ジャパメタじゃないジャパメタ~ANTHEM/「Bound To Break」(1987)

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飲み過ぎた翌日に乗る体重計の怖さときたら。
そんな戦慄におののきつつの、休日朝恒例ヴァイナルカフェ。

ANTHEM/「Bound To Break」(1987)

あんてむ、好きなんすよ昔から。
いわゆるジャパメタの中で、ダントツに好き。
で、彼等の最高傑作が「GYPSY WAYS」なのはもう宇宙的真理として、その次に並ばれるのがこいつですね。
異論はハンティングタイムに。

さて、裏ジャケに書かれた「賃貸業使用禁止期間 昭和62年5月31日」が時代を感じさせる、このアルバム。
ANTHEMというと、元々洋モノ志向というかジャパメタ的ローカリズムの臭みが少ないバンドでして、それが彼らの魅力や持ち味となっていたのだけど、それが決定付けられたのがこの三作目フルだった。
つまり「BOUND TO BREAK」は、その後に通じるANTHEMという音楽性の完成形を迎えたアルバムだったと言えるんじゃないですかね。
そんな初期の代表作であり、飛躍作がこれ。

作風としては、これまでのファストな荒々しさが後退した分、完成度が飛躍的に上昇。
と同時に音楽性は、よりJUDAS PRIEST的なブリティッシュメタルの方向性へと、大きくブラッシュアップ。
これらの洗練とスケールアップを進めた結果、垢抜けたメジャー感が養われ、初期に見られた野暮ったいマイナーな田舎ジャパメタ臭が(よい意味で)消えている。
ここら辺、バンドの成長もさることながら、クリス・タンガリーディス効果が殊更大きかろう。

…と思って今聴き直してみると、でもやっぱり日本語歌詞もあってかダサみの残渣は残っているのだけど、それもまた彼等の魅力要因の一つでもあったりしてね。
てどっちだよと。どっちでもいんだよと。
とにかく歌詞のあちこちに、「やつ」とか「お前」とか「俺の」とか「奪われた」とかサカモトみある昭和ジャパメタパワーワードが飛び出すのも味わいの一つよね。

んで。
このころのあんてむは兎に角、伸び盛りだったこともあり、若々しく溌剌たるバンドのエネルギーが音に躍動しているのがいい。
マッド大内のドラムを筆頭に、そんな弾け溢れるエナジェティックさの一方で、初期に比べてそれをまとめる統制的な整合美、ソリッドネスも著しく前面化。
その剛柔硬軟のバランスが、なんとも絶妙。
つまり、硬派メタルなのに、しなやかで艶もあり、また男臭いけどムサくなくて品と風格がある。様式美ではあるが、壮麗過ぎず剛毅かつ重厚でヤワじゃない。

(「GYPSY WAYS」最高傑作派としては)確かにキャッチーさを更に推し進めた次作の華やかさに比べると些か地味目な感もないわけではないが、しかし質実剛健。
寧ろ、そんな実直ながらも焦点を絞ってストイックに自らを磨きあげた力作と評するべき。

加えて楽曲の充実ぶり、粒ぞろい具合ときたら、初期作品中でも群を抜いてピカイチ。
よってバラエティ豊かなのに捨て曲はほとんど見られず、どの曲もが「これぞANTHEM」と頷けるアンセム(笑)ばかり。
何せ、タイトルトラックのオープナーからのエンプティ、ショーマストの流れが最強。
B面もまちんメイドから始まって、最後まで名曲ばっかりひしめいてる。

しかもファストチューンにミドルを挟んでと緩急抑揚ある展開は、アルバム通しての一環した流れを巧みに構成している。
まさに名実ともに日本のメタルの金字塔と称されるに相応しい名盤…ってあー、やっぱりこれ歴史的大傑作やーん!(笑)

どうでもいいけど、「クリス・タンガリーディス」の表記が、ジャケには「クリス・サンガライズ」って書いてあるよ。
ビリーシーハンみたいなもの?
アークエナミーみたいなもの?

DATE
  • アーティスト名:ANTHEM
  • 出身:日本
  • 作品名:「Bound To Break」
  • リリース:1987年
  • HEAVY METAL、POWER METAL

 

ヴァイナルカフェとは
近年やっとアナログレコードにハマった超絶情弱時代乗り遅れ管理人、黒崎正刀が、休日の朝に趣味でコオヒイをひいて、その日の気分で持ってるレコオドを流し、まったり鑑賞している間にゆるーくSNSなどで書いているものを、こちらのブログに転用したもの。
よって、そのほとんどが70~80年代の古いものばかり。
尤も音楽批評というかしこまったものよりは、大概がただの独り言程度のたわいない呟きなので、ゆるーく本気にせず(笑)読んでいただければ幸いです。
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