隠れていた、隠れた名盤~SPELLBOUND/「Breaking The Spell」(1984)

ヴァイナルカフェ
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連休なので今日もやってしまおうか、まだ氷と白さの残る下界を横目にコオヒイひいてレコオド流して、休日恒例ヴァイナルカフェ。
さあて、今日はワイ、これからちょっと領域展開してくるわ。リカちゃーん!

SPELLBOUND/「Breaking The Spell」(1984)

SPELLBOUND
その名を前に、今だと多くのメタラーは、かの伯爵豚が自身の選んだバンドメンバーに対して「ただ給料をもらう為だけの存在」と称賛しては皆をクビにし、ヒャッハー全俺最高とセルフネオクラで作ってしまった、あの2012年のトラウマを彷彿するのかもしれない。

が、ここで言っているSPELLBOUNDは、そっちじゃない。
ではなくてその昔、あの時代に、スウェーデンにいたのだ、そういう名のバンドが。そういう幻の北欧メタルバンドが。
しかも割と日本でも知られ、意外と支持もされていたようなのだ。もう誰一人覚えていないけど。幻すぎてぼくも忘れていたけれど。

さてこの「あの時代」というのは前もMADISONのときに書いた、あの時代のこと。そう、ミドル80’s、具体的には1984~86年位のことだ。

かの北欧メタルの、黎明期。
かのEUROPEを筆頭に、結構な数、いたのだ。めくるめく、B級北欧メタルバンド達が。
例えば、TREATとか、220VOLTとか、OVERDRIVEとか、TAROTとか、
北欧のSummerlove戦士BISCAYAとか、
あと脳がパチパチするほど元気玉なSILVER MOUNTAINのこれとか。

で、そんな当時、ちょっとだけ話題になった(らしい)SPELLBOUNDの、デビューアルバムが、これである。

とはいえぼくも実は、これまで聴いたことがない。
何せリアルタイマーじゃなかったし、日本盤も出なかった。CDも出なかった。才能の芽も出なかった。
しかも今やSpotifyにすら、存在していない。(※注釈1)

だから、存在だけは知っていたのだが、実際に聴くのはこのレードが初めてだ。
幻すぎて世界中からすっかり忘れられ、ぼくもすっかり忘れてしまっていたが、でもユニオンの中古レコード投げ売り棚の前で、思い出した。
かつては「北欧メタルの隠れた名盤」とされていたのを、思い出した。
隠れすぎてすっかり忘れていたのを、思い出した。
300円だった。

さて、本作。ご覧のようにまず、ジャケが、いい。
絵に書いたような、いや絵に書かれてんだけど、そんないい感じにクソジャケだ。

半裸のおねえさんが落っことした、光る睾丸。
それに恐れるバンドらにも気になるけど、それ以上に気になる、右端のメンバーのムスくれたしゃくれ顔だ。

一体どうしてこんなフォトを選んでしまったのか、どうしてこんなファッションセンスをしているのか、どうして睾丸が光っているのか、どうして睾丸を隠そうとしているのか、どうしてこんなに彼は一人だけしゃくれているのか、どうしてこんな絶妙の位置に経っているのか、どうしたら彼はこんなにカメラマンに嫌われてしまったのか、80年代スウェーデン人の感性は全く理解できない。

そんなクソジャケから伝わるヘボさが物語る、いにしえからしゃくれられし北欧ヘボぃメタル。
大丈夫だろうか。はっきり言って、不安しかない。
放出棚から300円でわざわざ拾ってきた不安だ。
思わず不安で顔をしゃくらせながら(睾丸は光らなかった)、プレイヤーに向かい針を落とす。

うーん…。
えーと、あのねえ、何だろうか。
良く言えば、STEELER(ドイツのね)とかに近い、ユーロベースではあるもLAメタル志向なメロディックさを備えた、キャッチーなメタルって感じだ。いや、あくまですごく良く言えば、だが。

クソつまんねーダメリフでMOTLEY CRUE“Shout At The Devil”を腐らせたような1曲目には思わず針を停めて窓から円盤ぶん投げようとしたけれど、でもそれ以降、とくにアップテンポナンバーは悪くはない。

時々放り込まれる哀愁あるメロディに、時折耳を捉えるギタープレイ。
そう巧くはないが、しかしそれなりの工夫がなされたギターワークには少しばかり光るものがある、睾丸だけに。(だけにじゃねえよ)
合わせて、アメリカンな明るさを目指しながらも、そこにやっぱり北欧らしいしっとりとした憂いが含まれているのも、いい。

まあ、とは言うてもそこはC級だ。所詮はしゃくれメタルだ。光る睾丸メタルだ。
とてもじゃないけれど褒められたもんじゃない。

まず、コレという決め曲がないのはさておき、いらねームダな楽曲が半分くらいあって、これが分数多いCD時代だったらと戦慄を覚えるレベル。
しかもボーカルは、濁声というよりは大便をふんばっているような息苦しさで、時折「へーいっ!」だの「ふぉーっ!」だのと叫んでおり、まるで珍しくでっかい大便でもひり出して便所で一人騒いでいるのかと思わせる趣だ。

そして、どーでもいいギターライン、どーでもいいメロディ、どーでもいいコーラスハーモニーの数々…。
そんな80年代が残したどーでも良さを、この令和の世に、アナログで、朝から噛み締める。そんなダメタルのどーでもいい味わいよ。

なので、時折タイトルのSpell以前にこのレコード自体をBreakingしたくなる衝動をしゃくれた顔で抑えながら、ふと飛び出すリフメロやツインリードに「あ、でもこれは悪くないかな?」ってやんのが、ちょっとだけ楽しくてクセになる。
そんな、ハイレベルな大人だけがひっそりと楽しめる、ぼくらの愛した「あの時代」の幻の北欧ヘボぃメタル。
それが、この光る睾丸だ。

 

…さ、290円分楽しんだから、あとは窓から片道フリスビーで10円分楽しもうっと。

 

※注釈1:Youtubeにはあったよ。

DATE
  • アーティスト名:SPELLBOUND
  • 出身:スウェーデン
  • 作品名:「Breanking The Spell」
  • リリース:1984年
  • ジャンル:北欧メタル、HEAVY METAL、HR/HM

 

ヴァイナルカフェとは
近年やっとアナログレコードにハマった超絶情弱時代乗り遅れ管理人、黒崎正刀が、休日の朝に趣味でコオヒイをひいて、その日の気分で持ってるレコオドを流し、まったり鑑賞している間にゆるーくSNSなどで書いているものを、こちらのブログに転用したもの。
よって、そのほとんどが70~80年代の古いものばかり。
尤も音楽批評というかしこまったものよりは、大概がただの独り言程度のたわいない呟きなので、ゆるーく本気にせず(笑)読んでいただければ幸いです。
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