SEPULTURA/「SepulQuarta」:60p
未だ新型コロナによる緊急事態宣言が続いている、今日この頃。これを読んでいる皆様いかがお過ごしだろうか。
尤も「宣言慣れ」著しい昨今、日中の街中はすでに普通に動いているしで今更どうというわけでもないのだけど、しかし夜はやっぱり別だ。
以前は毎晩そこらを飲み歩いてばっかりだった飲兵衛なぼくも、さすがに1年以上もこういう状況になってしまうと家飲みが当然の日課というか、それ以外の選択肢がなくなってしまった。
しかも実際にそれやってみると、お金はそうかからないわ、酔ってもすぐ風呂って寝られるわ、好きなことをしながらの一人飲みってこんな楽しかったっけだしで、これが存外悪くない。
何よりも、誰にも気兼ねなく一人ただただ好きな音楽や動画を肴に飲む晩酌は、外飲みにはない至極の楽しみだ。
そんなわけであの去年の自粛期間以来、ずーっと毎晩、ちょいちょいと新作のつまみ食いは勿論のこと、好きなバンドのストリーミング動画なんかを漁っている次第だ。
さて。ご存知の通り、丁度新型コロナが世界中でパンデミックとして騒がれた真っ盛りの昨年くらいから、多くのバンドがリモートでのストリーミング・セッションをネット上にあげるようになってきた。
で、そんな中に行われたSEPULTURAによる企画が、これだ。
何を隠そうぼくも、昨年からYoutubeでちょいちょい目にしていた。
というのも、あの世界的なパンデミックによる巣篭もりの自粛期間中、SEPULTURAが毎週様々なミュージシャンをゲストに呼んでは、ネット上にそのセッション動画をあげていたのだ。
そのときには単体で上げられるそれらを各々眺めては酒の肴にしていたのだけど、いやいやどうして。こうやって一つの音源集としてまとめられると、それなりに壮観だ。
そこで今回記事に取り上げるにあたって少しばかり事情を調べてみれば、成程、なんでもそもそもは昨年初頭にリリースされた「Quadra」にあるという。
というのも、このアルバムのためのワールドツアーが新型コロナ騒動で頓挫してしまい、それを補うために始めた企画がきっかけなのだとか。
つまりここにはそのアルバムツアーを模したオンラインセッションが意図的に組まれているとともに、しかもそこにリモートならではのフットワークを活用。自宅を結んでゲストをふんだんに呼びこむことで、大ベテラン・メタル・バンドSEPULTURAを皆で取り囲もうという、いわば擬似的な「ぼくらのSEPULTURA祭り」が行われている。
実際、楽曲セレクトも新旧揃えていて往年のスラッシャーの身としてもそれなりに満足に足るもの。
しかもそこに加わるゲストも、結構な面子が揃っている。
何せいきなりオープナーから、こないだ島袋っ…元MEGADETHのデイヴィッド・エレフソンだ。
更にはスコット・イアン兄貴(ANTHRAX)やアレックス・スコルニック(TESTAMENT)、ロブ・キャヴェスタニィ(DEATH ANGEL)、まだやってんのかフィル・ラインド(SACRED REICH)といったベテラン・スラッシャー組をはじめ、鬼才デヴィン・タウンゼンドやマジかよな御大フィル・キャンベル(元MOTORHEAD)、ブラジル繋がりラフェエル・ビッテンコート(ANGRA)、元DRAGONFORCE~現KREATORのマルチプレイヤーフレデリク・ルクレール(KREATOR)そしてメタルコア組からのマット・キイチ・ヒーフィー(TRIVIUM)にマーク・ホルコム(PERIPHERY)…などなど豪華面々、燦然たる顔ぶれだ。
とはいえ、である。
ぶっちゃけ…というかぶっちゃけも何も、本作は「あの自粛期に多くのバンド同様やってたYoutubeのセッション動画を詰め込んだだけの、レアでも何でもない音源集」だ。
なのでどの曲も普通にYoutubeで見れるので、商品価値としては正直ほとんど、ない。
どころか、サウンドだけだと、そのセッション動画本来の魅力の半分すらも伝わってこない。
折角これだけ錚々たる面子とセッションしたのだからオフィシャルな記録として残したいという意図もあったのかもしれないが、やっぱりこれはYoutube動画を見ていただくに限る。しかもタダときた。
なので、メタル好きならばこんな音源よりもYoutubeのほうで、是非ともそれぞれの動画を見てみてもらいたい。
様々な客演とで彩るリモートセッションを味わうSEPULTURAの楽しさは、その動画一発で必ずや伝わるはずだ。
どのテイクを見てもそれなりに楽しめるのだが、例えばこれなんかどうだろう。現地のブラジルのパーカッショニストやドラマーを交えた名曲M10″Ratamahatta“。(↓)
ぼくが無知なせいか名も知らない演奏家との客演なのだが、にも関わらず、いつものライブで見るそれとは違った、リモートセッションならではの雰囲気に、つい見入ってしまった。
その他、ブラジリアン・メタル・バンドのお姉さん方のゴリゴリレディースパワーが剛力スラッシュを華やかかつバーバリックに彩るのが楽しげなM5″Hatred Aside“(↑)、どこでもきっちり発揮させてみせるデヴィンのサイコパスさがいい味を出しているM6”Mask“なども注目だ。
さらには母国繋がりのキッサとラファエル・ビッテンコート(ANGRA)の異種ブラジリアンメタルギタリストによるアコ演奏なんて、なかなか堪能出来るもんじゃない。
しかもラストには、元々MOTORHEADにバンド名を由来し(※註釈1)
、またカヴァー曲としても扱ってきた彼等が、かの”Orgasmatron“を本家フィル・キャンベルを迎えてプレイするという念願叶ったりな贅沢ライブも。
とまあ、その他の動画も然りなので、どうぞ興味あるアーティストが参加していたらコラボプレイを見てみてもらいたい。先のことが、一発で理解できるだろう。
そしてついつい、次の動画の曲も…と手が伸びてしまうことうけあいだ。
とはいえ本作を、こと音楽作品としてとらえた場合には、その空気を伝える臨場感にせよ演奏を見る楽しみにせよ、どうしたって動画Youtubeに足元すらも及ばない。
よってその存在を知るきっかけにはなるかもしれねど、しかし評点としては、うーん。
Youtubeでの動画を総じて80pとするならば、それに対する半分…はさすがに可哀想なので、せめて上の通りとしておこう。
註釈1:SEPULTURAが彼等の母国語たるポルトガル語で「墓」を意味する言葉であり、またそれがどうやらMOTORHEADに由来しているらしい…という話は昔から有名で知っていたのだけど、それが「Another Perfect Days」収録の”Dancing On Your Grave“だったというのはさっきウィキで知りました。
へー、そうなんだ。
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- アーティスト名:SEPULTURA
- 出身:ブラジル
- 作品名:「SepulQuarta」
- リリース:2021年
- ジャンル:THRASH METAL、他