AFI/「Bodies」:82p
なんでも聞けば、このアルバムを出した本年2021年で結成30年なのだという。
彼等も随分と暗き闇の中を、ここまで歩み深めてきたものだ。
嘗てぼくがこのバンドをWEB上で扱ったのはゼロ年代初期のこと。
どのアルバムであったかはもう覚えていないが、時代からして恐らくは4枚目か5枚目くらい、もしかしたら「Sing the Sorrow」でドカンと火が付いて売れ出した頃だったかもしれない。
丁度、彼等の音楽性が初期のいわゆるメロコア然としたものから、それとは違うものへと移行すべく試行錯誤しているときだった。
ポップパンクとハードコア、エモ、ゴシックとニューウェイヴとプログレ。
それらが混沌に混ざりながら、混沌の産物へと変わりつつある。
でもその変わる先が、その時点では彼等自身でも今ひとつこれだと見出だせていない。
そんな印象を受けたことを、覚えている。
(勿論その朧げな塩梅がこのアルバムの魅力でもあったのだが)
さて。
早いもので、あれからもう20年近くも経ってしまった。
気付いてみればAFIはもうベテランもベテラン、既にすっかり独自の道を進むどころか、それを更に掘り進めるに至っている。
このアルバムも、その一歩だ。
本作で最早、スタジオフルレンスで11枚目。
黒みを帯びたゴシックパンク、という方向性こそあれど、そのカラーリングだったり質感だったりで、都度作風を巧みに変えてくるこのバンド。
今回もまた、その重ねてきたものが物語る揺らぎなさと、しかし今なお変化を求める姿勢の、その双方が覗けるものとなっている。
ニューウェイヴ化を、ぐっと進めてきたな。
本作を前に、まず最初にそう思わされた。
もう少し具体的に言うのであれば、80年代英国のニューウェイヴ、ポストパンク、とくにゴシックロックやポジティヴパンク、プラスそこにちょいニューロマの色素を、より今のアメリカ的なモダンロックに落とし込んでいるのだ。
THE CURE。
THE SMITH。
JOY DIVISION。
NEW ORDER。
ECHO&THE BUNNYMEN。
SIOUXSIE AND THE BANSHEES。
THE SISTERS OF MERCY。
元ネタにヒットしそうなのは、ざっとここらへんか。
これらをはじめとする80年代UKロック、なかでもデカダンな耽美をまとった妖艶なサウンドたちを取り込みながら調理された本作の色彩は、ごっそり暗かったこのところの彼等にしてはカラフルに見えるし、そして明度が高めだ。
よりエスセンティックに。
より妖しく、なまめかしく。
より色鮮やかに。
そして、よりポップに。
つまりは、よりニューウェイヴィーに。
そんな、黒くも艷やかに、そして、ぬらぬらと。
このカラーリングの巧みさが、いい。
メロディと歌はそれを求めて、ときに軽やかにビートを刻んで躍動し、ときに色気を振り撒きながらゆらめき浮遊し、ときにメランコリックにラギッドにグロッシーに、しかしときに暗黒の深淵へと沈んでいく…。
バラエティある鮮やかな色揃えをしながらも、良曲にまとめて配置するその手際は流石のもの。
そう、かなり曲粒が揃っているのもまた、本作の評価点だ。
今なお進むアメリカンゴシックパンクの雄、AFI。
しかもやっぱりこうして聴いてみれば、これまでのものともまた違ったテイストのアルバムに仕上がっている。
そんな彼等の、次のカードにも、注目だ。
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- アーティスト名:AFI
- 出身:US
- 作品名:「Bodies」
- リリース:2021年
- POP PUNK、GOTHICPUNK、GOTHIC ROCK、NEW WAVE、POST PUNK他