動コケシは、すみません。
嗜好や相性もあるんでしょう、ぼかあコイツら、思い起こせば頭角現してきたゼロ年代初頭の頃から微妙にハマりきらんかったんすよね…。
言うて決して悪いアルバムではないんで、今週枠に入れてみたってことでどうぞご勘弁を。
ではマンター。

THE HELLACOPTERS, MANTAR, WINONA FIGHTER, LACUNA COIL,
・ネタが古い、おっさん臭い、と言われても古いおっさんが書いているので、仕様です。
・ふざけたこと書きやがってと言われても、ふざけて書いているのでお許しください。
・ネット上のものがすべて本当だと捉えがちなおじいちゃんや、ネット上のものにはケチつけても許されると思いがちな思春期のおこさまのご意見は全てスルーします。
・要するに、寛大な大人のご対応をよろしくお願いします。な?