MTVという母胎~DEF LEPPARD/「Pyromania」(1983)

ヴァイナルカフェ
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今週、職場で陽性ユダが出たので、全員強制PCR検査&結果出るまで自宅待機コロワーク。
そんなてんやわんやの週末に、コオヒイひいてレコオド流して休日恒例ヴァイナルカフェ。

そして、そんな喧騒の中に終わっていく8月。
何処も行かない、行くことのなかった、2021年夏。
そんな夏の終わりの、フォトグラフ(Photograph)。
でん!←イントロ

DEF LEPPARD/「Pyromania」(1983)

巨大な市場の成熟とMTVというメディア変革によって、ロックの主戦場が完全にアメリカとなった80年代前期。
DEF LEPPARDというのは、マクロ的に見るのであれば、ニューウェイヴ/ポストパンクを筆頭にその市場を狙って出てきたイギリス勢〜いわゆるセカンドブリティッシュインベージョン〜の一駒であり、そして見事にそのトップを獲得したポップミュージック・バンドの一つである。
 
勿論、彼らをNWOBHMの一つとして捉えることも出来るだろうし、それをもっておりからのHR/HMブームによって浮上してきたヘヴィメタル・バンド…と意地でもその文脈だけで語りたいのがメタル村の大昔からのならわしだが、とはいえ単に彼らの成功をそれだけで語るにはやはり無理があるというものだ。

というかそもそもからして、グラムロックに当代的なパンクロック以降のエッジと疾走感を合わせた彼らの原初的サウンドは、NWOBHMに共振しつつも、しかし必ずしもそこにのみ括られるものではなかった。

もっと言ってしまえば、デフレパの本質はNWOBHMバンドというよりは、そのムーブメントに乗って出てきたブリティッシュ・ハードロック・バンド(非ヘヴィメタル)だ。

そのことは1st「On Through The Night」でもすでに明確に表されている。
Wasted“をはじめとしたギターリフ主体の楽曲にはNWOBHMの香りが漂っているが、しかしそれはブリティッシュ・ハードロック・バンドがあくまで当代的なロックサウンドを求めた産物という結果論に過ぎない。

しかも続く2nd「High ‘N’ Dry」では、すでにNWOBHMを脱してAC/DC的なカラッっとしたロックンロールを目指しながら、独自のメロディセンスを洗練させるべくジョン・”マット”・ラングをプロデューサーに起用。
作り込んだポップロック・テイストを武器に、早くも1981年には当代的なメディア戦略を活用している。
 
その効果あって、収録されていたバラード“Bringin’ On The Heartbreak”が、始まったばかりのMTVで幾度となく流されることに。
余り言われていないが、この時期の開局間もないMTV(MTV開局は1981年8月1日だ)でヘヴィー・ローテーションされる、というのは(広義の)メタルバンドとしては初めてであり、誰よりもいち早いものだった。
その後アメリカ全土に一大勢力を見せていくMTVの、この勃興期の波にタイミングよく乗れたのは、彼らの大きな幸運といえただろう。

そして、それに引っ張られるかたちで、アルバムチャートも全米40位内と好成績を獲得。
アメリカ志向を前面にしていた彼らは、順調な北米デビューを果たしたのであった。

さて、このように知名度をゆっくりと高めていった彼らが、その後満を辞しての1983年に出したのがこのアルバム「Pyromania」だ。
言わずもがな、DEF LEPPARDの名を一躍世界に広く知らしめた一大飛躍作である。

当時、同じくイギリスから渡米してソロ活動を始めていたオジー・オズボーンの前座を務めることで、イギリスからきたニュー・ロックカマーというフレッシュな印象を米国シーンに与えることにも成功した彼らは、ここにおいて更に作り込んだ緻密なサウンドプロダクションを標榜。

製作期間、1年弱、製作費なんと25万ドル。
そんな手間暇と巨額をかけまくり、さながら一流ポップスのようなアレンジを施した、ハードロック・テイストの華やかで軽やかなソフトタッチ・ロックという、「ヘヴィメタルならざる」音作りで、巧みにシーンの新鮮さとトレンド感をアピールすることに成功した。

結果、この「Pyromania」は当時のハードロックとしては最高セールス、700万枚を記録。
アルバムチャートでも全米2位を獲得することになる。

かくして80年代のポップなハードロックの人気をもたらす足掛かりを作ったDEF LEPPARDだが、しかしその足元には。
まずは地盤としてポップミュージックを筆頭としたイギリス勢のアメリカ進出と、それを促したMTVというメディア革命があり、そしてその上で当時のHR/HMブームの波が高まる中で、いかに大衆が好みそうな、受け入れやすそうなサウンドを狙うかといった戦略的合理性があったことは、揺るがない事実である。

…という、割と普通に言われてきたことなのにメタル村ではやたらと忌避反応される昔話でした。
ところで今ジョン・”マット”・ランジっていうのね。

DATE
  • アーティスト名:DEF LEPPARD
  • 出身:UK
  • 作品名:「Pyromania」
  • リリース:1983年
  • ジャンル:HARD ROCK、NWOBHM、他

 

ヴァイナルカフェとは
近年やっとアナログレコードにハマった超絶情弱時代乗り遅れ管理人、黒崎正刀が、休日の朝に趣味でコオヒイをひいて、その日の気分で持ってるレコオドを流し、まったり鑑賞している間にゆるーくSNSなどで書いているものを、こちらのブログに転用したもの。
よって、そのほとんどが70~80年代の古いものばかり。
尤も音楽批評というかしこまったものよりは、大概がただの独り言程度のたわいない呟きなので、ゆるーく本気にせず(笑)読んでいただければ幸いです。
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